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      • 発行日 2024年4月26日
      • 最終変更日 2024年4月26日
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    リンギングとは?発生する原因や対策方法について解説

    リンギングとは、電気回路における電圧もしくは電流の振動のことを指します。一般的にノイズや消費電力の増加につながるため、望ましくないものとされています。この記事ではリンギングの概要や発生原因、対策方法について解説します。

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    リンギングとは?

    リンギングという言葉自体は工学以外でも用いられることがありますが、この記事では電気回路におけるリンギングについて解説します。

    電気回路において、信号が電線の両端で反射して振動することをリンギングといいます。

    信号を出力する側の素子のインピーダンスが低く、信号を受ける側の素子のインピーダンスが高い時に発生することが多いです。

    信号を正しく伝送するためにはリンギングの影響をなるべく排除した方が良いとされています。

    リンギングが起こりやすい回路の例として、トランジスタがスイッチング(電気回路のONとOFFを切り替える操作)を行うデジタル回路が挙げられます。

    スイッチングを行う際に高周波が発生し、それがノイズとして出現するためです。このノイズはリンギング、もしくはスイッチングノイズと呼ばれます。

    スイッチングは高い周波数で行うほど速い応答速度を得ることができますが、それに伴ってリンギングが強く発生してしまうため、回路全体の精度に影響を及ぼしてしまいます。

    特に高い周波数で動作する回路を構成する場合にはリンギングの影響を考慮して、十分な対策を行う必要があります。

    リンギングが及ぼす影響

    この章ではリンギングが電気回路に及ぼす影響について解説します。

    ノイズの生成

    リンギングによって電気回路内に不必要なノイズが発生してしまうことがあります。

    ノイズが発生すると、信号とは関係ない周波数成分まで伝送することとなり、信号の正確さが損なわれる恐れがあります。

    また、ノイズが加わった信号を後段に伝送することで、システム全体としてのノイズレベルが増加してしまうことが考えられます。

    ノイズを発生させないようにするためには、リンギングを抑えなければなりません。

    消費電力の増加

    リンギングが発生することによって、回路内に流れる電流が増加してしまう問題があります。バッテリーの消費が激しくなり、各基板の機能が低下する可能性が考えられます。

    発熱による性能低下

    リンギングによって消費電力が増加すると、想定以上の発熱が起こることが考えられます。

    発熱することで基板やそれに取り付けられている部品の劣化を招いてしまい、電気回路の寿命が短くなってしまいます。

    リンギングが発生する原因

    リンギングが発生してしまう主な原因は、信号を出力する素子のインピーダンスが低く、信号を受ける素子のインピーダンスが高いことにあります。

    配線ごとのインピーダンスが大きく異なる場合、インピーダンスの変化によって信号の反射が起こり、リンギングの発生を招きます。

    信号を受ける素子のインピーダンスが高ければ高いほどリンギングの振れ幅は大きくなると同時に、それが持続する時間も長くなる特徴があります。

    また、リンギングが発生する他の原因としては、電子部品や電気回路の物理的な構造に起因する寄生成分が考えられます。

    例えば、配線ケーブルは長くなればなるほどインピーダンスが大きくなります。このインピーダンスがリンギングの原因となることもあります。

    回路素子の特性だけではなく、寄生成分によるリンギングが発生することも考慮した上で回路設計を行う必要があります。

    リンギングの影響を抑制するための対策

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    リンギングの発生は回路設計を工夫することによって抑制することができます。

    この章ではリンギングの発生を抑制させるための一般的な対策について4点解説します。

    電流が変化するループ面積を小さくする

    リンギングが発生する原因の1つとして回路の物理的な構造による寄生成分の影響が挙げられます。寄生成分(ここでは寄生インダクタンスや寄生容量など)を減らすことでリンギングの発生を抑制することができます。

    具体的には電流が変化するループをなるべく小さくすることです。基板のレイアウトを工夫することでリンギングの発生を抑制できるほか、より効率的で信頼性が高く、低コストな回路を実現することができます。

    スナバ回路の追加

    リンギングが発生した時に、リンギングノイズを除去することによってリンギングの影響を軽減する方法も考えられます。

    この方法を実現するためにはスナバ回路を導入します。スナバ回路とは、スイッチングが行われた際に発生する高周波成分を吸収する役割を持つものです。

    スナバ回路にはいくつかの種類がありますが、最も使われるのは抵抗とコンデンサで構成されたRCスナバ回路です。

    スイッチングノードにスナバ回路を投入することで、リンギングノイズをグラウンド側に逃すことができます。

    ただし、スナバ回路を投入することで、その分コストや物理面に影響がおよぶ上に、電力の損失が発生することを念頭に置いておく必要があります。

    ブートストラップに抵抗を挿入

    電圧の増幅や制御を担っているブートストラップに抵抗を挿入することによって、リンギングによるノイズの影響を軽減できます。

    ブートストラップに抵抗を挿入するとノイズを緩和することができますが、一方で、スイッチング時間が遅くなってしまう可能性があることに注意してください。

    デカップリングコンデンサを利用

    デカップリングコンデンサとは、ノイズを抑制する目的で設置されるコンデンサのことを指しています。一時的に電気を貯めることで、電流の変化(ノイズ)を吸収する役割があります。

    デカップリングコンデンサを用いてノイズ除去を行う場合には、ノイズの周波数を確認して、そのノイズに対応した周波数特性を持つコンデンサを選択しなければなりません。

    まとめ

    この記事ではリンギングについて解説しました。

    リンギングとは電圧や電流の振動のことです。システムに悪影響を及ぼすことがあるため、対策が必要です。

    対策方法の一例として、スナバ回路の追加やデカップリングコンデンサの利用など、整流器の役割を持つ回路を組み込むことが挙げられます。

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