もともと能動スコープカメラは、東北大学の田所教授がレスキュー用ロボットとして開発したものだが、当初は被災建物の側面からの潜入を想定していた。だが、横からのアプローチだけでは制約が多く、新たな施策を模索していたところに、清水建設からクレーンを組み合わせた上方から潜入するユニットの提案があったという。
「横からではなく、上からカメラを落としていく場合にはより自由度が求められます。それに重力も考慮しなければなりませんでした。」と昆陽准教授が指摘するように開発は単純ではなかったが、能動スコープカメラの自由度を増すために従来は1カ所だった関節機構を2カ所に増設したり、重力による変形を考慮して機構の剛性を調整するなど、改良を重ねることで、探査性能を飛躍的に向上させることに成功した。
進化を遂げた能動スコープカメラだが、そこにはDC-DCコンバータやモータードライバーなど制御部品、電源関係やケーブル関連など、RSの部品が多用されていることも見逃せない。その理由を、10年以上にわたりRSを活用し続けている昆陽准教授が教えてくれた。「たとえば熱収縮チューブなどは、実際に熱を加えてみないとわからないことがあります。その点、RSなら小ロットからすぐ届くので、いろいろ試せてベストな部品を選択することができるのです。」
また能動スコープカメラは、過酷な環境下での使用を想定して開発しているため、他にも技術を転用しやすいという。水道やガスといった配管検査もそのひとつで、地面を掘り起こさずに検査が可能なため、インフラ系の老朽化対策としてのニーズがますます高まっている。
東北大学と清水建設(株)による被災地探索の新たなソリューション"ロボ・スコープ"。ロボット研究と建設のスペシャリストが手を組むことで、これまでにない価値を生み出すことができた。
「狭い世界だけで開発していると、限られたソリューションしか出てきません。異分野との交流を図ったり、新しい技術や素材からロボットを設計してみることも、新たなロボット開発につながります。」昆陽准教授のその言葉に、これからのモノづくりのヒントが隠されている。