フェライトガイド

EMC対策用小型フェライト部品とは?

取材協力:TDK株式会社

そもそも、フェライトとは?

—— フェライトって何ですか?磁性体の話は難しくてよく分かりません。

フェライト(Ferrite)とは簡単にいうと、酸化鉄と他の酸化金属を混ぜ合わせて焼き固めた磁器(セラミック)です。

フェライトには大別して2種類あり、マグネット(磁石)用途と、トランスやコイルなど磁性部品のコア(磁心)として大量に使用されています。自由な形に成形できるので、複雑な形状や小さな部品にも適しています。なお、コイルやEMC対策用には、電線とコアが短絡しないように、電気抵抗が絶縁体並みに高い素材が主に使われています。

高周波の分野ではコイルのコアとして用いられます。フェライトは渦電流が流れにくいので、高周波での損失(渦電流損)が少ないからです。EMC対策用のフェライト部品も高周波応用の一つといえますが、一般の高周波応用とは逆にフェライトの損失を利用します。

フェライトのような素材は、磁性体といわれています。正確には強磁性体といい、簡単にいえば石にくっつくのが強磁性体です。鉄はよく磁石にくっつくので強磁性体です。しかし、プラスチックやアルミのように磁石にくっつかないのは強磁性体とはいいません。

強磁性体はさらに2種類に分けられます。一つは軟磁性体(ソフト)で、もう一つは硬磁性体(ハード)です。

軟磁と硬磁は磁気特性上の分類であり、機械的な硬さ柔らかさという意味はありません。例えば、ソフトフェライトというのは、磁界を取り去ったときに磁性が残らない(永久磁石にならない)フェライトという意味であって、柔らかなゴム状のフェライトのことではありません。反対に、ハードフェライトとは永久磁石になるフェライトのことをいいます。したがって、ゴム状のハードフェライトもあります。

図1:対策部品の一例

(積層チップインダクタの外観と内部構造)
TDK MMZシリーズフェライトのコア材に積層技術を使って巻き線を形成した超小型ノイズ対策部品

出典:TDK株式会社

インダクタとフェライトの違い

—— フェライトが何故ノイズ対策に役立つのですか?

フェライトを応用したEMC対策用部品には、フェライトビーズチップビーズ、信号ライン用EMCフィルタ、電源ライン用EMCフィルタ(ACラインフィルタ)コモンモードフィルタ(チョーク)クランプフィルタ、ノイズ抑制シート(フレキシールド)など様々な製品があります。何れもフェライトの持つ磁気特性を上手く利用しています。

ノイズ対策では、有害なノイズと必要な信号を選り分け(切り分け)てノイズは阻止し、信号は通過させる手段を採ります。この場合、ノイズか信号かは周波数の違い(高いか低いか)またはモードの違い(コモンかノーマルか)によって区別します。周波数で分ける部品をフィルタといい、EMCでは、一般に低い周波数(必要な信号)を通し、高い周波数(ノイズ)を次の回路に流さない役目を担います。これがローパスフィルタです。

いっぽう、コモンモードノイズのように、モードが信号と違う場合は、コモンモードフィルタ(チョーク)が使用されます。このように、周波数、またはモードで切り分けて対策をします。ローパスフィルタには、L(インダクタ)とC(キャパシタ)を組み合わせたLCフィルタがあり、阻止すべき周波数範囲のノイズ成分を基板のグランドにバイパスさせてノイズ源に還したり、反射・吸収したりします。

これに対して、チップビーズなどフェライトを使ったノイズ対策部品では、阻止(周波数が高い)領域のノイズ成分を熱に変換して減衰させることができます。その理由を図3で説明します。図3の縦軸は素子のインピーダンス、横軸は周波数です。例えば、純粋なインダクタのインピーダンス(リアクタンス)は周波数に比例するので、図で黒の点線で示した曲線になります。損失の無いフェライトをコアとして使ったインダクタもこれと同じになるはずです。

図2:フェライトビーズの実装例
スイッチング電源ボードでの使用例(矢印)
ビーズは絶縁体なのでリードに通すだけで簡単に実装できる


出典:TDK株式会社


いっぽう、図3に赤で示した曲線(Z)は、ノイズ対策用チップビーズのインピーダンスをプロットしたものです。ある周波数まではインピーダンスが増加しますが、その後は緩やかに減少しています。さらに注目して欲しいのが、青色と緑色で示した曲線です。青色(X)はビーズのリアクタンス成分を、緑色(R)はビーズの抵抗成分をそれぞれ表しています(Z=R+jX)。図で明らかなように、リアクタンス成分は低周波領域では通常のインダクタと同じですが、周波数が上昇するにつれてピークを迎え、その後は減少していきます。他方、抵抗成分は、低周波領域では無視できる大きさですが、一般の抵抗とは異なり周波数が上昇すると大きな値を示しています。これはフェライトの磁化の遅れが損失、即ち抵抗成分として顕在化するために起こる現象です。

つまり、フェライトチップビーズは低周波ではインダクタとあまり変わりませんが、周波数が高くなるにつれてインダクタンスは減少し、損失成分のRが支配的になって、ノイズを熱に変換して減衰させます。この点がインダクタ(コイル)とチップビーズの違いです。

ちなみに、抵抗成分(R)とリアクタンス成分(X)が等しくなる周波数を「クロスポイント」と呼び、信号とノイズを切り分ける境界の目安にします。また、クロスポイントや、RおよびX成分の大きさと周波数特性は、フェライトの材料や形状、あるいは巻数などによって変わりますので、用途に合わせた様々な特性のものが製品化されています。言い換えるなら、インピーダンス特性を目的とする回路の信号とノイズの特性に上手く合わせることが、フェライトを使ったノイズ対策のポイントです。

図3:チップビーズのインピーダンス特性例
Z:インピーダンス、R:抵抗、X:インダクタンス、点線はインダクタの特性


出典:TDK株式会社

特性の変化を把握する

—— ノイズ対策用のフェライト部品を上手に使うための注意点を教えてください。

最短距離の配線や入出力の分離など、ノイズ対策部品に共通した注意点のほかに、フェライトを使った部品としての注意点はいくつかあります。ここでは一点だけ、部品に流れる電流の影響を指摘しておきたいと思います。

回路中のDC電源ラインやセット入り口のACラインに使うフィルタなどには大きな電流が流れます。ところが、フェライトは流れる電流(正確には電流によって生じる磁界)の大きさによってその特性が変化します。

図4は、実際のチップビーズの直流重畳による変化を示した一例です。変化量は、材質や大きさ、巻数などでそれぞれ違ってきます。いずれにしても、電流が大きくなるにつれ、一般にはインピーダンスが変化します。同様に、ノイズ対策用のフェライト部品も流れる電流によっては、効果が違ってくる可能性があるので注意が必要です。

仕様書には「定格電流」が記載されていますが、この定格電流値内であっても電流の大小により、特性が変化します。予め最大電流値が分かっている場合は、定格電流がそれより大きなチップビーズを先ず選ぶ必要がありますが、実際のEMCにおける効果は、実際に設計上の電流を流してテストして確認する必要があります。仕様書上のインピーダンス特性は、微小な電流で測定した値を載せることになっていますので、実際の電流値における特性の確認は、メーカーに問い合わせてください。因みに、「定格電流」は温度上昇値で決められています。電流をどんどん増やすと発熱も大きくなり、ついには内部の導体が焼損してしまいます。そのために定格電流という、上限値を掲載しています。

これに対して、AC電源用のフィルタ(ラインフィルタ)では定格電流を流したときの特性が保証されますが、ACラインではセットの電源をオンした場合などの突入電流(インラッシュ)が、定常動作時の数倍から数十倍に及ぶことも珍しくありません。この場合、突入電流に対してフィルタが作用しなくなることが考えられます。したがって、セットの突入電流と、それに対するフィルタの特性について事前にチェックしておくことも必要です。

図4:インダクタの直流重畳特性例
図はTDKの各種部品の電気特性を表示するフリーソフトウェア「SEAT」で作成した


出典:TDK株式会社

図5:AC電源ライン用フィルタの例
インラッシュで内部のインダクタが磁気飽和を起こさない定格のものを選びたい


出典:TDK株式会社


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