MLCCを使いこなす。大容量積層セラミックコンデンサの賢い使用法

小型・大容量化が急速に進む積層セラミックコンデンサ。
大容量化で何が便利になるのか、今までのコンデンサとはどこが違うのか、ツボをシッカリ押さえて上手に使おう。

多様化と大容量化

電子機器の小型高実装化に伴ってセラミックコンデンサの需要が増している。なかでも、表面実装向けのチップタイプ積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:以下MLCC)は、今や電子機器になくてはならない存在である。

そのMLCCでは小型化と大容量化が急速に進展している。特に大容量化が著しい。セラミックコンデンサは元々、小型で極性も無く使いやすいうえ、損失が少なく高周波特性が良いといった特長がある。だが、10μFを超えるような大容量のものが無かったため、自ずと使用箇所が限定されていた。それがMLCCによる大容量化によって、これまでタンタルや電解コンデンサが使われてきた様な部分にも使えるようになり、他のコンデンサからの置き換えが可能になった。

デジタル信号の高速化手段

MLCCは今や100μFの製品も手に入る。機器の小型高密度実装の実現手段として、大いに活用したい。

ただし、大容量のMLCCを従来のセラミックコンデンサと同じ感覚で使うのはやや性急に過ぎる。大容量のMLCCには固有の特性があり、それを理解したうえで使用する必要があるからだ。例えば<図1>はMLCCの温度特性を表にしたものである。

  コード 静電容量変化率 or 温度係数 温度範囲  
Class1 C0G 0±30ppm/℃ -55~125℃ A
CH 0±60ppm/℃ -55~125℃
Class2 B ±10% -25~+85℃ B
X5R ±15% -55~+85℃
X7R ±15% -55~+125℃
R ±15% -55~+125℃
X6S ±22% -55~+105℃
X5T +22,-33% -55~85℃
Z5U +10,-56% +10~85℃ C
Y5V +22,-82% -30~85℃
F +30,-80% -25~85℃
表中のコードはJIS/EIA規格で表記した(メーカが独自に定める場合もある)
A/B/Cの分類は本誌独自のもの

図1:MLCCの温度特性分類

図2:容量変化の比較

図2:容量変化の比較

MLCCには様々な温度係数を持つものがあり、細かく分類されている。仕様に必ず表示されているものだ。表からクラスによって特性に大きな違いがあるのがわかるだろう。全体としてはClass1と2の二種類があり、Class2(高誘電率系)はさらに温度係数の大きなグループがある。便宜上、表ではA/B/Cに分類してある。結論を先に書くと、Class1とClass2では同じセラミックでも、別種のコンデンサであると考えたほうがよい。

ちなみに、大容量のMLCCはClass2であり、表の[C]に属するものも多い。実際、Class1と2では誘電体の組成からして別のモノなのだ。Class1は安定しており容量変化に敏感な回路にも使える。温度に対してリニアに変化することを逆に利用して温度補償などにも用いられる。これに対してClass2では容量変化がグンと大きくなる。[B]のグループでも常温の範囲で±10%オーダの容量変化がある。ただ、この程度であれば他のコンデンサの容量精度とあまり変わらないという見方もできるから、その意味では置き換えができる範囲にある。だが、Z5V/Y5U/Fなど[C]のグループは温度に対する容量の変化率が極めて大きい。数ある電子部品の中で定数がこれほど変化するものは他に無いと言えるほどの値だ。したがってこのグループのMLCCが使えるのは電源の平滑やデカップリングなど容量に対してラフな回路部分に限られる。<図2>に他のコンデンサとの比較を示した。

対電圧、対時間でも変化する

いっぽう、<図3>は端子に加わるDC電圧に対する容量の変化をプロットしたグラフである。MLCCは印加電圧によっても容量が大きく変化する。つまり、印加電圧に対して非線形な振る舞いをする素子であり、通常のコンデンサとは大きく異なる。例えばF特性(Cグループ)の場合、定格電圧付近では所期の1/5以下の容量になる。なお、交流の印加に対しては直流とは異なる特性を示す。<図4>

同様に、大容量のMLCCには経時変化がある。高誘電率系の誘電体は、無負荷で常温中に放置した場合、対数時間に対してほぼ直線的に静電容量が減少していく。凡そ1年(8760時間)で20%、10年で30%程度を見込む必要がある<図5>。これらの特性はMLCCが強誘電体素子である事に起因するが、よく知られるように強誘電体は圧電素子としても利用されている。つまりMLCCは圧電素子としての性格も併せ持っており、例えば機械的な衝撃が加わるとパルス性のノイズが現れることがある事なども覚えておきたい。

図3:直流電圧印加特性例

図3:直流電圧印加特性例

図4:交流電圧印加特性例

図4:交流電圧印加特性例

図5:経時変化特性例

図5:経時変化特性例

ESRは小さい方が良い…とは限らない

図6:電源のループ特性

図6:電源のループ特性

MLCCは大容量化によって応用範囲がぐっと広くなった。電源回路の出力部への応用はその典型だ。これまでアルミ電解コンデンサ等が使われてきた電源出力にMLCCを使えるようになった。ただし、ここでも無条件での置き換えには注意が必要だ。というのは、場合によってMLCCを使うと電源が発振してしまうことがあるからだ。発振の原因はMLCCのESR(Equivalent Series Register:等価直列抵抗)が小さい点にある。理想コンデンサに直列につながるESRは、理想的なコンデンサではゼロであり、通常はできるだけ小さい方が良い。そして、セラミックコンデンサはESRが小さいことが特長である。大容量のMLCCもこの特長を受け継ぎ低ESRなのだが、電源の出力に使うとこれが逆に災いすることがある。そのメカニズムを<図6>に示した。

以下簡単に説明すると、電源回路は出力電圧を一定に保つために負帰還を施す。出力のコンデンサは負帰還のループ内に接続されており、電源の出力とで位相の遅れ要素を構成する。いっぽう、帰還ループは位相回転が180°に達する周波数でループ利得が1[0dB]以上あると発振してしまう。このため、何らかの方法で高域の位相を進め、位相回転が180°に達する周波数でループ利得が1以下になるよう位相補償を施す。ところが、多くの電源回路制御ICでは位相補償に出力コンデンサのESRを利用(高域で位相を戻す)しており、ループ設計に際してアルミ電解などのESR値を想定しているものが多い。したがって代わりにESRの小さなMLCCを使うと補償が不足して発振してしまう、というわけだ。

図7:位相補償

図7:位相補償

ちなみに、LDO(Low Dropout)タイプの電源ICはこの傾向が強いとも言われている。対策としては、ESRに相等する抵抗を直列に入れたり帰還抵抗に並列にコンデンサを入れたりする方法(図7のCf)も考えられるが、最近では予めMLCCを想定して設計された電源ICも増えてきている。その場合は、ICで指定された型番のコンデンサを使うのが一番だ。

以上、大容量MLCC使用上のポイントを述べてきた。注意点を列挙してきたため、やや使いにくい印象を持ったかもしれない。確かに安易な使い方は禁物である。だがしかし、大容量MLCCはそうした面を補って余りある優れたコンデンサである。ツボをシッカリ押さえて存分に活用してほしい。