最新ものづくりレポート
今注目の「IoT開発」

RSのラズベリーパイに組み合わせた3G通信モジュール開発が、
産業界注目の「IoT」をさらに加速する。

メカトラックス株式会社 代表取締役 永里 壮一様

  
「IoT」という新技術の核にラズベリーパイ

     昨今の産業界最大のキーワード「IoT」(アイオーティー:Internet of Things)。日本語では「モノのインターネット」と訳されるが、従来のPCやサーバだけでなく、さまざまな「モノ」をインターネットで介する技術のことで、産業全体のイノベーションとしても期待が高まっている。そんな「IoT」の分野で、小型かつ安価に使用できる強力なコンピュータボードとして試作用途だけでなく多くの業務システムにも採用されているのが、「Raspberry Pi(ラズベリーパイ、以下 ラズパイ)」だ。全世界で累計700万台以上が出荷され、日本でもユーザー数が急増している。そこで今回は、業務用途向け「IoT」ソリューションでラズパイの活用を推進する、メカトラックス株式会社の永里 壮一様にお話を伺った。

  「私たちは、ラズパイにスタック可能な3G通信モジュール「3 G P I 」をはじめ、IoT/M2M向けの通信モジュール、センサー機器等の開発を行っています。「3GPI」には設定済みOSをインストールしたmicroSDカードを付属しているため、対応SIMを使用するだけでラズパイに組み込んだシステムがインターネットに接続可能となるのです。」

  「3GPI」は既存の3G回線をそのまま活用するため、大きな設備投資をすることなく、小規模からのシステム構築が可能になる。さらに、一般的な本社と店舗・工場間のデータ共有はもちろん、天候や土壌などを観測する農業用の監視システムや、太陽光発電システムの監視システムなどといった遠隔地での運用もスムーズに対応可能だ。しかも、今話題の格安なM V N Oを 使えば大幅にランニングコストを抑えることができる点も、人気に拍車をかけている。

ラズパイと3G通信を活用した「IoT」ソリューション(イメージ図)

  
ラズベリーパイを使って試作をそのままサービスに

   利点の多いラズパイだが、その最大のメリットは工夫によっては試作をそのままサービスインできる点だと、永里様は強調する。「ラズパイは教育用というイメージがありますが、実は、業務システムの試作に使うエンジニアの方が多くいらっしゃいます。さらに場合によってはラズパイで試作したシステムをそのまま製品として使用することも可能です。私たちの3GPIはラズパイと組み合わせての性能・品質評価など実施しており、業務用途でも安心して使用頂けます。その結果、試作の次のステップとして製品版システムを別途新たに開発する必要もなく、開発期間やコストを圧倒的に短縮できるのです。言い換えれば、その製品版開発コストを製品に転嫁せずに済むということ。たとえば、500個しか使用しない製品に1,000万円の開発費がかかったとすると、1個あたり費用は2万円。それを無くすことが、不確定要素が多いIoT分野におけるお客様への最大 のサービスだと私たちは考えます。」  

   同社が提供するのは、単なる通信モジュールやセンサー機器の開発に留まらない。予算に合わせたプランの最適化、通信業者との連携、さらには公的機関を活用した評価試験など、同社が提供するサポートはいずれも手厚い。そこには、RSの「RaspberryPi」を海外から安定供給できる点も大きく貢献しているという。「すべてはお客様のご意向にひとつひとつ答えてカスタマイズしていった結果」と謙遜されるが、この考え方こそが同社躍進の秘密かもしれない。  

   大学院修士、メーカー研究員、MBAホルダー、起業家とさまざまな経歴を重ねられ、自社エンジニアを束ねる永里様は、最後に日本のものづくりについてこう付け加えられた。「ラズパイは、安価で実績の無い技術が高価で実績のある技術を駆逐していく破壊的なイノベーションの典型だと思います。かつてのパソコン創世記がそうであったように、異質だったものが、業界のメインストリームへと変わっていくのです。そこで、エンジニア一人ひとりのモチベーションと技量を上げていくためには、実績やブランドも重要ですが、もっとモノ自体の価値について自分の頭で判断するという風土が育つ必要があります。安くて実績が無いものでも、使い方を工夫することで応用は広がります。ラズパイなどはまさにそうです。そういう時代が来ると、この国のものづくりは、さらに加速していくのではないでしょうか。」

「3GPI」(上)と「RaspberryPi」(下)

最新の技術情報と注目商品