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      • 発行日 2024年3月25日
      • 最終変更日 2024年4月5日
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    ツェナーダイオードとは?特性や役割について分かりやすく解説!

    ツェナーダイオードは、通常のダイオードとは異なり、逆バイアス状態で急激に大きな電流を供給する特殊な半導体素子です。 今回の記事では、ツェナーダイオードの特性から仕組みについて分かりやすく解説します。

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    ツェナーダイオードとは?

    ツェナーダイオードは、シリコンベースのディスクリート半導体で、電流を逆方向と順方向の両方向に流すことができます。

    ダイオードは、P-Nシリコン接合で構成され、特定の電圧閾値が満たされると逆方向に導通するように設計されています。

    ツェナーダイオードには逆ブレークダウン電圧があります。この電圧に達すると電流を流し始め、ダメージを与えることなく逆方向に動作します。

    ツェナーダイオードの主な利点の1つは、さまざまな電圧の範囲内で、ダイオードの電圧降下が一定に保たれることです。そのため、ツェナーダイオードは電圧調整用途に使用されています。

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    ツェナーダイオードの特性

    ツェナーダイオードにはいくつかの特性があります。この章ではその特徴を3つ紹介します。

    逆バイアス動作

    逆バイアスとは、ダイオードなどにおいて、電流が流れにくい方向に電圧をかけることを意味しています。

    通常のダイオードでは逆方向電圧をかけてもほとんど逆方向電流は流れませんが、ツェナーダイオードでは逆方向に電圧をかけると、ある値を超えた時点で安定した電流が流れる特性があります。

    どの程度の電圧で安定した電流を流し始めるかについては製造プロセスで調整することが可能であり、用途によって様々な値に調整されます。

    逆起電力

    逆バイアス動作時において、ある値を超えた時点でのツェナーダイオードは安定した電流を提供しますが、この際の電圧はほとんど変化がなく定電圧となります。

    この特性を利用して、ツェナーダイオードを定電圧源として用います。

    定電圧源として利用する際には電圧の値がブレないことが重要であり、どれくらいの精度を担保するのかについてはツェナーダイオードの仕様によって異なります。

    温度特性

    ツェナーダイオードの温度特性とは、逆起電力や逆方向電流への反応が温度によってどのくらい変化するかを示しています。

    一般的にツェナーダイオードの逆起電力は温度に依存しており、温度が上昇すると逆起電力も上昇する傾向があります。

    温度特性はツェナーダイオードがどのような材料でできているのかによっても受ける影響が大きく変わるため、ツェナーダイオードの仕様を決める際には材料も重要な要素となります。

    ツェナーダイオードの一般的な仕様

    ツェナーダイオードは製品によって消費電力、公称動作電圧、最大逆電流などの仕様が異なります。その他の一般的な仕様は以下の通りです。

    • ツェナー電圧:逆ブレークダウン電圧に関連しています。これは、製品により、通常2.4Vから200Vまでの範囲です。
    • 電流(最大):定格ツェナー電圧における最大電流。200uAから200Aの範囲です。
    • 電流(最小):ダイオードがツェナー電圧によりブレークダウンするために必要な最小電流。通常5mAから10mAの間です。
    • 定格電力:ダイオードを流れる電流とダイオードにかかる電圧の両方を含む、ダイオードの最大電力損失定格。標準的な値としては、400mW、500mW、1W、5W等。表面実装型ダイオードの場合、標準値は200mW、350mW、500mW、1Wです。
    • 電圧公差:通常±5%
    • 温度安定性:最も安定したダイオードは5V程度です。
    • ツェナー抵抗:ダイオードの抵抗値

    ツェナーダイオードの理論的な仕組み

    この章ではツェナーダイオードの理論的な仕組みを解説します。

    ツェナー現象

    ツェナーダイオードに逆方向電圧を印加するとPN接合部に空乏層という電気的に遮断された領域が発生します。

    この空乏層の厚さは半導体に含まれる不純物の濃度によって異なり、不純物濃度が高いものほど空乏層は薄くなります。

    ここに高電界をかけることにより「トンネル効果」という、空乏層を電子が飛び越えて電流が流れる現象が起こるのです。

    この現象のことをツェナー現象といいます。

    アバランシェ現象

    半導体内部に強い電界をかけると電子やホールが衝突し、電子は自由電子として放出されます。

    この現象が繰り返されることで自由電子の数が増加し、空乏層を飛び越える現象が起こります。

    これをアバランシェ現象といいます。

    ツェナー現象もアバランシェ現象も空乏層を電子が飛び越えるという観点においては同じですが、発生原理が異なります。

    低電圧のツェナーダイオードの場合にはツェナー現象が、高電圧のツェナーダイオードの場合にはアバランシェ現象が関わっています。

    ツェナーダイオードの利用用途

    この章ではツェナーダイオードの利用用途について解説します。

    定電圧の供給

    ツェナーダイオードは逆方向に電圧をかけた際、一定の値で急激に電流が流れるため電圧が安定する特徴があります。

    その特徴を利用して定電圧として供給します。

    オーバーボルテージ保護

    回路に規定以上の電圧がかかってしまうことを防ぐためにツェナーダイオードを利用することがあります。

    ツェナーダイオードは規定の逆電圧を超えると導通するため、回路に予期しない高電圧がかかった際にはこの特性を利用して回路を保護します。

    温度センサー

    ツェナーダイオードは温度によって、逆起電力の大きさが変わる特徴があります。

    すなわち、逆起電力の大きさから温度を特定することができるため、ツェナーダイオードは温度センサーとしての役割を持ちます。

    クランプ回路

    信号波形の振幅を制限して、一定の電圧内に抑えるクランプ回路にツェナーダイオードが利用されることもあります。

    規定の電圧を超えると導通する特性を利用して電圧を制限します。

    利用しているツェナーダイオードの特性はオーバーボルテージ保護と同じですが、回路構成を変えることで異なる用途に用いることもできます。

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    まとめ

    この記事ではツェナーダイオードについて解説してきました。

    ツェナーダイオードは、逆バイアス動作時に急激に大きな電流を流す特殊な素子です。

    ツェナーダイオードを用いることで、ノイズからの保護や温度センサーを実現することができます。

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