RSものづくりレポート
小型観測衛星の開発

探究心というロマンを乗せて。
RSの部品が宇宙を旅する。

東北大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
吉田 和哉 教授

  
小惑星探査機「はやぶさ」に課せられたミッション

      2010年6月13日、小惑星「イトカワ」からの帰還で話題を集めた小惑星探査機「はやぶさ」。通信途絶、エンジン故障など数々のトラブルに見舞われながらも、世界で初めてとなる月以外から物質を持ち帰ってきた。片道切符ではなく、試料を地球へ届けるサンプル・リターン。
最も難しい探査方法であるそのミッションを支えるメカニズムの開発者のひとりが、東北大学の吉田和哉教授である。

         「イトカワは地球から遥か3億Km先にある天体。その表面はやわらかな砂なのか、堅い一枚岩なのか、その場に到着してみるまでは誰もわかりませんでした。だからこそ、あらゆる可能性を想定した採集技術が必要だったのです。」

         「はやぶさ」には、吉田教授たちが長きにわたり開発と評価を繰り返した採集装置が機体の下に搭載された。これは、惑星表面へのタッチダウン時に物質を採集する1mほどの円筒状の筒で、その中には弾丸で表面を破砕するための小型の銃が装備されている。「計2回のタッチダウン(着陸)の際に弾丸は発射されませんでしたが、1,500個を越える岩石質の微粒子の採集に成功しました。」

         「イトカワ」は大きさが最長の部分でも500m程度の小惑星であり、地球や月・彗星などの大型天体のように熱変成や地殻変動を受けていない可能性が高い。サンプルを分析することで、惑星を作るもとになる材料や惑星誕生の秘密を知る手がかりになるという。「はやぶさ」が果たした科学的意義は極めて大きい。宇宙探査こそロボット技術の集積と語る吉田教授は、こう付け加えられた。「ロボットの役割は、人の行けない場所に人の変わりに行ってくれること。自ら手がけたロボットが宇宙へ行き研究に貢献する。これほど素晴しいことは、ありません。」

  
開発にゆとりをプラスするRSのクイックデリバリー

   「はやぶさ」のサンプル・リータンを成功に導いた吉田教授の専門は、ロボット工学。東北大学内の吉田研究室では、軌道上の宇宙ロボットや惑星探査ロボット、不整地ロボットなど、さまざまなロボットに関するダイナミクスと制御の研究が進められている。その研究を支えるのがRSのサービスである。

   「RSからは主に電子パーツを購入し、ロボットの試作モデルの開発に活用しています。 たくさんの数をストックしておくことが難しいDC/DCコンバータなどは、RSのラインアップにある部品を標準化し、誰もがすぐに入手できる体制を整えています。」部品トラブルが起こるのは決まって時間がないとき。学生の場合、失敗してはいけないという重圧からくるヒューマントラブルが多い。だが、すぐに部品が届くという安心感があれば、開発の手が止まらないばかりか、学生たちのモチベーションを保ち続けることができると吉田教授は語る。

   さらにRSの部品の用途は、試作だけに留まらない。吉田研究室が力を入れる研究に、小型衛星の開発がある。国の専門機関による大型プロジェクトではなく、大学や民間による小型・ローコストなミッションにより宇宙開発の可能性を拡げようというものだ。東北大学では、世界初となる「スプライト」と呼ばれる宇宙雷を観測するために、小型観測衛星「SPRITE-SAT(スプライトサット)」を開発。その50cm立法の小さな機体の中には、数々の信頼試験をパスした抵抗やコンデンサなどのRSの部品も使用されている。2009年1月、「SPRITE-SAT」はJAXAの人工衛星「いぶき」との相乗り打ち上げという形で宇宙へ旅立ち、今も地球の周りを飛行し続けている。宇宙の謎を解き明かすという人類共通の夢を乗せて。

「世界初のスプライト観測衛星「SPRITE-SAT」(下の図)

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