- 発行日 2023年12月21日
- 最終変更日 2024年12月24日
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アイソレータとは?役割や仕組み、種類について詳しく解説!
アイソレータとは信号絶縁器を指し、入力信号と出力信号の間を絶縁する機能をもった電子部品です。当記事では、アイソレータが果たす絶縁の役割や、仕組み、種類などについて詳しく解説します。
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光アイソレータ
アイソレータは、特定の一方向へのみ信号を伝送させるデバイスとして使われています。その中でも主流となっているのが、光信号を使用する場合です。
光アイソレータは、前方に向かう光だけを通過させて反対方向の光をブロックする特性を持っています。これは、反射光によるレーザー損傷、不安定化、干渉からくるノイズなどを防ぐために重要です。
主に光アンプや光通信回線では頻繁に使用されており、光アイソレータは、入光が直線偏光である際に使用される偏光依存型と、入光の偏光状態に依存しない偏光非依存型とが存在します。
光アイソレータは、LEDなどの発光素子と、フォトダイオードやフォトトランジスタといった受光素子を一緒にした装置で、これらの素子は電流を通さない抵抗材で接続されています。
信号のやり取りは全て光によって遂行されるため、電気的な高絶縁性が実現されます。これによりノイズの影響も遮断され、各回路が円滑に稼働することで、アイソレータとしての役割を発揮します。
デジタルアイソレータ
デジタルアイソレータと光アイソレータの製品的な違いは、信号の伝送方法に光ではなくコンデンサやコイルを使用していることです。抵抗体等の絶縁素子を通じて入出力が分けられる点は同様ですが、信号は磁気や容量結合を通じて伝送されます。
コイルを使う場合の絶縁方法をインダクティブ(磁気結合・誘導性)絶縁と呼びます。コイルに電流が流れると、その周辺に磁場が形成され、電流が止まっても一定期間磁場は維持されます。
この性質を活用し、一方のコイルに電流を送り込んで磁界を発生させ、それによって他方のコイルにも電流が流れるようにするのがインダクティブ絶縁の原理です。直接電気が繋がるわけではなく、発生した磁界が出力側のコイルで新たな電流を発生させるという原理なので、絶縁性を保つことができます。
インダクティブ絶縁は、光アイソレータよりも寿命が長いという利点がありますが、消費電流が増えると磁気干渉を受けやすくなるという欠点もあります。
インダクティブ絶縁の次に誕生したアイソレータの絶縁手段は、コンデンサを活用したもので、これをキャパシティブ(容量性)絶縁と呼びます。コンデンサは直流信号を通さずに、交流信号のみを伝送します。これはコンデンサが交流の極性変化に応じて、繰り返し充電と放電を行う特性を応用したものです。
光アイソレータやコイルと同じように、電流が直接通過しないため、各々が独立した回路として絶縁性を保持します。寿命が長く、磁気ノイズに影響されない特性があり、基本的にはデジタル信号のみに対応しています。
また、近年ではCMOS(シーモス)などの新たな絶縁要素を利用したデジタルアイソレータが登場しています。寿命が長く、消費電力が少ない、小型化が容易などの優れた特性から、ますます関心が高まっています。
アイソレータの役割
アイソレータは、現在では入力信号と電源、出力信号と電源がそれぞれ絶縁されている形式が一般的です。
アイソレータには以下のような役割があります。
機器の保護
アイソレータの最も重要な役割は機器を保護することです。センサが動作せず不具合を起こしたときに絶縁がされていないと、メータやPLCなどの受信機器に悪影響を与えます。
電子機器が故障すると、通常は流れない電圧や電流の信号がケーブルを通じて別の機器に流れる可能性があり、感電や火災などの重大な損害を引き起こす可能性も想定されます。
そのため、信号線にアイソレータを設置しておけば、最悪の場合でもアイソレータが破損するだけで、他の周辺機器に悪影響を及ぼさずに済みます。
信号の回り込み防止
1つの電流信号を直列接続して2つの機器に取り込む際に、計器のマイナス側に設置したGNDが共通になっていると、電流の回り込みが発生し、もう一方の機器に信号が正しく届かない場合があります。
この現象を防ぐためにアイソレータを設置してセンサと計測器を分離することで、信号の回り込みを防ぐことができます。
信号の回り込みによる不具合を発見することや、不具合を見つけてからの対策は難しいため、機器を稼働させる前に完全な絶縁を施しておくことが重要です。
ノイズの除去
アイソレータには入出力信号を電気的に絶縁し、ノイズを低減する機能が備わっています。これにより、上位機器を保護したりノイズによる誤動作を防止したりすることができます。
アイソレータの原理
アイソレータは以下のような原理で機能しています。
光絶縁方式
光絶縁方式の送信側では、発光素子を活用して電子信号を光信号に変換しており、受信側ではフォトトランジスタなどを使用して、光信号を電子信号に変換しています。これにより、光を媒体として電気的な分離を行っています。
光絶縁方式は、主に光アイソレータで採用されています。
**キャパシティブ(磁気絶縁)**方式
磁気絶縁方式の送信側と受信側に、絶縁されたコイルが使用されています。
電気信号は磁気エネルギーへと変換されてから送られ、受信側では磁気エネルギーが電気信号へと変換する方式です。
この磁気を利用することで、電気的な分離が可能となります。磁気絶縁方式は、主にデジタルアイソレータで採用されています。
インダクティブ(容量)絶縁方式
受信側ではコンデンサを用いており、製品によっては送信側にもコンデンサがついていることもあります。送信側が電気信号を送ると、受信側はこの信号をコンデンサの充電・放電という形に変換します。
このコンデンサを介する方式により、直接的な電気信号の交換をせずに電気的な分離を行っています。
容量絶縁方式は、主にデジタルアイソレータで採用されています。
アイソレータで絶縁を行う理由
大きな電圧の下で使用されることの多い計測機器は、しっかりと絶縁しないと隣接した回路間で予期しない電流が流れ込んでしまい、誤作動や破損、あるいはショートして発火してしまう可能性があります。
また、機器の破損だけではなく、電流が建物や床などに流れ込むことによって、周囲の人間が感電してしまうといったリスクも考えられます。そのため、電気を扱うあらゆる分野において、絶縁を行うことは当たり前とされています。
さらに、絶縁はノイズ除去・低減という観点からも非常に大切です。電源が突然変動したり、近くの回路に不具合が生じたりしたときに、絶縁がしっかり行われていれば他回路への影響を最小限に抑えることができます。
アイソレータの構造
磁気絶縁方式のアイソレータは、ポリイミドという種類のハイテクプラスチック内にコイルが設置されています。一つのコイルにパルス電流を流すと、微小な磁界が発生します。
容量絶縁方式のアイソレータは、薄いシリカ(二酸化ケイ素)を絶縁層に持つコンデンサを用います。
これらの工夫により、アイソレータは回路間の電流漏れを防ぎ、安全な動作を保証します。
デジタルアイソレータの特徴
これまで述べたように、アイソレータは光アイソレータとデジタルアイソレータの大きく二つに分けられます。
絶縁の役割を果たすという点では同じですが、デジタルアイソレータには光アイソレータより優れた特徴がいくつもあります。
絶縁が大きい
デジタルアイソレータの大きな特徴の一つは、高い絶縁耐力です。
光アイソレータの絶縁耐力は1~20Vrms/μmの範囲ですが、それに対して磁気絶縁方式のアイソレータは300Vrms/μm、そして容量絶縁方式はさらに高い500Vrms/μmの絶縁耐力を持ちます。
電気的ノイズや過剰な電流などから回路を保護し、安定した動作を可能にするという絶縁耐力は、デジタルアイソレータの方が優れており信頼できます。
対応速度が速い
光アイソレータが信号を絶縁できる対応速度はおおよそ20Mbpsまでですが、デジタルアイソレータなら、対応速度は150~200Mbpsと大きく伸びます。
高速な信号伝送を必要とする現代の電子機器に対して、最適な絶縁手段を提供するのであれば、デジタルアイソレータが適していると言えるでしょう。
消費電流を抑えられる
デジタルアイソレータは、消費電力を低レベルに維持するという特徴があります。特に、容量絶縁方式のアイソレータは、動作速度に関係なく電流消費を低減させることが可能です。
高速な動作が要求される一方でエネルギー効率も求められる現代の電子機器には、デジタルアイソレータを用いた方が効率的だと考えられます。
寿命が長い
デジタルアイソレータは寿命の長さが特徴です。光アイソレータの寿命が約10年であるのに対し、デジタルアイソレータは25年以上という大幅に長い寿命を持っています。
これは、デジタルアイソレータが長期間にわたり信頼性の高い絶縁性能を提供できるということを意味します。したがって、耐久性と信頼性が求められる電子機器には、光アイソレータよりもデジタルアイソレータを採用することが最適な選択となります。
まとめ
アイソレータは電子回路を絶縁し、機器の保護やノイズ対策を補助する装置です。代表的なアイソレータの種類は「光アイソレータ」「デジタルアイソレータ」の二種類です。
光を用いて信号を伝送する光アイソレータ(フォトカプラ)は、内部にLEDと受光素子を備えています。この特性により、物理的な距離を置いた状態で光信号の送受信が可能となり、簡単且つ確実な絶縁が実現します。その高い信頼性、長寿命、コストの低さにより、フォトカプラは多くの場面で長年使われ続けてきました。
光アイソレータの性能は高性能ですが、発光素子の寿命に伴う劣化が生じると、正常に機能しないリスクが存在します。特に、長期間にわたる安全性が要求される場面では、この問題は大きな懸念となります。
そこで登場したのがデジタルアイソレータというデバイスです。このデバイスは、光源を用いずに、半導体素子の一部であるコイルやコンデンサを使用して、入力と出力を分離します。適用されるコンポーネントによって、このデバイスはインダクティブ型とキャパシティブ型の2つに分けられます。
しかしながら、デジタルアイソレータはデジタル信号しかやり取りができず、製品の種類が少なく費用も高いという欠点があります。そのため、フォトカプラを全面的に取り替えるには至っていません。
しかし、長寿命で消費電力が低く、さらに小型化が容易であるCMOSを使用した製品が登場するなど、デジタルアイソレータの進歩は続いています。
デジタルアイソレータは、光アイソレータと比べると、寿命が長く、信頼性が高く、速度が速く、消費電力が少ないといった利点を持ちます。また、フェイルセーフ機能や故障検出など、光アイソレータでは追加の外部回路が必要になる機能を内蔵した製品が市場に登場しています。