- 発行日 2024年1月18日
- 最終変更日 2025年7月29日
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整流器ガイド:仕組み・種類・用途をわかりやすく解説
整流器とは、交流電力を直流に変換する電力変換装置のことで、コンバータとも呼ばれる素子の総称です。当記事では、整流器の仕組みや用途について解説します。

整流器とは何か?基礎知識を押さえよう
整流器は、交流(AC)を直流(DC)に変換する電力変換装置のことです。電子機器の多くは直流で動作するため、整流器は電源回路で不可欠な役割を果たします。別名「コンバータ」とも呼ばれ、安定した直流電力の供給により、携帯電話やパソコン、家庭用電化製品から産業用機器まで幅広く利用されています。
整流器の主要な種類には、水銀整流器、亜酸化銅整流器、セレン整流器、そしてシリコンやゲルマニウムを用いたダイオード整流器があります。近年では、制御可能なサイリスタやMOSFETも整流素子として採用されています。
整流の仕組み:ACをDCに変える基本原理
交流電流は電圧と流れる方向が一定周期で変わるため、そのままでは多くの電子機器で使用できません。整流とは、この交流電流から一方向の電流を取り出し直流電流へと変換するプロセスです。
この整流機能を実現する回路・素子により、電子機器内部へ安定した直流が供給され、正常な動作が可能となります。
整流の重要性
交流電流は、電圧と流れる向きが定期的に変わる特性を持ち、これは正弦波として図示されます。波形は山と谷を形成し、1回の波形が完了する時間を周期、1秒間に波形が繰り返される回数を周波数(Hz)と呼びます。
交流の正弦波を直流に変換するプロセスを整流と呼び、これにより一方向の電流が得られます。電子部品は直流で動作するため、整流器は重要な役割を果たします。
多くの電子部品は交流では適切に動作せず、コンセントから供給される交流を直流に変換する必要があります。このため、整流器は電子機器の動作にとって重要な役割を担っています。
整流器の種類別特徴
半波整流
半波整流では、交流の正の半周期だけを利用して直流に変換します。基本的な回路でダイオード1個だけで済むためシンプルですが、効率は50%以下となり、出力電圧は脈動しやすいのが特徴です。低電力用途や簡易回路に適しています。
全波整流
全波整流は交流の正負両半周期を活用し、変換効率を向上させた方式です。これはブリッジ整流回路が一般的で、ダイオード4個を組み合わせて電圧脈動を低減します。結果として安定した高効率の直流電源が得られるため、多くの電子機器で採用されています。
三相整流(半波・全波)
三相の交流電源を用いた整流回路は、産業用の大容量機器などに利用されます。複数の相からの電力を効率的に変換し、変換効率の高さと電流の脈動低減が特徴です。特に三相全波整流回路は安定した直流を供給するため、鉄道用電車の動力や大型モーター制御に欠かせません。
整流器の仕組み
整流器はさまざまな回路を組み合わせることで、安定した直流の供給を行っています。身近な整流器に用いられる代表的な仕組みや性能について、以下の通りご紹介します。
単相半波整流回路
単相半波整流回路は、交流を直流に変換するために使用される基本的な電気回路の一つです。
実用的な整流回路では、平滑コンデンサを使用して直流に近い電圧を得るために利用されます。電解コンデンサは、この平滑化に用いられることが多く、容量が大きいために脈動をより効果的に平滑化できます。
単相半波整流回路は、AC/DCコンバータとしても一般的に使用され、低電力の用途や簡単な回路に適しています。しかし、変換効率が低いため、より高い効率が求められる場合には、他の整流回路タイプが選ばれることがあります 。
単相全波整流回路
単相全波整流回路は、交流電圧を直流電圧に変換するための整流作用を持つ回路の一種です。この回路は、正弦波交流電圧の正負両方の半波を整流することが特徴で、一般的には単相ブリッジ整流回路とも呼ばれます。
この回路では、整流素子(ダイオードやサイリスタ)を用いて、電流の流れる方向を制御し、交流電源の全波を利用して直流電圧を得ます。
単相全波整流回路は、入力が順方向でも逆方向でも出力されるため、変換効率が高くなります。実用的な整流回路では、平滑コンデンサを用いて直流に近づけることが一般的です。これにより、電流の脈動が平滑化され、より安定した直流電源が得られます。
また、全波整流回路は、ブリッジ整流を使った方式が経済的であり、小型化が可能であるため、一般的に使用されています。この方式は、入力波形のすべてを利用しているため、半波整流回路に比べて効率が良いことが特徴です。
三相半波整流回路
三相半波整流回路は、交流電源から直流電源を生成するために用いられる電気回路です。この回路は、3つの相からなる交流電源を使用し、各相の正弦波交流電圧を整流素子で整流します。
この整流方式は、各相の正弦波交流電圧を対応する素子が整流することが特徴で、三相変圧器を介して実装されます。三相半波整流回路は、整流素子を用いた交流電圧から直流電圧を得るための基本的な整流作用を持つ回路です。
三相全波整流回路
三相全波整流回路は、交流電源から直流電源を生成するために使用される電気回路です。この回路は、3つの相の交流電源を使用し、ダイオードやサイリスタなどの整流素子を通して交流電圧を直流電圧に変換します。
三相全波整流回路は、高い変換効率を持ち、電流の脈動が少ないため安定した直流電源を提供します。このため、電力の安定供給が必要な産業用途や電力変換装置などで広く使用されています。
整流器の主な用途
- ACアダプタ:家庭用電源(AC)をパソコンやスマホの充電器で使う直流(DC)に変換。
- 大型モーター制御:産業機械や輸送機器のモーターに供給する直流電力の生成。
- 鉄道車両:電車や新幹線では、高効率な整流器が走行に必要な直流電力を供給。
これらの用途において整流器は、電力変換の効率性と安定性を左右します。特に高性能の整流器は機器の信頼性を高める重要部品です。
最新市場動向と整流器の新技術トレンド
世界の整流器市場は急速に拡大しており、2025年には約22億米ドル規模に達すると予測されています。特に、高速整流器や水素電解整流器などの新技術が注目されており、これらは産業用途や再生可能エネルギー分野での需要が増加しています。電気自動車(EV)分野での整流器利用も急増しており、オンボード充電システムやバッテリーマネジメントシステム(BMS)に不可欠な部品となっています。地域別では、アジア太平洋地域が最も成長が著しく、中国や日本を中心に高性能整流器の開発と製造が活発化しています。
また、半導体素材の進化により、シリコンベースから更に効率の良いショットキーダイオードやIGBT整流器の普及が進んでいます。これらの新素材と回路設計の革新は、熱損失の減少や小型化、高耐久性につながり、省エネルギーと高性能化を実現しています。
整流器の使い方のポイントと選び方のアドバイス
整流器を選定する際は、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 用途に応じた種類選択:小型家電には全波整流器が一般的ですが、大容量機器や産業用途には三相整流器や高速整流器が適しています。
- 電圧・電流の定格:機器の必要電力に対応した定格選択が故障防止と長寿命化に直結します。
- 効率と耐熱性能:最新の半導体技術を用いた整流器は熱損失が低減されているため、冷却設計も含めて検討しましょう。
- 信頼性とコストバランス:長期使用や過酷な環境では高信頼製品の選定が不可欠ですが、コスト面も考慮し用途に最適な製品を選びましょう。
- 技術サポートとメーカー実績:最新技術を持つ有力メーカーからの製品選択が品質保証に繋がります。
こうした点を踏まえ、整流器の性能を最大限に引き出し、機器全体の安定稼働と長寿命化を図ることが可能です。
まとめ:整流器の基礎から選び方まで理解を深めよう
整流器は交流電流を直流電流に変換する重要な電子部品であり、あらゆる電子機器や産業機械の電源として欠かせません。半波整流や全波整流、三相整流といった種類ごとに特性や用途が異なるため、目的に応じた選択が求められます。
この記事では、整流器の基本的な仕組みから各種整流方式の特徴、主な用途や代表的なメーカーまで幅広く解説しました。今後、整流器を選定・導入する際には、変換効率や耐久性、使用環境をしっかりと考慮することが重要です。
正しい知識をもとにした整流器の選択は、機器の性能と信頼性を大きく左右します。初心者にもわかりやすい内容を心がけていますので、この記事を参考に最適な整流器をご検討ください。
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