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      • 発行日 2023年6月1日
      • 最終変更日 2024年7月8日
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    半固定抵抗器の基礎知識

    取材協力:日本電産コパル電子株式会社

    半固定抵抗器とは?

    半固定の半とは?可変抵抗器との違い

    —— トリマのことを半固定抵抗器と言いますよね。固定が半分とはどういう意味ですか?

    ボリウムやポテンショメータなどの可変抵抗器は、セットのパネル面にツマミを付けてユーザが回すためのものですから、膨大な回数の設定が繰り返されることを想定して設計されています。これに対して、半固定抵抗器(サーメットトリマ , トリマ)は、機器内部で回路の抵抗値を微妙に合わせ込むことで、他の部品のバラツキなどによる個体差を取り除くトリミング(Trimming)のための部品ですから、設定される回数はわずかです。例えば、計測器などで製品の指示値の較正に用いる場合は、工場出荷の際に一度設定されるだけでしょう。設定した後には設定が狂っては困るわけで、設定後の安定に対する様々な工夫が盛り込まれています。

    実際の半固定抵抗器には固定抵抗器と同じように、使われる抵抗体の材料によって、カーボン(炭素皮膜)、金属巻き線や薄膜、サーメットなどの種類があります。カーボンは安価ですが、安定度などの特性面では劣り、金属は高安定ですが、巻き線摺動時の滑らかさに欠ける、薄膜では対応できる抵抗範囲が狭いなど、一長一短があります。全体的には、家電品などの民生用途では、コストの面でカーボンが、計測器・通信機器・医療用機器を初めとする産業用途では、信頼性の面からサーメットが多くを占めています。

    サーメットというのは、セラミックス(ceramics)と金属(metal)を練り合わせたものです。具体的には、酸化ルテニウム系の金属粒子とガラスのバインダーを混合してペースト状にした印刷の手法を用いて製造されます。サーメットは、製作できる抵抗の範囲が広いほか、温度特性が良く、半固定抵抗器として利用すると安定した特性が得られるうえに、非常に滑らかなで微細な変化が得られ、摺動に伴うノイズの発生も少ないなどのメリットがあります。

    可変の変とは?半固定抵抗器の基本仕様と選定法

    —— 設定した後は固定抵抗と同じなので選定は簡単ですね。

    半固定抵抗器を選定する際のパラメータとしては、機械的な項目と電気的な項目があります。機械的な項目としては、サイズや取り付け位置(上から回すか横から回すか)のほかに、単回転か多回転かが分かれ目になります。

    一般には単回転が使用されますが、単回転のものは子細に見ると設定時にごくわずかなバックラッシュ(回転の戻り)があります。したがって、精密な設定を必要とする用途には、多回転型のものが選ばれます(図1 , 2)。

    電気的なパラメータでは全抵抗値(両端間の抵抗)が基本となります。当然ながら全抵抗値を大きくすれば可変範囲が拡がりますが、設定の分解能が損なわれます。反対に抵抗値が小さいと設定(調節)範囲を満足できなくなります。実際的な設計上の目安としては、想定される可変範囲を全抵抗値の半分程度とします。

    つまり、半固定抵抗器の可変範囲の内の約1/2を使い、回転の端の部分はできるだけ使わずに済むようにすることです。回転の端で使用することは様々な意味から好ましくありません。電気的には抵抗値の精度や定格電力、温度係数など抵抗器としてのパラメータを考慮することになります。

    例えば、SMD(表面実装)用の小型品では定格電力が0.1Wなどと小さくなっていますから、使い方によっては過熱・焼損の恐れがあります。このため、選択に当たっては回路の電流と電圧が定格の範囲内であることを確認します。この場合、抵抗値によって流せる電流の大きさも異なることに注意してください。また、使用箇所の周囲温度が高い場合はディレーティングも必要になります。

    半固定抵抗器の使い方

    —— それでは半固定抵抗器の使い方について見ていきましょう。

    • 半固定抵抗器内部の抵抗体に端子を当てる
    • 抵抗を上げたい場合は1番ピンと2番ピンの間にあるつまみを右回転させる
    • 抵抗を下げたい場合は2番ピンと3番ピンの間にあるつまみを右回転させる
    • 抵抗値の修正が終わったらそのままにする

    半固定抵抗器の基本的な使い方は上記のように、該当のつまみを右回転させて抵抗値を修正するだけです。使い方を確認してわかるように、具体的にはオーディオなどの機器に搭載されているボリューム調整のためのつまみが代表的な使用例となります。つまみの回転により調整できる機能は、多くの場合で半固定抵抗器が用いられているはずです。

    抵抗値を上げたい場合は2番ピンと3番ピンの間のつまみを回転させるのが基本ではありますが、ピンの故障により抵抗が全くない状態になることを防ぐため、2番ピンと3番ピンをショートさせたうえで1番ピンと2番ピンの間にあるつまみを右回転させるやり方もあります。

    回路によっては抵抗が全くない状態になると不具合が起きることもあるため、ご紹介した基本の使い方を踏まえながら、回路ごとに適した使い方をするようにしてください。

    二通りの可変 ~ 半固定抵抗器の基本的な使われ方 ~

    —— 回路設計上の注意点はありますか?

    半固定抵抗器の使われ方は、大きく分けて二通りあります。ひとつは、電圧の分圧器として3端子で使う電圧調整としての使い方、もうひとつは、電流調整のための可変抵抗器として2端子(スライダ/ワイパと片端を結ぶ)で使うものです(図3)。

    図3:基本的な使われ方

    出典:日本電産コパル電子株式会社

    両者はどちらも同じように見えますが、特性や注意点は幾つか異なる点があります。例えば、温度特性を考えた場合、電圧調整では温度による抵抗値の変化の影響をあまり受けません(図4)。

    図4:抵抗値変化の影響

    抵抗値が変化してもRa/Rbが一定なら、Voutは不変

    出典:日本電産コパル電子株式会社

    これに対して、電流調整では抵抗体や摺動部接触抵抗(ワイパー抵抗)の温度係数がそのまま反映されます。

    また、電圧調整ではスライダから電力を取り出すことはなく、スライダがどの位置にあっても消費電力は変わりませんが、電流調整で可変抵抗器として使う場合は、スライダを回して抵抗値を小さくすると、回路に流れる電流が大きくなります。

    その結果、半固定抵抗器を焼損してしまうことも考えられます。電流調整での焼損を防ぐには、半固定抵抗器と直列に、電流制限のための抵抗を挿入してください(図5)。電流調整で抵抗値が小さくなると、相対的に摺動部の接触抵抗の影響が大きくなることも、知っておきたい事柄です。

    図5:電流の制限(2端子使用時)

    出典:日本電産コパル電子株式会社

    一方、電圧調整ではスライダの出力を接続する回路はハイインピーダンスにしますが、摺動時の接触抵抗の変動に起因するノイズや出力変動を押さえるためには最低1μA程度の電流が流れるようにしておく必要があります(図6)。

    図6:ワイパ電流の確保(3端子使用時)

    出典:日本電産コパル電子株式会社

    半固定抵抗器には周波数の依存性があり、実際の半固定抵抗器の周波数特性は、抵抗値や抵抗体の材料、さらに形状等で大きく変わります。抵抗値が低ければ、高い周波数まで使用でき、高周波回路への応用ができるということになります(図7)。

    サーメットトリマは、周波数特性が優れており比較的高い周波数まで使えますが、最終的な特性は使用回路によっても異なり、スライダの位置に係わらず同じ周波数特性を保証できるというものでもありません。回路形式とインピーダンス、信号の周波数などにより使える回路もあれば使えない回路もあるということになります。

    実装上の注意としては、調整時にロックペイントが施されることがありますが、ペイントが硬化する際にスライダにトルクが加わることがあるので注意してください。また、調整に際しては指定された調整用ドライバを使用するよう心がけてください。

    図7:半固定抵抗器(サーメットトリマ COPAL CT-6P )の周波数特性例

    出典:日本電産コパル電子株式会社

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