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      • 発行日 2023年6月1日
      • 最終変更日 2023年11月6日
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    デジタルマルチメータの正しい使い方

    取材協力:キーサイト・テクノロジー

    デジタルマルチメータとは1台で複数の測定ができる汎用測定器のことです。測定できる値は電圧・電流・抵抗などの電気関連で、アナログではなくデジタル表記で表示されることが特徴のひとつ。

    アナログ式の測定器や従来品とは違い、直流・交流について新たな技術を用いて開発されているため、精度が高く、デジタル表記であることから読み取りミスが少なくなります。また、測定対象の影響を与えず測定が可能。1台あれば電圧・電流・抵抗など、さまざまな数値を正しく得られるのがデジタルマルチメータです。

    デジタルマルチメータの種類

    デジタルマルチメータは主に「ハンドヘルドタイプ」と「ベンチトップタイプ」の2種類に分けられます。 ハンドヘルドタイプは回路計の代用として活用でき、実験や配電工事で利用されることが多いタイプです。携帯に適しており、導通やダイオードのチェッカとしての機能を搭載した製品もあります。また、入力プラグやリード先端にカバーがついており、感電防止や短絡事故防止に役立つものも見られます。

    対してベンチトップタイプは実験室・研究室・校正室・計測システム・生産ラインで活用されており、アベレージやスケールを測定したり、デシベル演算などの機能が付加されていたりする製品もあります。デジタルマルチメータは以上のように主に2種類に分けられ、種類により使い方も少々異なるため目的に沿ったものを選びましょう。

    接続、テストリード、ワイヤに起因する測定誤差を防ぐ

    接続に起因する誤差を除去する最も簡単な方法は、ヌル測定を行うことです。DCV測定や抵抗測定では、適切な測定レンジを選択してから、プローブを短絡して測定を待ちます。この値は、ゼロにかなり近くなるはずです。次に、NULLボタンを押します。その後の測定では、ヌル測定の値が差し引かれます。ヌル測定は、DCと抵抗の両方の測定に有効です。残念ながら、この手法はAC測定には有効ではありません。ACコンバータは、測定レンジの下限で動作するようには設計されていません。

    接続

    異なる金属を接触すると、熱電対接合部が形成されます。熱電対接合部は、温度変化により電圧を発生させます。生じる電圧はわずかですが、小さな電圧を測定している場合や接続部の多いシステムの場合では、誤差が大きくなります。考慮すべき接合部は、DUT、リレー(マルチプレクサ)、マルチメータにある接合部です。

    銅と銅の接合部は、オフセットを最小限に抑えるのに有効です。 抵抗測定の場合は、オフセット補正を使用して、オフセット電圧を測定し、誤差を除去することができます。

    図1は、オフセット補正測定に用いられる2つの測定で、電流源がある場合と電流源がない場合を示したものです。最初の測定値から2番目の測定値を減算し、既知の電流源の値で除算することにより、実際の抵抗が得られます。2つの測定は読取りのたびに行われるので、測定速度が低下しますが、確度は向上します。オフセット補正は、2端子と4端子の両方の測定に用いることができます。

    図1:2つの測定によるオフセット補正(出典:キーサイト・テクノロジー)

    最初の測定は標準的な抵抗測定です。2番目の測定では、熱起電力によって生じたオフセットが測定されます。メータの表示値は、2つの測定値の差を既知の電流源の値で割ったものです。

    リード

    4端子抵抗測定法は、小さな抵抗を測定するための最も確度の高い方法です。テストリードの抵抗と接触抵抗は、この方法を使用することにより自動的に減少します。4端子抵抗測定用の接続を図2に示します。既知の電流源を使用して、抵抗によって発生した電圧を測定することにより、未知の抵抗を計算します。4端子測定では、電流を流すリード線と電圧を検出するリード線とを使用します。

    電流は、電流リード線により未知の抵抗に流れ、電圧センスリード線で電圧を測定して抵抗値を計算します。電圧センスリード線には電流は流れないので、これらのリード線による電圧降下はありません。

    図2:4端子抵抗測定用の接続(出典:キーサイト・テクノロジー)

    電圧センスリード線には、電流は流れません。マルチメータは測定した電圧値を電流値で割って、未知の抵抗を求めます。

    マルチメータの内部オフセット

    オートゼロを使用して、マルチメータ内の誤差を除去します。オートゼロをオンにすると、マルチメータは測定後に入力信号を内部で切断し、ゼロ測定を実行します。次に、前の測定値からゼロ測定値を減算します。 これにより、マルチメータの入力回路に存在するオフセット電圧が測定確度に影響を与えることがなくなります。4端子測定の場合はオートゼロは常にオンですが、2端子測定の場合はオフにして測定を高速化できます。

    オートゼロをオフにした場合、マルチメータはゼロ測定を1回行い、この値を後のすべての測定から減算します。またマルチメータは、測定機能、レンジ、積分時間が変更されるたびに、新たにゼロ測定を行います。

    大きな抵抗の測定

    セトリング時間への影響接続

    抵抗と並列の容量は、最初の接続やレンジの変更後のセトリング時間の誤差要因となります。近年のマルチメータは、遅延を挿入して、測定が安定するまでの時間を考慮します。 遅延の長さは、選択したファンクションやレンジによって異なります。

    これらの遅延は、ケーブルとデバイスの全キャパシタンスが数百pF未満の抵抗測定には適していますが、抵抗に並列容量がある場合や100 kΩ以上の抵抗を測定している場合は、デフォルト遅延では不十分な場合があります。これらの場合には、RC時定数の影響によるセトリングは非常に長くなります。高精度抵抗やマルチファンクション・キャリブレータには、高抵抗と並列の容量(1000 PF~100 mF)を使用して、内部回路による雑音電流を除去するものもあります。

    ケーブルやその他のデバイスの誘電吸収(ソーク)効果に起因するキャパシタンスは、RC時定数を増加させ、長いセトリング時間を要する可能性があります。このような場合は、測定を行う前に遅延を必要に応じて長くします。

    キャパシタンスが存在する場合のオフセット補正

    抵抗に並列容量がある場合は、オフセット補正をオフにした方がよい場合もあります。電流源をオフにせずに、オフセット補正でもう1度測定を行うと、電圧オフセットが測定されます。ただし、デバイスのセトリング時間が長い場合は、オフセット測定の誤差が大きくなる可能性があります。マルチメータは、セトリング時間の問題を回避するために、オフセット測定においても同じ遅延時間を適用するためです。このような場合、遅延時間を長くしてデバイスを完全に安定させれば、問題を解決できます。

    高抵抗測定の接続

    大きな抵抗を測定する場合は、絶縁抵抗や表面の汚れが原因で大きな誤差が生じる可能性があります。テストリードとフィクスチャは、絶縁材や「汚れた」界面フィルムへの吸湿により生じるリーケージの影響を受けやすく、ナイロンやポリ塩化ビニル(PVC)はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テフロン絶縁体(1013Ω)と比べると絶縁体(109 Ω)としてはあまり良くありません。またナイロンやPVC絶縁体からのリーケージは、多湿状態で1 MΩ抵抗を測定すると、0.1%の誤差が生じる可能性があります。

    DCオフセットのあるAC測定

    多くの信号には、AC成分とDC成分の両方が含まれています。例えば、非対称方形波には両方の成分が含まれています。多くのオーディオ信号には、出力トランジスタをドライブするDCバイアス電流によって生じるDCオフセットが含まれています。DC電圧とAC電圧の両方を測定する方が望ましい場合もあれば、AC成分だけを測定したい場合もあります。オーディオの例では、増幅器の利得は、入力AC電圧と出力AC電圧から計算します。

    図3:デューティサイクルが50%ではない非対称方形波(出典:キーサイト・テクノロジー)

    マルチメータを使用すると、AC成分とDC成分の両方を測定できますが、立ち上がりが急峻な場合、マルチメータの帯域を超えるAC成分(34410A/34411Aでは300kHz)はリジェクトされ、正確な測定はできません。

    ほとんどの最新マルチメータは、ACRMSコンバータの前にDCブロッキングコンデンサを使用しています。 DC電圧をブロックすることにより、マルチメータはAC値だけを測定できます。さらに重要なことは、マルチメータはAC信号をスケーリングして最適な測定を行うことができます。

    例えば、電源のACリップルを測定する場合、マルチメータは高レベルのDC信号をブロックしますが、AC成分だけに基づいてレンジを選択することにより、AC信号を増幅することができます。

    最高確度のAC+DC測定には、2つの成分を個別に測定する必要があります。マルチメータは、適切なレンジと積分を使用してAC成分を除去することにより、最適なDC測定が行え、AC測定の場合は、AC成分に最適なレンジを選択できます。個別に測定した結果から以下の計算式を使って、AC+DCの全RMS値を計算することができます。

    真のRMS値AC+DC**=SQRT(AC****2+DC2****)

    **マルチメータによっては、AC電圧の測定時に、DCブロッキングコンデンサを使用します。AC測定では、セトリング時間を短縮するためデジタル手法によりパルス測定時に高い波高率にも対応するものがあります。また、例えば、AC信号の測定が最高300 kHzで、AC成分が8 kHz未満の場合、DC測定機能とピーク検出機能を使って、DC成分とAC成分の両方を正確に測定するなど、高周波信号の場合は、AC成分とDC成分を個別に測定し、AC+DCを計算する場合もあります。

    図4:電源のACリップル(出典:キーサイト・テクノロジー)

    DC電源の出力にはいくらかのリップルAC雑音が見られます。電源の出力は、AC成分とDC成分を測定することにより評価できます。

    図5:パルス列(出典:キーサイト・テクノロジー)

    パルス列にはDC成分とAC成分の両方が含まれています。パルスの立ち上がりが急峻な場合、マルチメータの帯域を超えるAC成分(34410A/34411Aでは300kHz)はリジェクトされ、正確な測定はできません。

    低周波AC信号の測定

    マルチメータによっては、数Hzまでの低周波のAC電圧を測定できます。さらに低い周波数で信号を測定する必要があるアプリケーションもありますが、こうした測定を行うには、適切なマルチメータを選択・設定する必要があります。以下にいくつかの例を紹介します。

    デジタルサンプリング法を使用して、3 Hzまでの仕様化された真のRMS測定が可能です。デジタル手法により、セトリング時間が向上し、低速フィルタの測定が可能になります。これを実現するには、特定の設定が必要です。

    1. ACフィルタを設定します。フィルタは、真のRMSコンバータの出力(実効値)を平滑化します。20 Hz未満の場合、マルチメータを安定させるために、ローフィルタを設定します。
    2. 測定している信号の最大レベルが分かっている場合は、手動レンジを設定することにより測定時間を短縮できます。セトリング時間が長いほど、オートレンジ機能の速度が低下するため、手動レンジをお勧めします。
    3. DCブロッキングコンデンサを使用して、DC信号がAC RMSコンバータによって測定されないようにします。これにより、マルチメータは、AC成分の測定できるレンジを使用できます。高出力インピーダンスの信号源を測定する場合は、ブロッキングコンデンサが安定するまでに十分な時間が必要です。セトリング時間は、AC信号の周波数ではなく、DC信号の変動に影響されます。

    精度の高いマルチメータでは、1 Hzまで測定できるものもあります。

    また、DCブロッキングコンデンサを備えたアナログ回路を使って、RMS電圧を変換します。最適な測定には、低周波フィルタを選択し、手動レンジを使用して、DCオフセットが安定していることを確認します。 低速フィルタを使用する場合は、7 sの遅延を挿入して、マルチメータを安定させます。

    温度測定用のトランスデューサの選択

    デジタルマルチメータを使用した温度測定には通常、測温抵抗体(RTD)、サーミスタ、ICセンサ、熱電対の4種類のトランスデューサが用いられます。それぞれに利点と欠点があります。

    より高い感度を得るにはサーミスタを使用

    サーミスタは、半導体で構成され、感度は優れていますが、通常は温度範囲が-80℃~150℃に限られています。サーミスタの温度と抵抗の関係は非線形が強いため、変換アルゴリズムが複雑です。マルチメータによっては、標準的なHart-Steinhart近似計算を使用して、分解能0.08℃(代表値)の確度の高い変換を実現しています。

    より高い確度を得るにはRTDを使用

    測温抵抗体(RTD)は、約-200 ~ 500℃の範囲にわたって、抵抗と温度の間に非常に正確で高い線形関係があります。マルチメータによっては、IEC751規格のRTDの測定が可能で、0.0385 Ω/Ω/℃の感度を備えています。

    1℃当たり1 Vのリニア電圧を実現するIC温度センサ

    多くのメーカーが、温度(℃またはF゜)に比例した電圧を発生するプローブを提供しています。このプローブには通常、National Semiconductor社のLM135シリーズなどのIC温度センサが採用され、-50℃~+150℃(LM135の場合)の温度を測定できます。温度は、マルチメータのディスプレイに表示されているプローブの出力から簡単に計算できます。例えば、270 mVでは27℃です。

    最高の温度測定を実現する熱電対

    熱電対は、温度範囲が-210℃ ~ 1100℃と最も広いだけでなく、堅牢な構造により、過酷な環境に最適です。他の温度センサと違って、熱電対では比測定が行われるため、絶対測定を行うには基準接点が必要です。 ほとんどのアプリケーションで外部基準接点を追加することは現実的な方法とはいえません。基準接点を内蔵したものや20チャネル・マルチプレクサをお勧めします。一般的な熱電対の温度アルゴリズムを内蔵しているものもあります。

    まとめ

    単一の温度測定には、サーミスタと34410Aなどのマルチメータが簡単で低コストのソリューションとなります。より確度の高い温度測定にはRTDを使用します。多くの温度や高温をモニタする場合は、専用のデータ・ロガーが最適です。

    表1:温度トランスデューサの比較(出典:キーサイト・テクノロジー)

    温度トランスデューサの比較

    複数の測定

    マルチメータは通常、トリガと遅延を使用するため、測定には両方の条件が満たされる必要があります。図6は、マルチメータに用いられているトリガモデルを示したものです。 1回のトリガで1回の測定の場合は、サンプル数とトリガ数は通常1に設定します。1回のトリガでN個のサンプルを抽出することも可能です。サンプル数を1のままにしてトリガ数をNに増やすと、測定毎にトリガが必要です。 どちらの場合も、測定と測定の間に遅延が挿入されます。

    図6:トリガ遅延のある簡単なトリガ例

    出典:キーサイト・テクノロジー

    デフォルトではトリガ遅延は、測定が安定するようにマルチメータによって設定されますが、レンジとファンクションによって異なります。遅延はソフトウェアで実装されていて、いくらかの時間変動があることに注意してください。また、測定時間は変動しやすいので、この方式で定期的に信号をサンプリングすることは困難です。図7は、トリガ遅延を用いた複数の測定を示したものです。

    図7:トリガ遅延を用いた測定(出典:キーサイト・テクノロジー)

    最初の測定は標準的な抵抗測定です。2番目の測定では、熱起電力によって生じたオフセットが測定されます。メータの表示値は、2つの測定値の差を既知の電流源の値で割ったものです。

    マルチメータによっては、トリガ遅延とサンプル間の時間を個別に設定できます(図8)。さらに、サンプルループ(n回の測定)は、最小の時間変動で測定できるように設計され、サンプルループのほとんどは、ハードウェアに実装されています。

    バースト測定を設定する場合は、トリガ遅延を設定して、トリガから最初の測定までセトリング時間を置くことができます。測定間の正確なインターバルを設定するにはタイマを使用します。

    図8:測定間の正確なタイミングを実現するトリガモデル

    出典:キーサイト・テクノロジー

    ピーク検出

    帯域幅は通常、8 kHz以下に制限されますが、マルチメータではDC測定機能を使用して低周波信号のサンプリングが可能です。従来は、A/D回路でピーク電圧を測定するアナログピーク検出回路が用いられていました。この手法は広帯域を実現できるため、非常に短かい時間のピークの捕捉に用いられる場合があります。また、ピークディテクタとA/Dを組み合わせたマルチチャネルシステムにも採用されています。より一般的な手法は、信号をサンプリングして、最大値と最小値を記録する方法です。

    多くのアプリケーションでは、オシロスコープのディスプレイ上に表示されるノイズスパイクはあまり重要ではありません。雑音はEMIに起因することが多く、目的の信号を測定できなくなる可能性があります。 例えば、自動車のエンジンはかなりの量のEMIを発生させます。物理測定(温度センサやオイルセンサによって実行される測定など)は一般に、かなりゆっくり変化します。高周波雑音は、フィルタと低速のA/Dを使用して除去することができます。フィルタ出力のサンプリングに高速A/Dを使用する必要はありません。

    マルチメータは通常、ピークを検出/測定するのに最適なツールです。適度のサンプリングレート(1 Kサンプル/s~50Kサンプル/s)に加えて、シグナルコンディショニング機能(利得、減衰、ローパスフィルタ)を備えています。また、最大値/最小値の測定に使用可能な演算機能が、ほとんどのマルチメータに内蔵されています。演算機能は測定速度を低下させることがあるため、測定速度を向上するために、データのポストプロセッシングが必要になる場合があります。この他に測定速度を向上する方法として、小さいアパーチャ(表示される波形の範囲)を選択する、オートゼロをオフにする、ディスプレイをオフにする方法があります。

    マルチメータでは、ピーク検出機能が搭載され、信号の特性評価やピーク検出が容易に行えます。またDC信号をモニタする場合、もう1つのディスプレイを使って、最大ピーク、最小ピーク、p-p値を表示することができます。ピーク検出機能は、マルチメータのアパーチャ設定に関係なく、常に50Kサンプル/sの速度でサンプリングし、演算は不要です。

    図9は、マルチメータの標準的な測定方法で、測定ごとにピークの読み値が更新されることが分かります。

    図9:マルチメータの標準的な測定方法(測定ごとにピーク測定が実行される。)

    出典:キーサイト・テクノロジー

    別の方法として、複数のDC測定に対して、ひとつのピーク測定値だけを返す設定も可能です(図10を参照)。

    図10:複数のDC測定に対して、ひとつのピーク値が返される。

    出典:キーサイト・テクノロジー

    さらに別の方法として、マルチメータのアパーチャを変更して長い測定を行う方法があります。この方法は、図11に示されています。より長い測定に対して、ひとつのピーク測定値が返されます。

    ピーク検出では、20msごとに信号がサンプリングされ、ピーク値は次のトリガまでホールドされます。 アパーチャを変更することにより、長時間にわたってピーク値をホールドできます。ピーク測定毎に、p-p値、最大ピーク、最小ピークが表示されます。

    図11:複数のDC測定に対して、ひとつのピーク値が返されます。

    出典:キーサイト・テクノロジー

    マルチメータアクセサリの有効活用

    ここでは、それぞれのマルチメータアクセサリの用途を解説していきます。

    簡単なプロービング

    多くの場合、PCボードのプロービングには両手と両目を使います。マルチメータのディスプレイを見ていると、プローブがずれて滑り落ちる可能性があるため、マルチメータには、測定をロックする測定ホールド機能があります。測定を固定することにより、プロービングだけに集中できます。

    高電圧/大電流プローブ

    高電圧プローブを用いれば、高電圧をマルチメータを使って安全に測定できます。高電圧プローブは、固定入力インピーダンスモード(入力抵抗1 MΩ)で使用するように設計されています。これにより、1000:1ディバイダで数 kVDCまで測定できます。

    DC電流や低周波AC電流(最大30 A、連続15 A)の測定には、分流器(高精度0.001 Ω抵抗)をご検討ください。出力は、1Aの電流当たり1mVです。測定は、ワイヤをバインディングポストに接続するだけで簡単に行えます。

    4端子抵抗測定には、追加プローブが必要

    プロービングジの接触抵抗やテストリードの抵抗をインクリメントするために、4端子抵抗測定をする必要があります。4その場合、リードをもう1セット追加する必要があります。

    オフセット誤差を最小化するコネクタブロック

    DMM入力端子コネクタ・ブロックは、ワイヤを5個の入力端子すべてに接続できる2個セットのコネクタです。端子は低熱起電力の銅合金製で、異種金属によって生じる熱起電力電圧を最小限に抑えます。 熱オフセット電圧を最小限に抑えるには、同じゲージのめっきされていない銅線をすべての接続に使用します。

    それでは、正しい使い方でデジタルマルチメータを使うために、使用上の注意点を解説します。

    電流用測定端子に電圧をかけないこと

    デジタルマルチメータを正しい使い方で使うには、電流用測定端子に電圧をかけないようにします。電流用測定端子に電圧をかけると短絡事故が発生する可能性があります。製品の中には電流用測定端子をシャッタ構造にし、電圧をかけられないようにしていたり、テストリードを挿入した後にファンクション切り替えができないようにしていたりする製品もありますが、使用者が電流用測定端子に電圧をかけないよう使い方に注意することが必要です。

    入力電圧により誤差が生じることがある

    デジタルマルチメータでは入力電圧により誤差が生じることがあります。入力電圧範囲を大きく越える電圧を入力すると、低インピーダンスになるためです。また最適なレンジに調整される前に低インピーダンスになることも考えられます。インピーダンスが低くなると生じる誤差が大きくなるので、測定する際に注意しましょう。

    実効値変換方式の交流電圧測定ではクレストファクタに注意

    実効値変換方式で交流電圧測定を行う際には、波形と実効値の波効率であるクレストファクタへの注意が必要です。交流電圧の測定で波形と実効値の比が大きい場合には、実効値変換回路で入力電圧範囲を広くしなければなりません。感度を下げずに測定すると測定値が不正確になるため、実効値返還方式で交流電圧測定を行うなら波形と実効値の比を意識して対策を行ってください。