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      • 発行日 2023年7月6日
      • 最終変更日 2023年12月6日
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    小型リレーの基礎知識

    取材協力:富士通コンポーネント株式会社

    リレーとは

    —— 「リレー」とは回路の切り替えを行うための部品のことです。

    回路の外部から電気を受け取ることにより、回路のオン・オフを行ったり、回路の切り替えをしたりするのがリレーの役割。運動種目のリレーのようにバトン代わりである電気信号を受け取ったリレーは、制御部において別の電子機器に電気信号を伝えます。 たとえば、リモコンを使いエアコンの電源を入れる場合は、リレーによりリモコンの電気信号がエアコンへと伝えられたということです。以上のようにリレーとは、電気信号を別の機器に伝えながら回路の切り替えやオン・オフを行う部品を指します。

    リレーとは?その名の由来 ~小型リレーの機能と用途 ~

    —— 「リレー」という名はどこからきたのですか?

    リレーの発明は、今から170年以上前に遡ります。最初に使われたのは、サミュエル・モールスによるモールス通信と言われています。有線によるモールス通信では、送受信機間の距離を延ばすと信号の損失が大きくなると同時に、波形が鈍って通信ができなくなります。そこで、モールスは送受信機の間に今のリレーに相当する中継器を介し、信号を作り直して次に渡すことで、長距離通信を可能にしました。次々と信号を受け渡していくことからリレー(Relay)と呼ばれ、日本語では「継電器」になったわけです。リレーはその後、電話交換機や黎明期のコンピュータなどに使われた時代があります。これらは半導体に置き換わっていますが、近年のリレーは機器の電源オンオフや信号の経路切り換えなどに使われています。具体的には、ファックス電話機等の通信機器、冷蔵庫などの家電品、空調や自家発電などの設備機器、エスカレータなどの制御機器、自動車や電車などの車両および信号機など、幅広い分野で発展を遂げました。例えば自動車では、現在1台に20~30個のリレーが使われているほか、新幹線などでも1編成で1000個近くにのぼり、リレー全体としては全世界で年間に約50億個も生産されています。

    リレーの種類

    —— リレーは主に「有接点リレー」と「無接点リレー」の2種類に分けられます。

    有接点リレーは名前のとおり接点を持つタイプです。「メカニカルリレー」とも呼ばれ、電気信号により接点を開けたり締めたりすることで電流や電圧を調整し、リレーとしての役割を果たします。 対して無接点リレーは可動する接点を持たず、「MOS FETリレー」「ソリッドステートリレー」と呼ばれることもあるとおり、MOS FETをはじめとする半導体や電子部品により構成されるタイプです。そのため、回路の働きにより電気信号の受け渡しを行います。

    以上のようにリレーは接点の有無と電気信号の受け渡し方式により、有接点リレーと無接点リレーの2種類に分けられます。

    リレーのメリット・デメリット ~ 半導体スイッチとの比較 ~

    —— リレーは半導体に置き換わりますか?

    リレーは機能の上からは、パワートランジスタやFETなどの半導体と同じスイッチングデバイスと捉えることができます(図1)。その場合、速度や大きさの面では半導体が有利ですから、デジタル論理回路などは半導体に置き換わりました。

    その一方で、機器の電源などさほどの速度を必要とせず、比較的大きな電流を入り切りさせる目的に対しては、リレーが使われます。

    ◀図1:リレーと半導体スイッチの機能差違

    その最大の理由はコストです。図2は、スイッチする電流容量とコストの関係を示したものです。半導体の場合は、電流が大きくなるにつれコストが急上昇しますが、リレーの場合は穏やかです。結果として、おおよそ3~10Aを境に、コスト的にリレーが有利なわけです。

    図2:リレーと半導体スイッチのコスト比較

    リレーを使う第二の理由は、一次側と二次側が絶縁されていることです。ACラインと直結した回路のオンオフやグラウンド電位が異なる機器間の信号切り換えなどでは、オンオフを制御する一次側とオンオフされる2次側とでグラウンドを共通にできませんが、リレーを使えば特別な回路を使うことなく、絶縁バリアを介してスイッチを制御できるからです。

    もうひとつ、リレーの採用理由に挙げられるのは故障モードです。パワー半導体の場合、高温下などではショートモード、つまり端子間が短絡した状態で故障することがありますが、リレーではほとんどがオープンモード、つまり端子が開放(絶縁)になります。電源回路に使用される場合などは、万一の故障に際して「安全側」に倒れるわけで、車両など高い安全性と信頼性を必要とする分野では、従来からリレーが好んで使われています。

    スイッチとソレノイド ~ リレーの種類と構造 ~

    —— リレーの使い分けを教えてください。

    リレーの基本は、電磁石と連携したバネ構造のスイッチです。図3に最も一般的なヒンジ型リレーの構造を示しました。最近では内部構造が見えない不透明の樹脂成形品が多くなりましたが、何れも内部の可動接点はヒンジ(hinge:ちょうつがい)を形成しており、通常は復旧バネと梃子(てこ)の原理によって開かれています。コイルに通電されると接点が磁石に引かれ、接点が閉じると同時に強固な閉磁路が形成されます。

    図3:ヒンジ型リレーの基本構造

    その様子を示した写真が図4です。

    最近では内部構造が見えない不透明の樹脂成形品が多くなりましたが、何れも内部の可動接点はヒンジ(hinge:ちょうつがい)を形成しており、通常は復旧バネと梃子(てこ)の原理によって開かれています。コイルに通電されると接点が磁石に引かれ、接点が閉じると同時に強固な閉磁路が形成されます。その様子を示した写真が図4です。

    図4:ヒンジ型リレーの動作例

    ちなみに、数十A以上の大電流用には、力が強く接点間のギャップを広くできるプランジャ(Plunger)型が、反対に小信号向けでは、小さなリードスイッチを使ったリードリレーがありますが、数としてはヒンジ型の通常リレーが全体の8割以上を占めます(図5)。

    図5:大電流に使用する プランジャ型リレー(左)と小信号回路に用いる リードリレー(右)

    リレーの選び方 ~ スペックの注目項目 ~

    —— リレーの選択に際して肝になる仕様項目は何ですか?

    リレーはスイッチとして使うわけですので、選択の手順としては接点(2次側)の電流容量が出発点となり、これに開閉電圧、回路数、そして入力側の電圧定格などが続きます。近年では機器の小型化要求が強まっているため、寸法・形状や実装条件を優先して絞り込まれることも多くなりました。他のチェック事項としては各種安全規格への対応状況などが挙げられます。出発点となる接点電流は、定常値だけでなく投入時のラッシュ電流等を考慮してください。リレーの仕様は純抵抗負荷で定められていますが、コンデンサ負荷やモータなどでは投入時に過渡現象として大きなラッシュ電流が流れるからです。ラッシュの大きさは負荷によって異なりますが、コンデンサ負荷で定格のおおよそ10倍、モータでは4倍を見込む必要があります。交流を扱う場合には、負荷の力率も影響します。接点電流に余裕のある選択が求められるわけですが、余裕があるからといって大電流用のリレーで小信号を扱うことは好ましくありません。接点の構造や材質が電流容量毎に最適化されているからです。電流に付随して接点の電圧定格があります。電圧も定常時だけでなく、過渡現象を考慮してください。特に誘導性の負荷では、遮断時に大きな逆起電圧が発生します。

    また、図6に仕様の一例を示したように、電圧定格は交流と直流では大きく異なることに注意してください。

    違いが出るのは、交流ではスイッチが開く際に発生するアーク(放電)が電圧のゼロクロス時に消えるのに対して、直流ではそれが無いからです。なお、仕様書などで通電時と無通電時の接点状態を記号表記することが多いので、その意味を表にしました(図7)。

    ◀図7:接点構成と表示記号

    回路数に関しては、ACラインの電源スイッチとして使用する場合に2回路入りのものを使用して「両切り」とする例が多くなっています。

    履歴がものを言う ~ 設計上の留意点 ~

    —— 回路設計上のポイントは何ですか?

    リレーの1次(入力)側は電磁石、2次(出力)側はスイッチですので、使う上でも各々の側で留意すべき点があります。2次側から先に言うと、一般のスイッチと同様に電流・電圧定格に余裕を持たせること、そして設計に際し投入時のラッシュや遮断時の逆起電圧に対する突入防止やサージ保護など、負荷側での回路的な対策を予め織り込んでおくことです。一方、1次側の電圧定格は駆動回路に合わせます。ただし、リレーはその原理上、ヒステリシス(磁気履歴)特性を持っており、オンするとき(感動時)とオフするとき(開放時)では電圧が異なることを頭に入れておいてください(図8)。

    図8:コイルの電圧とリレー動作

    ちなみに、パルス状に電圧を加えただけで動作が保持されるラッチングタイプのリレーもあります。切り換え時だけしか電力を消費しないことから、省エネ部品として見直されています(図9)。

    ◀図9:ラッチング リレーの一例

    頭も冷やして考えよう ~ リレーの発熱と動作特性 ~

    —— 最近のリレーはずいぶん小さくなりましたね。

    機器の小型化・高密度実装化に伴い、リレーも小型化が進んでいます。低背のものや細型のものなど選択肢が増えました。ただ、リレーの小型化に伴い使用上気をつけたい事柄があります。それは温度特性、具体的にはリレーの発熱に伴う動作特性の理解です。リレーの1次側は電磁石ですから、コイルに流れる電流によって発熱しコイルの温度は周囲よりも高くなります。リレーは発熱部品であり、発熱することで動作に制限を生じるという認識を持ってください。図10は、使用電圧と周囲温度の関係を示したグラフです。コイルにかかる電圧が高いほど電流が多く流れるので、発熱量が増します。コイルの発熱は周囲温度に加算されるので、周囲温度が高くなるほど許容できる最大電圧は小さくなります。図の右下がりの直線による制限がそれで、一般電子部品のディレーティングと同じです。リレーの場合はそれに加えて、感動電圧(最小動作電圧)も温度に比例して高くなるという特性を持っています。これは、コイルの巻き線抵抗に起因する現象です。コイルの磁力は電流と巻線数の積(アンペア・ターン)で決まりますが、通常は電圧源で駆動されるため、オームの法則 [電圧=電流×抵抗] から、巻き線の抵抗変化が動作電圧の変化に反映されることになるからです。銅の抵抗温度係数は0.4%/℃ですので、感動電圧もそれに対応し、図の右上がりの直線がそれを表しています。結果として、周囲温度が高くなるにしたがって使用できる電圧範囲は狭くなりますので、放熱に気を配った部品配置など、周囲温度が高くならない実装を心がけてください。

    図10:周囲温度とコイル電圧

    働き過ぎはケガの元 ~ リレーの寿命と信頼性 ~

    —— リレーの寿命があるってホントですか?

    リレーは電子部品の中にあって信頼性の高いアイテムです。とはいえ永遠の命を持っているわけではありません。リレーは接点が機械的な動きをするため、接続と切断を繰り返すにつれて接点が摩耗し、やがて寿命を迎える有限寿命部品なのです。いつ寿命に達するかは、負荷の軽重など使用条件によって変わってきますが、接点定格負荷使用で妥当な使用状態であれば、おおよそ10万回が目安です。図11は、寿命曲線の一例です。

    図11:寿命曲線の一例

    なお、ストレスの大きな直流回路に繰り返し使用すると、プラス側の接点が窪んでくるのと同時にマイナス側接点に突起を生じる「転移現象」を起こすことが知られています(図12)。その様子を示しました。

    図12:耐久試験による接点劣化例

    メカの心得 ~ その他の注意点 ~

    —— 他に気をつける点はありますか?

    例えば、リレーを使う目的のひとつに1次側と2次側の絶縁があるわけで、リレーが持つ、1次2次間の絶縁や耐圧を低下させないパターンレイアウトや配線も大切です。他は、リレーが可動部を持った機械的部品であることを念頭に置けば、対処できるでしょう。例えば、振動や衝撃で接点が動いてしまう可能性が無いわけではありません。そのため、例えばクルマのドア内部に組み込むといったように、大きな振動や衝撃が加わりやすい機器では取り付け方向にも配慮します。なお、図13のように、リレーの応答時間は動作(感動)と復帰で異なり、動作に要する時間の方が長くなります。動作には接点が移動する時間が含まれるので、サイズの大きなリレーや接点電圧を高めるために、接点間のギャップを広くしたリレーほど時間が長くなります。また、微視的には接点がバウンドするチャタリングも起こります。これらはパワー回路ではほとんど問題になりませんが、信号回路に使用する場合は、時間方向に対するリレーの動作理解とチャタリング除去など回路側での対処を忘れないでください。

    図13:コイル電圧と応答時間

    リレーの仕様

    リレーの仕様

    Q. メカニカルリレーの長所・短所は?

    A. 長所:構造が単純。大電流制御ができる。OFF時の絶縁が優れている。      短所:スイッチ素子が機械的であるためチャタリングやアークを発生する。形が大きい。切り替えが遅い。      用途:大容量制御。高周波信号伝達。

    Q. 半導体リレーの長所・短所とは?

    A. 長所:無接点のため、無音で半永久的。応答速度が速い。     短所:外部ノイズに弱い。負荷電流によってはヒートシンクを必要。     用途:スイッチングノイズを抑える用途。清音化を必要とする用途。

    Q. SSRの “ライン電圧”に18~530Vと書いてありますが、18Vより低い電圧で使うとどうなりますか?

    A. SSRの入力端子に印加し、正常に動作し得る電圧値なので動作保証は出来ません。トライアックを使用している商品は、大電流対応となっており、指定電圧より低い場合、動作が不安定になることがあります。商品によっては、0Vから使用できるものもあります。

    Q. ソレノイド/プル型、5Wについて質問ですが、戻り側の動作トルクはどの位になるのでしょうか?

    A. この商品は、動作方向にのみ可動致しますので、戻り側には別途設計が必要です。バネ等をお使い頂けますようご検討下さい。

    Q. リレーやソレノイドを駆動する際、接点の保護用に、ダイオードの取り付けを検討しています。どの様なダイオードを付けたらよいですか?

    A. リレー、ソレノイドイドのコイル部分の起電力を抑えるダイオードの選定としては、逆耐圧は使用電圧の4倍、電流値は負荷電流の10倍程でご選定頂ければと存じます。

    Q. ロータリソレノイドについて質問ですが、本体の軸が45度、95度に回転する商品ですか。回転動作の場合、元の位置に戻りますか。

    A. 45度、95度と軸が回転する商品です。電源を切断すれば、元の位置まで戻ります。戻り機構には、バネを使用しておりますが、別途組み込み等が必要な場合がございます。

    Q. ソレノイドについて質問です。プッシュ型は、通電して軸が出た後、元の位置まで戻りますか?

    A. 外部的にバネなどの力を加えないと戻りません。バネ付きタイプやラッチングタイプもありますので、ご検討ください。

    Q. プル動作型ソレノイドのストローク-フォースについての質問ですが、特性に記載がある50%、CONTの意味を教えていただけないでしょうか?

    A. CONTとはContinuousの略で、連続定格電圧での動作時を指します。また50%というのは50%デューティ比の動作電圧時のストローク対フォース特性の意味です。この商品の場合、デューティ比が小さいほど吸引力が大きくなります。なぜなら連続時はコイルの発熱に伴い、抵抗が大きくなって電流が徐々に減る為、吸引力が弱くなるからです。

    Q. 高周波リレー(RS品番480-0084等)は3MHzの電波の周波数でも切り替え使用できますか

    A. 対応可能周波数が2.6GHzまでOKなので使用可能です。

    Q. VOL15 P581に記載のあるパワーリレーの中の「CR回路内蔵形」とは何かを教えて欲しい。

    A. 接点で発生するノイズや、コイルのサージ電圧抑制のため、コイル印加電圧の立ち上がり時にCRで時定数を持たせてソフトにしたタイプです。

    Q. ソレノイドを検討しております。RSのカタログに外部抵抗の数値が書いてありますが、これは何ですか?

    A. トリガー(パルス電圧)を印加してソレノイドを左右どちらか一方に動作させた後、永久磁石の磁束を打ち消すため動作は反対のコイルを逆位相にします。そのためにコモンリード線(青)に直列にコイル抵抗とほぼ同じ値の外部抵抗を接続する必要がありますが、この値です。

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