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      • 発行日 2024年1月18日
      • 最終変更日 2024年1月18日
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    次世代の半導体として話題に?化合物半導体について詳しく解説!

    化合物半導体は、従来の半導体よりも高速、大容量、高電圧・高電流下に強いという優れた性能を持つ半導体であり、次世代の半導体として話題になっている素材のひとつです。当記事では、化合物半導体の特徴や将来性について詳しく解説します。

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    化合物半導体とは?

    化合物半導体は、半導体の一種であり、二つ以上の元素が結びついて構成された半導体です。これに対して、単一元素からなる半導体は元素半導体と呼ばれています。一般的に「半導体」といえば、Si(シリコン)からなる元素半導体を指すことが多いです。

    シリコンは4価元素であり、純粋なシリコン結晶の性質は絶縁体に近く、電圧をかけても電気はほとんど流れません。結晶の中の原子同士が固く結合していて、自由に動き回れる電子はごくわずかしかないからです。しかし、そこに価電子の異なる不純物を少し加えるだけで、結晶中を自由に動き回る電子ができるため、導体のような性質に変化します。このように、電圧印加に応じて電流を流したり制御したりできるようになるのです。

    シリコン半導体は長らく電子デバイスとして使用されてきましたが、発熱しやすいため大電流下での利用には不向きとされています。一方で化合物半導体は、高速大容量かつ高電圧・高電流下にも強く、従来のシリコン半導体を凌ぐ性能を有しています。

    よって近年の電子デバイスの高性能化に伴い、より高速で大容量の化合物半導体への注目が高まっています。1990年代初頭からのインターネット・バブルにより市場が拡大し、一時的には課題もありましたが、現在では再び市場が拡大しています。

    化合物半導体の元素の組み合わせは様々で、一般的には、III族×V族(III-V族)、II族×VI族(II-VI族)、IV族同士などがあります。III-V族半導体にはGaAs(ヒ化ガリウム)やGaN(窒化ガリウム),InP(インジウムリン)などが含まれ、II-VI族半導体にはZnSe(セレン化亜鉛)やCdTe(テルル化カドミウム)があります。また、IV族同士にはSiC(シリコンカーバイド)があります。

    化合物半導体は大電流・電圧下でのパワー半導体として利用されるほか、受発光機能と高効率という性質を活かして、LEDや高性能光センサとしても使われます。通信産業では高周波デバイスとしても採用されています。このように幅広い応用範囲が、化合物半導体の将来性を高めています。

    化合物半導体の特徴

    化合物半導体は、結合させる元素の組み合わせによって多様な半導体を製造可能です。主に「光デバイス用途」と「電子デバイス用途」に分類され、それぞれが優れた性能を発揮します。

    共通する特性として、高速であることが挙げられます。電子の移動がシリコンに比べて迅速であり、これによって高速演算・信号処理が可能です。

    また、特筆すべきこととしてバンドギャップが大きいことが挙げられ、これによりワイドバンドギャップ半導体とも呼ばれます。大きなバンドギャップは電流の流れを容易にする上に、高電圧・高電流下での耐性に優れています。よって、化合物半導体は特に高周波帯での使用が可能です。

    シリコン半導体とは異なり、耐熱性に優れているため、電子デバイスや工業用途、宇宙航空産業にも使用されています。

    光デバイスとしても優れており、LEDやレーザーでの使用が一般的です。効率の良さと低消費電力により、スピーディーで効率的な機能を実現します。

    また、磁気に反応する特性を持つため、各種磁気センサとしても活用されています。

    しかし、化合物半導体が一般化していない理由がいくつかあります。結晶生成時に欠陥が発生しやすい、ウェハーの大口径化が難しい、使用される元素の単価が高いなどです。

    以上のような課題があるにもかかわらず、高性能半導体への需要は増加しており、各国で生産体制や出荷体制が整備されています。将来的には市場規模が拡大すると予測され、化合物半導体がますます身近な存在となることが期待されています。

    化合物半導体は次世代の半導体となりうるのか?

    化合物半導体はシリコン半導体にはない特長を持っています。例えば、GaAsやInPは発光させることができ、世界中で光ファイバ通信のレーザーダイオードとして利用されています。さらに、SiCやGaNは青色LEDの基本材料として使用され、高耐圧な面から大電流のパワートランジスタにも応用が見込まれています。

    実際に、TeslaやLucid Motorsの電気自動車にSiCのパワーMOSトランジスタが搭載されているなど、一部の企業は先駆的に採用しています。ただし、化合物半導体は高集積化が難しく、デジタル回路においては低電圧・小電流が必要とされるため、デジタル回路の主役としてはまだまだ課題が残っている状態です。

    業界関係者の議論から見ると、化合物半導体はシリコン半導体を完全に置き換える存在にはなり得ないとされています。半導体の進化の限界はコストにあり、これまでの技術がシステムコストを下げることで拡大してきたと指摘されています。しかし、N5プロセスノード以降、チップコストの低下が鈍化しています。今後、性能と消費電力が多少良くなっても、コストが許容範囲を超えて上がるようでは、誰も使わなくなると予想されます。

    シリコンは依然として主役であり、「神様の贈り物」とまで呼ばれています。高集積度を持つ300mmウェハーは主役である一方、少量多品種時代においては200mmウェハーも重要な役割を果たす可能性もあります。

    つまり結論として、化合物半導体は特定の用途において注目を集めていますが、デジタル回路においてシリコン半導体に完全に取って代わる次世代の半導体にはならないでしょう。シリコンは次世代半導体の主役であり、技術の進化とコストの課題に関わらず、引き続き重要な存在であることは間違いありません。将来的には、先端パッケージ技術や異なるチップの組み合わせなどが進化し、化合物半導体の新たな展開が期待されます。

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    まとめ

    化合物半導体は、二つ以上の元素が結びついて構成された半導体です。化合物半導体の元素の組み合わせは様々で、GaAs、GaN、InP、ZnSe、CdTe、SiCなどがあります。

    結合させる元素の組み合わせによって多様な半導体を製造可能で、主に「光デバイス用途」と「電子デバイス用途」に分類されます。

    化合物半導体は、高速大容量かつ高電圧・高電流下にも強く、従来のシリコン半導体を凌ぐ性能を有しています。よって近年では、化合物半導体への注目が高まっています。

    その一方で、結晶生成時に欠陥が発生しやすい、ウェハーの大口径化が難しい、使用される元素の単価が高いといった課題もあります。

    特に、コスト面での課題が大きく、シリコン半導体に完全に取って代わる次世代の半導体となるのは難しいと予想されています。

    今後の展開次第では、化合物半導体が私たちにとって身近な存在になっていくかもしれません。

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