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      • 発行日 2023年7月21日
      • 最終変更日 2023年11月7日
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    高周波測定用アクセサリ ガイド

    (取材協力:キーサイト・テクノロジー株式会社)

    Don't disturb

    ~ RF測定の特徴 ~

    —— 高周波測定は低周波の測定と何が違うのでしょうか

    高周波と低周波の測定を比べると、低周波ではオシロスコープに代表される時間領域での評価が主であるのに対して、高周波ではスペクトラムアナライザのように周波数領域で評価することが多いといったこともありますが、最も大きな違いは、「インピーダンス」にあると言えるでしょう。多くの低周波回路では、図1のように、低インピーダンス信号源からの信号をハイインピーダンスの回路や機器に入力するなど、系のインピーダンスは非整合で、測定器は入力をハイインピーダンス(高入力抵抗・小入力容量)にして接続の影響を小さくします(電流測定ではこの逆)。これに対して、ほとんどの高周波回路は信号源、伝送路(ケーブル)、負荷の全てのインピーダンスを統一し、系全体がインピーダンス整合されています。したがって、シグナルジェネレータ(SG)やスペクトラムアナライザ(スペアナ)、ネットワークアナライザなど測定器の入出力も50Ωなどに統一し、測定器を接続してもインピーダンスの整合状態が乱れないようにする点で低周波とは異なります。

    図1:低周波/直流測定と高周波測定の違い

    低周波/直流測定と高周波測定の違い

    高周波測定の注意点

    —— 高周波測定を行う際には、プローブに触れないよう注意しましょう。

    高周波を測定する際にプローブに触れてしまうと、測定結果に誤差が出てしまう可能性があります。プローブに少し触れただけでも大きな誤差となることがあるため、高周波測定の際にはプローブに触れないよう注意してください。

    —— インピーダンスをあわせることも注意するべきポイントです。

    インピーダンスがあっていなければ、測定対象となる信号の電力が消費されてしまいます。高周波の測定ではできる限り電力を消費させないよう、高周波測定用アクセサリまで電力を無駄なく伝えることが大切です。そのため、回路のインピーダンスとあわせるよう意識しましょう。

    —— 測定時にキャリブレーションを行うことも高周波測定の注意点です。

    高周波測定では測定対象となる信号の波長が短いことから、測定に用いるケーブルやコネクタなどによる鑑賞を受けやすくなります。そこで、キャリブレーションを行い、測定対象以外の物からの特性や影響を省くことで正確な測定値を得やすくなるのです。キャリブレーションを行わなければケーブルやコネクタの特性も測定結果に含まれてしまうため、高周波測定ではキャリブレーションを行ってください。

    相手にあわせる

    ~ アダプタとATT ~

    —— インピーダンスが合うものを使えば良いんですよね。

    インピーダンスが合致したものを使うのは大前提ですが、例えば、測定対象はSMAコネクタ、測定器入力はNコネクタになっているなど、そのままでは接続できないこともあります。そうした場合には、変換用アダプタを利用します。また、アンプの出力のような、レベルの大きな信号を測定する場合には、アッテネータ(減衰器)を介して、レベルを測定器の入力条件に合致させます。アッテネータには減衰量が固定のもの(アッテネータパッド)と可変式のものがあります。どちらも特性インピーダンスや周波数特性、耐電力などを満たす必要があるのはもちろんですが、可変式のものは設定の再現性が良いものを選択するのもポイントです。

    なお、アダプタやアッテネータに限らず同軸コネクタを有する測定器や補助具類を使用する場合には、接続部分に変形や損傷が無いことを必ず確認してください。変形や損傷があるとインピーダンスに乱れを生じます。例えば、スペクトラムアナライザによる測定では、不整合の有無は結果からは判別できないので、事前の目視チェックは重要です。

    図2:固定アッテネータ(左)と可変アッテネータ(右)

     図2

    合成と分配

    ~ ディバイダとスプリッタ ~

    —— 聞き慣れない名前の補助具が多くて混乱しています。

    例えば、RFアンプの2信号特性を測定するときは、2台のシグナルジェネレータを使用し、ディバイダで信号を合成(加算)したものをアンプに加えます。いっぽう、アンプの出力を2系統に分けたい場合などには、スプリッタを使います。どちらも内部に抵抗が組み込まれた3ポートの補助具で、外観からは見分けが付きにくいのですが、内部回路は異なります。パワーディバイダには16.7Ωの抵抗が3個入っており、各ポートから見た条件は同じです。いっぽう、スプリッタは内部に50Ωの抵抗が2本入っていて、3個あるポートのうちのひとつは、抵抗の接続点から直接引き出されています。こうすることで、合成・分配の際に各ポートを見込んだインピーダンスが50Ωとなり整合が得られます。図3を参考にして確認してみてください。特にディバイダという名前から来る意味と、信号の合成という用途は取り違えやすいかもしれません。ちなみに、どちらもポート間の理論損失は6dBです。

    ディバイダとスプリッタ

    経路の切り換え

    ~ スイッチのロスとアイソレーション ~

    —— ケーブルのつなぎ換えとかも神経を使います。

    図4は、デュアルバンド携帯電話用アンプの測定例です。マニュアルでのつなぎ換えも不可能ではありませんが、この例では高周波測定用のスイッチで切り換えを自動化し、作業の効率アップと同時に測定の信頼性を確保しています。スイッチは複数の部品のテストなどでもよく使われるほか、測定器にスイッチが取り込まれているものもあります。高周波スイッチでは、耐電力やオン状態での導通損失などの他にオフ状態でのアイソレーションもポイントです。アイソレーションは切ったはずの信号の一部が漏れてつながる量を意味します。漏れの大きさは切り離された端子の終端状態で大きく変わりますので、スイッチの特性を活かすためには切断時にも整合がとれる回路構成にするといった工夫が大切です。なお、測定用の高周波スイッチには機械接点式のものとPINダイオードやFETを使った半導体式のものがあります。機械式はアイソレーションが良好(図5)、半導体式は速度が速い、寿命が長いなど、それぞれにメリットがあるので使い分けるのが賢い方法です。

    図4:スイッチを使った高周波測定の例

    スイッチを使った高周波測定の例

    図5:測定用高周波スイッチの外観とアイソレーション特性例

    行きと帰り

    ~ 方向性結合器とブリッジ ~

    —— 他に高周波特有な補助具とかありますか?

    高周波測定用の補助具としては、これまで挙げたものの他に、ディテクタダミーロード(終端器)パワーリミッタなどがあります。ネットワークアナライザなどでは機器専用のアクセサリや校正キットが用意されており、測定に際しては指定されたものを使います。他に敢えて挙げるとすれば、方向性結合器(Directional Coupler)とブリッジでしょう(図6)。両者は、給電線などに挿入して、信号の一部を別に取り出す時などに使います。方向性結合器の名のとおり、進行波と反射波を分離して取り出せるため、アンテナなどの反射・定在波比(VSWR)測定やパワーのモニタなどに便利です。ただし、検出特性は周波数に依存するため、使用に当たっては、伝送損失や結合係数(出力に検出される割合)、自身のSWRなどの他に、周波数範囲とアイソレーション(進行波と反射波を分離度合)が目的に合致するものを選択してください。

    図6:方向性結合器(左)とブリッジ(右)

    方向性結合器(左)とブリッジ(右)

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