- 発行日 2023年8月28日
- 最終変更日 2025年11月12日
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変圧器とは?構造や種類、用途・設置環境、その役割をわかりやすく解説
変圧器は、私たちが電気を安全かつ効率的に使うために欠かせない装置です。本記事では、変圧器の構造や種類、用途・設置環境、そしてその役割についてわかりやすく解説します。

変圧器とは?
変圧器は、その名の通り、電圧を必要なレベルに変換する装置です。
発電された電気は、電線を通して利用者に届けられます。
ただし、発電所で作られた電気は非常に高電圧のため、そのままでは使用できません。
一般家庭では100V、商業施設や工場では6,600V以上など、施設ごとに対応可能な電圧へ変換し、安全に使用できるようにします。
変圧器は、こうした電圧変換を行うことで、発電所から各施設まで電力を安全に届けています。以下で詳しく解説していきます。
変圧器を使う理由
発電所でつくられた電気は、送電線や変電所、配電線、引き込み線を通って各施設や家庭、工場へ送られます。
送電線には電気抵抗があり、電流の一部が熱となって失われます。電流が多いほど送電損失は大きくなります。
一方、電流を少なくして高圧送電すれば、送電損失を減らすことができます。このように、電圧と電流が反比例する原理を利用するために、変圧器が使われています。
変圧器は高圧送電の電圧を下げ、それぞれの場所で最適に利用できるように調整する役割を担っています。そのおかげで、高圧送電された電気でも、施設や家庭、工場で安全に使用できます。
なお、変圧器は電圧の高さによって、以下の3種類に分類されます。
- 超高圧変圧器:11万V以上
- 特高変圧器:2万V~11万V
- 高圧変圧器:6,600V~2万V
この分類は、変電設備の規模や用途を判断する際の基準として用いられます。
日常的に変圧器が使用される場面は?
先ほど解説したように、変圧器は発電所から送られてくる電気を適切な電圧に変換するために使われています。私たちの身の回りにも変圧器が使われています。例えば、家庭でDIYを行う場面を考えてみましょう。
庭などで電動工具を使う場合、家の中から長い延長コードを引くと電圧降下が起き、工具のパワーが弱まることがあります。その結果、十分なパワーが得られないおそれがあります。そこで、昇圧用の変圧器を使えば、下がった電圧を通常の100Vに戻すことができます。
また、電気溶接機なども、電圧が少し下がるだけで十分な性能を発揮できません。このような場合に変圧器を使うことが一般的です。
海外での使用
海外へ行く際にも、変圧器を使うことがあります。これは国ごとに定格電圧が異なるため、海外旅行の際に日本の電化製品を使う場合に必要となります。
もし、変圧器を使わずにそのまま使用すると動作しなかったり、故障の原因になったりするおそれがあります。このようなトラブルを防ぐために、変圧器を電源と電化製品の間に接続して電圧を調整します。
トランスと変圧器に違いはある?
「トランス」という呼び方もありますが、基本的には変圧器と同じものを指します。英語の「transformer(変化させるもの)」を略した言葉が「トランス」です。
また、電流を変化させる「変流器」という装置もあり、「トランス」という言葉を広義に使う場合は、変圧器や変流器をまとめた「変成器」を指すこともあります。さらに、「トランス」は機能によって呼称が異なり、降圧用は「ダウントランス」、昇圧用は「アップトランス」と呼ばれます。
変圧器の構造

変圧器の構造は、基本的にとてもシンプルです。鉄心(コア)に1次コイルと2次コイルを巻き付けて構成されています。コアとコイルの位置関係によって、「内鉄形」と「外鉄形」の2種類に分類されます。
- 内鉄形:高電圧・大容量に適している
- 外鉄形:低電圧:大電流に適している
ただし、近年の技術発展により、この区分は次第に曖昧になりつつあります。また、変圧器にはコアとコイル以外にも、電流を遮断するための絶縁材料が使われています。
変圧器の種類
変圧器の種類には、主に次の二つがあります。
- 油入式
- 乾式
変圧器には、運転中に発生する熱を冷却する装置が備えられており、使用される冷媒の種類によって分類されます。ここでは、それぞれの種類の特徴と違いについて解説します。
1.油入式
油入式の変圧器は、絶縁油に浸して熱を冷却する構造です。主に次の三種類があります。
- 自冷式:絶縁油の自然対流を利用して放熱する
- 風冷式:外部ファンを使用して強制的に冷却する
- 水冷式:油中に冷却水を循環させて冷やす
油入式の変圧器のメリットとデメリットは、以下の通りです。
【メリット】
- 価格が安い
- 設置条件が柔軟
- 耐負荷性能が高い
【デメリット】
- 火災に注意が必要
- 重量がある
- 絶縁油のメンテナンスが必須
各方式は、変圧器の容量や設置環境に応じて選定されます。
2.乾式
乾式の変圧器は、油を使わずに熱を逃がす構造です。同様に、次の三種類に分類されます。
- 自冷式:空気の対流を利用して放熱する
- 風冷式:外部ファンを使用して強制的に冷却する
- 水冷式:冷却水を循環させて冷やす
乾式の変圧器のメリットとデメリットは、以下の通りです。
【メリット】
- 安全性が高い
- コンパクトサイズ
- 湿気やホコリに強い
【デメリット】
- 価格が高い
- 感電や過負荷に弱い
- 駆動音が大きい
各方式は、設置環境や必要な冷却性能に応じて使い分けられます。
また、これらの冷媒の種類以外にも、変圧器は構造の違いによっても次のように分類されます。
- タップ切換方式:負荷時タップ切換・無電圧タップ切換
- 油劣化防止方式:油中水分吸着材内蔵・無圧密封式・窒素封入
タップ切換方式は出力電圧を調整するための機構であり、油劣化防止方式は絶縁油の品質を維持する目的で用いられます。
変圧器の原理
変圧器の原理としては、入力側(1次コイル)に交流電圧が流れると、出力側(2次コイル)に電圧が発生します。
それぞれのコイルの「巻数」に応じて「電圧」を自由に変える仕組みであり、この関係はファラデーの法則によって説明することができます。
巻数と電圧の関係は次の式で表されます。
V1/V2=N1/N2
変圧の仕組みの流れ
変圧器が電圧を変換する流れは、次のようになります。
- 1次コイルに電圧を加えると、交流電流が流れる
- 鉄心(コア)内に磁束が発生し、それが2次コイルを通過する(この現象を「鎖交」と呼びます)
- コイルにファラデーの電磁誘導の法則が働き、2次コイル側に電圧が発生する
- 誘導された電圧が再び交流電流として出力される
この仕組みが、変圧器の原理の中核となるものです。電圧の昇圧・降圧を安全かつ効率的に行うことで、各施設や機器が適切な電圧で電力を利用できるようになります。
具体例
例えば、1次コイルの巻き数が1,000回・電圧が1,000V、2次コイルの巻き数が100回の場合、発生する電圧は100Vになります。
このように、変圧器の原理は「巻数比=電圧比」というシンプルな法則に基づいており、私たちが日常的に使う電気を安定して供給するために欠かせません。
変圧器はどこで使われている?

変圧器は、電力を使用するあらゆる場所で欠かせない装置であり、電気機器の中でも非常に一般的なものです。送配電用の変圧器は、主に次のような場所に設置されています。
- 発電所
- 変電所
- ビル
- 工場
- キュービクル(適切な電圧に変換する設備)
- 柱上変圧器
特殊な例としては、産業用変圧器や高電圧試験用の変圧器、船舶用変圧器などがあります。また、家庭では先ほど解説したように、昇圧・降圧を目的とした変圧器が日常的に使われています。
これらの変圧器は、それぞれの使用環境や電圧条件に合わせて設計されています。
まとめ
この記事では、変圧器の構造や種類、原理、そしてその役割について解説しました。変圧器は、発電所でつくられた高電圧の電気を施設や家庭ごとに適した電圧へ変換し、安全かつ効率的に電力を利用できるようにする装置です。
発電所では送電ロスを抑えるため、高圧・低電流で電気が送られていますが、その電力を各施設で安全に使うために欠かせないのが変圧器です。
また、変圧器の種類や原理についても解説しました。本記事を参考に、理解をさらに深めてみてください。
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