自ら潜り、自ら帰還するTuna-Sand(ツナサンド)
ツナサンドと聞いて、ロボットの名前を思い浮かべる人はそう多くないだろう。だが、その名にふさわしいユニークな形をした自律型海中ロボットが近年注目を集めている。東京大学生産技術研究所の浦教授らが開発した"Tuna-Sand(ツナサンド)"がそれだ。
Tuna-Sandで撮影したベニズワイガニ。 手足の状態まで鮮明に写し出している。
「私たちがつくっているのは全自動のロボットです。人工知能と呼ばれるコンピュータプログラムにより、自分で判断して海中を自由に泳ぎ、探査や調査をすることができるのです。」と浦教授は説明される。"Tuna-Sand"のスペックは、全長1.1m、重量240kg、最大潜航深度1500m、潜航時間約8時間。ケーブルがなく全自動なので移動を制限されることなく、広範囲の海底面を探索することができる。しかも、小型軽量のボディは大型の深海有人潜水艇と比べ、調査現場への負担を大幅に軽減できるという。ベヨネーズ海丘、明神礁や黒島海丘などで実績をあげているが、2010年の富山湾での潜航がもっとも顕著な例といえる。メタンハイドレート地帯では、ベニズワイガニの棲息密度が高いことが知られていた。しかし、遠隔操縦式のロボットがこうこうと灯りを照らし調査するのではカニが逃げてしまうし、トロール網での引き上げも難しいため、これまでは実証されていなかった。そこで"Tuna-Sand"は、水深900~1000mの12カ所へ潜航し、手足の状態が鮮明にわかる写真をはじめ、何千枚もの高解像度写真を撮影。富山湾に棲息するベニズワイガニと海底メタン湧出の関係を明らかにすることに成功した。「海底環境を破壊することなく、水産資源を生の状態で面的に見ることができる」と浦教授が語るそのクオリティは、水産関係者から高い評価を得ているという。
そうした数々の成果が認められ、"Tuna-Sand"は第5回ロボット大賞の公共・フロンティア部門で「優秀賞」を受賞した。海底資源に恵まれる日本にとって、今後その活躍がますます期待されている。