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    直流安定化電源 ガイド
     
      • 発行日 2023年7月21日
      • 最終変更日 2023年11月7日
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    直流安定化電源 ガイド

    直流安定化電源の基礎知識とマイクロアンペアオーダーの電流測定方法(取材協力:キーサイト・テクノロジー株式会社)

    直流安定化電源とは?

    直流安定化電源は、電子機器などの設計やテストに使用される電源です。電子機器の開発では、回路やデバイスの性能を評価するために電源が欠かせません。「ベンチ電源」とも呼ばれ、設計や実験を行う場所をベンチと呼ぶことに由来しています。直流安定化電源は、異なる電圧で安定した直流電源を供給し、個々の機器に合わせて電圧を指定することができます。また、最大電流も設定することができるため、不測のショート等が発生した場合にも、機器を保護することができます。

    最近の電源は、従来と同じ価格帯でも小型化、高機能化が進み、使いやすくなっていますが、どれだけ電源が進化しても、電子機器などの評価に適用する際の注意すべき基本事項はおさえておきたいものです。

    直流安定化電源を選定するときのポイント

    直流安定化電源を選ぶ際には、次のようなポイントに気をつけてください。

    回路方式を確認する

    まずは、回路方式を確認しましょう。直流安定化電源の回路方式には「スイッチング方式」と「ドロッパ方式」の2種類があり、それぞれ次のような特徴を備えています。

    【回路方式ごとの特徴】

    • スイッチング方式:サイズとトランスが小さいが、発熱があり回路が込み入っている
    • ドロッパ方式:サイズが大きく発熱があるが、ノイズによる影響を受けにくい

    上記のように特徴が異なるので、求める特徴を備えた回路方式の製品を選んでください。

    出力可能な電圧・電力を確認する

    次に、出力可能な電圧と電力を確認することも大切です。製品により定められている電圧・電力以上は出力できないので、目的を達成できる製品を選ぶためには必ず電圧・電流の範囲をチェックしておかなければなりません。

    視認性の良さから選ぶ

    使いやすい直流安定化電源を選ぶには、視認性が良いことも欠かせません。電圧や電流の数値をデジタルで示すものと、アナログの針で示すものの2種類があるので、より見やすく、直感的にわかりやすいほうを選ぶと使い勝手が向上するはずです。

    μA(マイクロアンペア)オーダーの電流を測るには?

    —— 低消費電力が求められるモバイル機器では、パワーダウン時の消費電流が低く抑えられています。このような暗電流、あるいは、リーク電流など、μAオーダーの電流を測定することはできないものなのでしょうか?

    モバイル機器関連の設計者からは、μAレベルのリーク電流でも測定できるようにしてほしいという要求をよくいただきます。電圧は、1台のデジタルマルチメータ(DMM)を回路と並列につなぐことで“測定”できますが、測定回路に電源を供給しながらμAオーダーの微小電流を測定しようとすると、被測定回路の一部を切断してデジタルマルチメータを直列に接続し、手間をかけて測定する必要があります<図1>。

    図1:従来の微小電流測定

    従来の微小電流測定

    また、デジタルマルチメータに搭載されている電流を測定するためのシャント抵抗の影響も無視できません。測定したい電流が小さければ小さいほど、シャント抵抗を高くする必要があるため、電圧降下の影響が大きくなるため、回路の停止や誤動作を引き起こし、正確な評価や測定ができなくなる可能性もあります。

    図2:赤枠「電源+2台のDMM=3台」は従来型の微小電流の測定時に必要な構成。 青枠は新型電源(E36300A)

    図2

    昨今の新型電源には、シャント抵抗を内蔵し、DMMを用意する必要なく、1台で電源を供給しながら微小電流を測定できるものがあります<図2>。例えば、電流測定機能の分解能1μAで、2.5V/1mAの設定で負荷を測定する場合、電圧を±10mV変化させることにより、±20μAの電流値を測定できます。従来型の電源では、ここまでのリードバックができませんでした。

    気を付けたい、電源投入時・負荷変動時の測定

    —— 電子機器の設計・開発において、電源投入時や、負荷の変化などで電圧が変動した場合でも、制御回路が問題なく動作することを検証はどのように行えばよいですか?

    制御回路などの設計においては、安定した動作のための電源投入順序、タイミングの検証が重要となります<図3>。電源投入シーケンスは、近年重要になっている省エネの実現のためにも、重要な評価項目になっています。

    起動時の消費電流の波形

    開発段階の電源投入の測定には、あらゆるパターンのシーケンスで評価するため、対応するシーケンス設定のプログラムを作成する必要があります。PCで電源オン/オフのプログラムを作成し、PCと電源をGPIBなどのインタフェースで接続、GPIBインタフェースボード経由でそれらのコマンドを電源に送り、評価が可能になります。

    新型の電源では、パネル上で直接、電源投入シーケンスの設定、電源投入時のスルーレートの変更、任意波形発生機能によるノイズ環境の再現、また、複雑な出力変更のシーケンスを含む電圧・電流の変動をあらかじめパネル上でプログラムしておけるリスト出力、負荷の動作の模擬といった機能を備えたものがあり<図4>、限られたラボのスペースで、高価なGPIBインタフェースボード、ケーブル、PCが不要になります。

    図4:左=電源投入シーケンスを設定したときの、キーサイト・テクノロジーの電源「E36300A」の画面/右=画面パネル上で電圧・電流の変動をプログラムできる電源「E36313A」の画面

    配線抵抗の影響

    —— 配線の抵抗による測定対象物の電圧低下を考慮して、正しく測定するにはどうすればよいのでしょうか?

    電源を用いて測定回路に必要な電源供給を行う際、よく問題になるのが配線ケーブルの影響です。例えば5Vの電圧を設定した場合、5Vとなるのは、あくまでも電源の出力端子であり、その先のケーブルが長い場合など、実際の測定回路に印加される電圧が低下します。

    この場合、リモートセンシング機能のある電源を用います。出力端子(±)の他に、リモートセンシング端子(±S)が用意されており、その端子の接続点の電圧を測定、その点が必要な電圧が負荷に供給されるよう補正します。高機能電源の多くにリモートセンシング機能が装備されており、被測定物の駆動に必要となる電圧を、正確に供給できるようになっています<図5>。

    図5: リモートセンシング機能:上=リモートセンシングを利用しない例/下=リモートセンシングを利用した例

    リモートセンシング機能

    リモートセンス入力がない電源を用いる場合は、デジタルマルチメータなどで供給先の電圧を測定して、所望の電圧が供給されるように電源の出力電圧を調整する必要があります。

    電源は電子回路評価において不可欠なツールとして活用されています。 所望の電圧・電流の供給さえできれば良いといった感覚で選択・活用されるケースが少なくありませんが、近年の複雑化する電子機器回路の評価を想定した便利機能を備えたものが出現しています。

    特に、1mA以下といった微小電流の測定に電源の測定機能で対応できることは、面倒な待機電流測定に効率的に対応できる他、不良部品の簡単チェックの指標としても利用でき、回路評価を大幅に効率化します。

    また、活用にあたっては、配線による誤差などの落し穴を把握したうえでの運用も重要となります。

    本レポートが電源の選択・活用のヒントになれば幸いです。

    【取材協力:キーサイト・テクノロジー株式会社】 アジアパシフィック統括 マーケティング部門 マーケティング ブランド マネージャー 佐藤様(右)とソリューションエンジニアリング本部 テクニカルコンタクトセンター アプリケーションコンサルタント 岩崎様

    キーサイト・テクノロジー株式会社

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