NTCサーミスタ ガイド

チップNTCサーミスタの基礎知識

取材協力:三菱マテリアル株式会社

NTCサーミスタとは?
ポジティブとネガティブ~サーミスタの用途と使い分け ~

—— 様々な温度センサがあります。どんなときにサーミスタを使えばよいのでしょうか?

温度を検出するセンサには、サーミスタ、熱電対、測温抵抗体、半導体センサなどがあり、それぞれに特長があります。サーミスタは温度で抵抗値が変わる素子ですが、安価で検出感度が高いうえに室温を中心とした温度範囲をカバーします。つまり、デバイスとして汎用的であり非常に使いやすいわけで、一般の電子機器の内部で広く使われています。感度については、図1にそれぞれの常識的な値を示しました。サーミスタが如何に高感度であるかが分かると思います。

図1:代表的温度センサの感度
熱電対(K型) 出力は4mV/100℃
測温抵抗体(pt100) 0℃~100℃での抵抗変化が38.5%
半導体(P/N接合) 順方向電圧は2mV/℃
サーミスタ
0℃から100℃の間でも数十倍の抵抗変化










ちなみに、サーミスタには大きく分けてPTCとNTCの二つがあります。TCはTemperature Coefficient(温度係数)、PとNは各々Positive(正)とNegative(負)の意味です。つまり温度係数が正のものと負のものがあり、使われる材料も異なります。PTCサーミスタは、特定の温度を超えると、急激に抵抗値が大きくなるデジタル的な変化をします。この性質を利用して、過熱時に回路を遮断したり、機器を過電流から保護したりするのに用います。これに対して、NTCサーミスタは広い温度範囲で抵抗値が一様かつ滑らかに変化します(図 2)。したがって、温度を値として検出して、制御する用途に適しています。

 図2:NTC/PTCサーミスタの代表的温度特性  
出典:三菱マテリアル株式会社   

電子回路は温度に敏感
~オンボード用NTCサーミスタ~

—— チップタイプNTCサーミスタの使い道は何ですか?

NTCサーミスタの具体的な応用としては、電子体温計のように直接的に温度を計るもののほか、エアコンや冷蔵庫、給湯器などの温度センサなどが挙げられます。これらの用途では、検出回路とは離れた所の温度を計るので、リードとカバーの付いたシース(sheath)タイプのものが使われます。

いっぽう、NTCサーミスタにはもうひとつ、電子機器内部の温度センサとしての用途があります。電子回路には温度に敏感で動作温度に従った制御が必要なものが多くあるからです。例えば、携帯電話では送信用のRF出力アンプや液晶ディスプレイ、TCXO(温度補償型水晶発振器)、リチウムイオン電池パックなどは、何れも動作部分の温度を検知して温度に対応した制御を必要とします。こうした用途では、ボード上の回路やデバイスの直近にオンボード用のサーミスタを置く必要があります。同時に、これらは小型を強く要求される機器でもあるため、最近ではチップタイプのNTCサーミスタが多用されるようになってきました(図3)。

   図3:オンボード用NTCサーミスタ(写真は三菱マテリアル)   
出典:三菱マテリアル株式会社

B定数の謎
~固有の仕様と選定法~

—— 温度係数で選ぼうとしましたが項目がありません。B定数や熱放散定数とは何ですか?

NTCサーミスタは、温度で抵抗が変化しますが、図2にも示したように、抵抗値と温度の関係はリニア(1次比例)ではありません。また、特定の温度における抵抗値は、品種毎に異なります。具体的には、基準温度[To(通常は25℃)]の時の抵抗値をRo[Ω]としたとき、特定の温度[T℃]における抵抗値は以下の式で近似されます。

R=Ro exp{B(1/T ― 1/To)}

式から抵抗値を対数で温度を1/Tで目盛を刻めば特性は直線で表されることが分かります。また、式の係数Bは「B定数」と呼ばれサーミスタの感度を表す指標となります。ちなみにB定数の単位は[K(ケルビン)]です。

実際のB定数は温度で若干変わるので、カタログには25℃と85℃(50℃/100℃等もあり)で実測した値が記載されます。図4に、異なるB定数について具体的な特性を比較したものを示します。B定数が大きいほど抵抗値の変化が大きいことは、式からも分かりますが、全体としてはB定数が大きいほど Roも大きくなります。

選定の際は、RoとB定数が基本になります。それぞれに許容誤差が規定されており、±1%クラスの精度を持つものもあります。メーカーでは、製品毎の温度と抵抗値を表にしたものをホームページ等で公表しています。

いっぽうの「熱放散定数」というのは、サーミスタ自身の発熱によって温度が1℃上昇する電力のことです。単位は(mW/℃)で表わされます。サーミスタは抵抗素子ですので、使用時は電流を流して電圧として温度情報を取り出すため、その際の電流によって自己発熱します。通常は周囲の温度に応じた熱平衡温度で安定しますが、温度測定には誤差が加わることになります。熱放散定数は、サーミスタの構造や材料、サイズなどで決定されます。類似のパラメータとしては、温度の急変に対する応答性の指標となる「熱時定数」などがあります。

図4:B定数と温度特性例


出典:三菱マテリアル株式会社

曲線を直線にして使う
~設計上のポイント~

—— 設計上の注意やコツはありますか?

基本的な注意としては、大きな電流を流さないことです。NTCサーミスタは、負の温度係数を持つわけですから、大きな電流を流すと、「電流により発熱 →発熱によって抵抗値が下がる→さらに大きな電流が流れる→電流により発熱」という循環が起こり、最終的には破壊に至ります。自己発熱による誤差を抑える意味からも、流す電流は小さくする必要があります。但し電流が小さく、回路が高インピーダンスの場合、ノイズなどに対して不利になりますから、両者の兼ね合いで決めます。通常は10kΩ~100kΩ程度を目安にします。

使用回路は、図5が基本です。この回路は、抵抗値の変化に対する電圧の変化が、サーミスタの持つ特性カーブを補正して、温度に対して直線的になるよう作用する利点があります。

図5:検出回路と出力特性   
出典:三菱マテリアル株式会社    


サーミスタ特性の一部を使ったり感度を調節したりするときは、図6aのように、抵抗を直並列に組み合わせて使います。図6aの回路は、LCDのコントラスト制御などに使われています。異なるサーミスタの特性を組み合わせて、温度範囲を分けることもできます。図6bに、無線機器のTCXOに応用した例を示します。いずれも具体的な回路定数は、使用する温度範囲(上限・下限)とサーミスタのRoおよびB定数から算出します。サーミスタの出力はアナログ信号としてそのまま使えますが、最近では、A/Dコンバータでデジタル化してから使う例も増えてきました。その場合は、サーミスタの出力と温度とのテーブル(対照表)をメモリに持たせることで非直線性を補償でき、高精度な温度検出が期待できます。

図6:応用回路例   
出典:三菱マテリアル株式会社    

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