——それでは、アルミ電解コンデンサを実装するうえでの注意点について見ていきましょう。
コンデンサが周囲の回路部分と接触しないよう配置すること
まずは、アルミ電解コンデンサが周囲の回路部分と接触しないように配置することに注意してください。コンデンサのケースはマイナス電極と接続されていると思われることが多いものの、電位に保証はありません。また、外装スリーブの絶縁についても保証されていないため、安全確実に実装するためには、周囲の回路部分と接触しないよう配置するようにしましょう。
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液漏れ・ガス放出への対策を実施すること**
次に、液漏れ・ガス放出への対策を実施することも必要です。おもに次のような3つの対策法をとりましょう。
- 圧力弁の開放に備えて上下に空間を確保すること
- コンデンサの封口部下部にはパターンを配置しないこと
- ネジ端子形の封口部を寝かせる場合は圧力弁部もしくは陽極端子を上にすること
電解コンデンサには「圧力弁」が設けられています。圧力弁の役割は、電流による発熱や電解液の蒸発・電気分解により内部の圧力が上昇した場合に備えることです。液漏れ・ガス放出への対策のため、コンデンサを実装する際には、弁の開放に備えて上下に空間を確保するようにしましょう。圧力弁は封口材などの部品の下部、もしくはアルミニウムケースの上部などにつけられています。
ネジ端子形の封口部は上向きにすることが基本ですが、ネジ端子形の封口部を寝かせる際には圧力弁部か陽極端子を上側にすることも注意するべきポイントです。また、液漏れでのパターン汚染を防ぐため、液漏れの影響が及ぶ位置へのパターン配置を避けるなど液漏れやガス放出への対策は万全に行ってください。
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過電圧がかからないように確認すること**
安全に実装するためには、アルミ電解コンデンサに過電圧がかからないよう確認することも欠かせません。具体的には、直流電圧にリプル電圧を印加したときの最高値が定格電圧を超過しないようにすることと、複数のコンデンサを直列でつなぐ場合、コンデンサひとつひとつに対してかかる電圧が定格電圧以下になるようにすることの2点が注意点です。過電圧がかかるとコンデンサは酸化皮膜を作り出し、ガスが発生し安全装置が作動することもあります。実装の際には過電圧にならないよう、事前によく確認しましょう。
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コンデンサに適した環境であるか確認すること**
実装する場所がコンデンサに適した環境であるか確認してから設計を行うことも注意点のひとつです。コンデンサは次のような環境で使用された場合、故障する可能性が高まります。
- 水・塩水・油・酸性溶剤・アルカリ性溶剤がかかる環境
- 高温多湿・結露状態となる環境
- 塩分・油成分・有毒ガスが充満している環境
- 直射日光・オゾン・紫外線・放射線があたる環境
- 振動や衝撃が規定範囲を超過する環境
コンデンサは水分・塩分・油・有毒ガス・直射日光などにさらされる環境や、激しく振動している環境、大きな衝撃が加わる環境では故障する恐れがあります。コンデンサ実装の際には、使用する環境が適切であるか確認することも必要です。
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再起電圧に配慮すること**
アルミ電解コンデンサを使用する際には、再起電圧に配慮することも必要です。再起電圧とは放電した後に、電圧が生じていないにも関わらず再度、端子間に電圧が発生する現象のこと。再起電圧が発生する恐れがある場合は、抵抗器を用いて放電を行わなければなりません。抵抗器は1kΩ程度が適切です。高電圧で容量の大きなコンデンサでは生じる電圧も大きくなるため、機器内部の点検などに際しては再起電圧に十分な注意を払いましょう。