• 発行日 2023年6月1日
    • 最終変更日 2026年3月4日
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積層セラミックコンデンサの特長と種類ごとの表記

取材協力:太陽誘電株式会社

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本記事では、積層セラミックコンデンサとはどのような部品なのかをテーマに、基本構造に加え、等価回路(ESR/ESL)から見た特性の考え方や、回路設計で注意したいポイントを整理します。また、積層セラミックコンデンサの特長や、温度特性(Class1/Class2)などの分類を中心とした積層セラミックコンデンサの種類についても解説し、MLCCが広い用途で使われる理由をインタビュー形式で紹介します。

小さいのに大きい ~ 積層セラミックコンデンサは、小型大容量 ~

—— 積層セラミックコンデンサは、どんな特長があるコンデンサですか?

積層セラミックコンデンサとは、酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体と電極を多数積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサです(図1)。セラミックが持つ優れた高周波特性などのメリットを活かしながら、小型で大容量を実現できるため、電子回路の広い範囲で使われるようになりました。特に大容量の積層セラミックコンデンサは、バイパス、デカップリング、平滑、バックアップなどに用途が広がり、電解コンデンサやタンタルコンデンサからの置き換えも進んでいます。

◀図1:積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部構造

コンデンサなのにLCR ~ 等価回路で考える ~

—— 積層セラミックコンデンサは、高周波や高速信号に向いているのですか?

コンデンサは誘電体を電極で挟み込んだ素子ですから、誘電体の特性がコンデンサの特性に大きく影響します。大容量の積層セラミックコンデンサに使われる誘電体は高誘電率のセラミックですので、シンプルな構造のまま容量の大きなコンデンサを形成できるため、他のコンデンサに比べ高周波性能に優れると同時に、高絶縁かつ低リークで耐湿性などにも優れます。ただし、現実には有限の特性を有し、無限の周波数まで使える理想コンデンサというわけではありません。実際の部品としてのコンデンサには、電極構造などに伴うインダクタンス成分なども含まれており、図2Aの等価回路のように、理想コンデンサと直列に小さな抵抗(ESR)とインダクタンス(ESL)が接続された部品であると考えることができます。

◀図2:等価回路 [A]とインピーダンス特性例 [B]

LCRの直列回路なので、インピーダンスは共振特性を示します。共振周波数はCとESLの値で決まり、共振周波数付近の特性は、ESRに支配され、具体的には図2Bのようになります。厳密には、ESRが周波数によって変化するなど、図2Aの等価回路では表現しきれない部分もありますが、他のコンデンサに比べてESL、ESR共に小さいので、コンデンサとして高い周波数まで動作し、共振周波数付近のインピーダンスが小さく、低インピーダンス領域が広いことから、高周波や高速信号あるいはノイズ対策などに向いていると言えます。

例えば図3は、電源の出力に積層セラミックコンデンサとタンタルコンデンサを使った場合(いずれも100μF)について、パルス負荷に対する応答を比較したものです。タンタルではESRによるステップ状の電圧変動が見られますが、積層セラミックコンデンサはESRが小さいので、段差がほとんど観測できません。

◀図3:電源に使用時のパルス負荷応答

図4は、コンデンサをデカップリングに使用したときの過渡応答の比較例です。デカップリングでの端子電圧は、負荷の急変に対して時間的に3種類の低下形態を示します。第一は、急変直後10ns以内に生じる低下で、コンデンサのESLによって生じます。第二は、200ns程度までに起こる低下で、これは主に容量で決まります。第三はESRによるもので、長い尾を引いた低下として観測されます。

◀図4:デカップリング回路での応答比較例

やや、ややこしい ~ 積層セラミックコンデンサの形状、特性の種類と表記 ~

—— 温度特性とか種類がたくさんあります。

積層セラミックコンデンサは、製造に当たって誘電体の特性をさまざまに制御できるので、色々な電気特性を持つ製品バリエーションがあります。選択に当たっては、使用目的に合ったものを選ぶことが大切です。手順としては静電容量と耐圧を出発点とし、サイズや温度特性などで絞り込むのが基本です。サイズは一般のSMD(表面実装部品)と同様に、縦横の長さで呼ばれます。その際、ミリを基準にした日本流(JIS相当)と、インチを基準にしたアメリカ流(EIA相当)の二通りの呼び方があり、例えばEIAの0603サイズはJISでは1608となるなど、間違えやすい面があるので注意してください(図5)。

◀図5:サイズの表記

また、各種の温度特性を持つ製品群があるのが積層セラミックコンデンサの大きな特徴で、選択のポイントでもあります。積層セラミックコンデンサの温度特性は、まずClass1とClass2の2種類に大別され、いずれも静電容量変化率と使用温度範囲によって特性コードが規定されています(図6)。

MLCCの温度特性分類

Class1は信号回路用で、比較的小容量のグループです。0±60ppm/℃(CH特性)など温度に対する容量変化率がごくわずかなものや、容量にわずかな負の温度係数を持たせることで回路の温度補償などに用いるためのもの(RH特性など)があります。いっぽう、Class2(高誘電率系)は電源回路やカップリングなどに用いる大容量のグループです。Class2は、さらに温度係数の大きなグループがあります。便宜上、表ではA、B、Cに分類してあります。結論を先に書きますと、Class1とClass2では同じセラミックでも、別種のコンデンサであると考えた方がよいです。

ちなみに、大容量の積層セラミックコンデンサはClass2であり、表の[C]に属するものも多いです。実際、Class1と2では、誘電体の組成からして別のものです。Class1は安定しており、容量変化に敏感な回路にも使えます。温度に対してリニアに変化することを逆に利用して、温度補償などにも用いられます。これに対して、Class2では容量変化がぐんと大きくなります。[B]のグループでも、常温の範囲で±10%オーダの容量変化があります。ただ、この程度であれば、他のコンデンサの容量精度とあまり変わらないという見方もできるので、その意味では置き換えができる範囲にあります。しかし、F、Z5V、Y5Uなど[C]のグループは、温度に対する容量の変化率が極めて大きくなっています。数ある電子部品の中で定数がこれほど変化するものは、他にないと言えるほどの値です。したがって、このグループの積層セラミックコンデンサが使えるのは、電源の平滑やデカップリングなど、容量に対してラフな回路部分に限られます。図7に、他のコンデンサとの比較を示しました。

◀図7:容量変化の比較

電圧で容量が変わる ~ バイアス依存とDC定格 ~

—— 積層セラミックコンデンサの選定や設計に当たって注意点はありますか?

積層セラミックコンデンサ(特にClass2)は、小型・大容量・低ESR・低ESLが大きな特長ですが、一方で他のコンデンサとは異なる特性を示す部分もあります。DC電圧に対する容量変化が大きいのもそのひとつです。

図8は、定格電圧10V容量100μF品のDC電圧対容量特性例ですが、DC10Vが加わった状態での容量は無印加時の30%まで低下します。

◀図8:DCバイアス対静電容量特性例

電源回路などに使用する場合、直流電圧が加わることで容量が回路の許容値を下回ることも考えられるわけで、設計に際しては値に余裕を見込んでおく必要があります。耐電圧は、変動のピークで定格いっぱいまで見込むことができますが、定格の80%以下で使うことが推奨されます。スイッチング電源回路などで使用する場合のリップル電流なども、定格値以内で使わなければならないことは言うまでもありません。

※部品特性については、電子部品メーカー各社よりツールが提供されています。

電圧と時間による容量変化

積層セラミックコンデンサは、直流の印加電圧によって容量が大きく変化します。印加電圧に対して非線形な振る舞いをする素子であり、フィルムコンデンサなどとは特性が大きく異なります。

例えば、F特性(Cグループ)の場合、定格電圧付近では、所期の1/5以下の容量になることもあります。さらに、交流電圧の振幅に対しても容量は変化し、直流とは異なる特性を示します(図9)。

◀図9:交流電圧印加特性例

同様に、大容量の積層セラミックコンデンサには経時変化があります。高誘電率系の誘電体は、無負荷で常温中に放置した場合、対数時間に対してほぼ直線的に静電容量が減少していきます。およそ1年(8760時間)で20%、10年で30%程度を見込む必要があります(図10)。これらの特性は積層セラミックコンデンサが強誘電体素子であることに起因しますが、よく知られるように、強誘電体は圧電素子としても利用されています。つまり、積層セラミックコンデンサは圧電素子としての性格も併せ持っており、例えば、機械的な衝撃が加わるとパルス性のノイズが現れることがある点も覚えておきましょう。

◀図10:経時変化特性例

ESRは小さい方が良い…とは限らない

積層セラミックコンデンサは、大容量化によって応用範囲がぐっと広がりました。電源回路の出力部への応用はその典型です。これまでアルミ電解コンデンサなどが使われてきた電源出力にも、積層セラミックコンデンサを使えるようになりました。ただし、無条件での置き換えには注意が必要です。場合によっては、積層セラミックコンデンサを使うと、電源が発振してしまうことがあるからです。発振の原因は、積層セラミックコンデンサのESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)が小さい点にあります。理想コンデンサに直列につながるESRは、理想的なコンデンサではゼロであり、通常はできるだけ小さい方がよいと考えられています。

そして、セラミックコンデンサは、ESRが小さいことが特長です。大容量のMLCCもこの特長を受け継ぎ、低ESRですが、電源の出力に使うと、これが逆に災いすることがあります。そのメカニズムを、図11に示しました。

◀図11:電源のループ特性

簡単に説明すると、電源回路は出力電圧を一定に保つために、負帰還を施します。出力のコンデンサは、負帰還のループ内に接続されており、電源の出力において位相の遅れ要素を構成します。一方で、帰還ループは位相回転が180°に達する周波数で、ループ利得が1[0dB]以上あると発振してしまいます。このため、何らかの方法で高域の位相を進め、位相回転が180°に達する周波数で、ループ利得が1以下になるように位相補償を施します。ところが、多くの電源回路制御ICでは、位相補償に出力コンデンサのESRを利用して(高域で位相を戻す)おり、ループ設計に際して、アルミ電解などのESR値を想定しているものが多くなっています。したがって、代わりにESRの小さな積層セラミックコンデンサを使うと、補償が不足して発振してしまうというわけです。

ちなみに、LDO(Low Dropout)タイプの電源ICは、この傾向が強いとされています。

対策としては、ESRに相当する抵抗を直列に入れたり、帰還抵抗に並列にコンデンサを入れたりする方法(図12のCf)も考えられますが、最近ではあらかじめ、積層セラミックコンデンサを想定して設計された電源ICも増えてきています。その場合は、ICで指定された型番のコンデンサを使うのが一番です。

◀図12:位相補償

以上、大容量MLCCを使用する際のポイントを述べました。注意点を列挙してきたため、やや使いにくい印象を持つかもしれません。たしかに安易な使い方は禁物ですが、大容量MLCCは、そうした面を補って余りある優れたコンデンサです。ツボをしっかり押さえて、存分に活用したいものです。

フィルムコンデンサとの違い

—— 積層セラミックコンデンサとフィルムコンデンサとの違いは、次のとおりです。

左の表に、分かりやすいように二極化した表現で違いをまとめました。

積層セラミックコンデンサは耐熱性に優れるものの、温度特性が低く静電容量の変化が大きいこと、クラックや音鳴きが発生しやすいことなどの特徴があります。しかし、大きさは小さく、フィルムコンデンサと比較して安価です。対してフィルムコンデンサは耐熱性が低いものの温度特性に優れており、クラックや音鳴きが発生しにくいことが特徴です。サイズは大きく高価な傾向にあります。

ただし、積層セラミックコンデンサの温度特性の低さは、温度補償用タイプを使用することで補えます。積層セラミックコンデンサとフィルムコンデンサには耐熱性・温度特性・クラック・音鳴き・大きさ・価格などに違いがあり、それぞれの特徴を踏まえて選択する必要があります。

まとめ

今回のインタビューを通して、積層セラミックコンデンサとは、誘電体と電極を積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサ(MLCC)であり、小型化や高周波特性といった積層セラミックコンデンサの特長を活かして、デカップリングや電源回路など幅広い用途で使われていることが分かります。また、温度特性(Class1/Class2)などの違いによって積層セラミックコンデンサの種類が分かれるため、それぞれの特性を理解したうえで用途に合わせて選定することが重要です。なお、低ESRといった特性は常にメリットになるとは限らず、電源回路などでは回路条件によっては注意が必要になる場合もあります。

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