- 発行日 2023年8月28日
- 最終変更日 2025年6月12日
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【2025年最新版】半導体とは?基礎知識から最新技術・市場動向までわかりやすく解説
半導体とは、家電から自動車まであらゆるものに使われているものです。しかし、半導体について詳しく理解している人はそう多くないでしょう。この記事では、半導体に関する基礎知識を5分でわかるように解説します。ぜひ、基本的なことを知りたい方は参考にしてみてください。

半導体とは?
半導体とは、一定の電気的性質を備えたものです。物質には電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の2種類が存在します。
半導体は、その両方の性質を兼ね備えたものです。半導体は、主にトランジスタやダイオードなどの1つの半導体素子で構成するチップや、トランジスタなどで構成される回路を集積したICを総称したものを指します。
生活家電からスマートフォンに至るまであらゆるものに使われており、今では生活になくてはならない存在だといえるでしょう。
半導体の性質や主な材料を解説します。
- 半導体の基本的な性質
- 主な材料と最新動向
1.半導体の基本的な性質
半導体は温度や光の影響で電気抵抗率が変化する特徴があります。温度が低いと電気抵抗率が高くなり電気が通りにくくなり、温度が高くなると抵抗率が下がり電気が通りやすくなります。この性質は「バンドギャップ」と呼ばれるエネルギーの帯域構造によって説明されます。半導体のバンドギャップは導体より大きく、絶縁体より小さいため、熱や光のエネルギーで電子の移動が活性化されるのです。
2.主な材料と最新動向
代表的な半導体材料はシリコンですが、高純度のシリコン単結晶はほとんど電気を通さないため、不純物を添加して電気特性を制御します。近年は、電気自動車や再生可能エネルギー分野で効率向上に貢献するシリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)などの新素材を用いたパワー半導体が急速に普及しています。これらのパワー半導体は高電圧・高電流に耐え、効率的な電力変換を実現し、EVや太陽光発電、サーバー機器などで重要な役割を果たしています。
半導体の型は2つに分類される
半導体は、その電気的性質により「n型半導体」と「p型半導体」の2種類に大別されます。これらは不純物を添加する「ドーピング」によって性質が変えられ、電子機器の基本動作を支える重要な役割を果たしています。ここでは、それぞれの特徴や仕組み、pn接合の働きについて詳しく解説します。
1.n型半導体とは
n型半導体は、純粋なシリコンなどの真性半導体に「リン(P)」や「ヒ素(As)」などの不純物を微量添加(ドーピング)したものです。これらの不純物はシリコンよりも価電子が1つ多いため、余分な電子が「自由電子」として半導体内に存在します。
- 自由電子はマイナスの電荷を持ち、電圧をかけるとプラス極(正極)に向かって移動します。
- この自由電子が電気を運ぶキャリア(電荷担体)となり、電流が流れる仕組みです。
- 「n型」は「negative(ネガティブ)」の頭文字から名付けられています。
ポイント n型半導体は電子が主なキャリアであり、高速スイッチングや高耐圧が求められるパワー半導体などに多く使われています。
2.p型半導体とは
p型半導体は、シリコンに「ホウ素(B)」や「インジウム(In)」などの不純物を添加したものです。これらはシリコンより価電子が1つ少なく、「電子の抜けた穴(正孔=ホール)」が多数存在します。
- **正孔(ホール)**は電子の欠損部分で、プラスの電荷を持つ仮想的な粒子として扱われます。
- 電圧をかけると、隣接する電子が正孔に移動し、その結果、正孔がマイナス極(負極)に向かって動いているように見えます。
- この正孔がキャリアとして電流を運ぶため、p型半導体は「positive(ポジティブ)」の頭文字から名付けられています。
ポイント p型半導体は正孔がキャリアであり、太陽電池やフォトダイオードなど光電変換デバイスに応用されています。
半導体はあらゆる製品に使われている
半導体は、私たちの生活に欠かせない電子機器や自動車、社会インフラなど、あらゆる製品に組み込まれています。現代社会のデジタル化や電動化の進展により、その重要性はますます高まっています。
身近な家電製品での活用例
- 冷蔵庫の温度センサー 冷蔵庫内の温度を正確に検知し、省エネ運転や食品の鮮度管理に役立っています。
- 炊飯器の温度調整 半導体センサーが温度を細かく制御し、美味しいご飯を炊くための火力調整を実現しています。
- LED電球 高効率で長寿命なLEDの点灯制御に半導体が使われ、省エネルギー化に貢献しています。
スマートフォンやパソコンなどの精密機器
スマートフォンやパソコンには、多数の集積回路(IC)が搭載されており、高速処理や通信、映像表示など多様な機能を支えています。半導体はこれらの心臓部として、性能向上と小型化を可能にしています。
社会インフラにおける重要性
- インターネット通信 ネットワーク機器の高速処理やデータ転送を支える半導体技術が不可欠です。
- 鉄道の運行管理 安全運行のための制御システムに半導体が使われています。
- ATMや物流システム 金融取引や物流管理の自動化に半導体技術が活用され、効率化と信頼性向上に寄与しています。
自動車分野での半導体需要の急増
近年、自動車に搭載される半導体の量が急激に増えています。特に以下の理由が挙げられます。
- ADAS(先進運転支援システム) 衝突回避や自動運転支援のために、多数のセンサーや制御ユニットが必要となり、半導体の搭載量が増加。
- 電気自動車(EV) バッテリー管理やモーター制御、高効率な電力変換を行うパワー半導体の需要が急増しています。シリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)を用いた次世代パワー半導体が注目されており、EVの性能向上と航続距離の延長に貢献しています。
半導体は、冷蔵庫や炊飯器などの家庭用家電から、スマートフォンやパソコン、社会インフラ、自動車まで、あらゆる製品に不可欠な部品です。特に自動車分野では、先進運転支援システムや電気自動車の普及に伴い、半導体の重要性と需要が急速に高まっています。
半導体なしでは、現代の快適で安全な生活は成り立ちません。今後も技術革新とともに、より高性能で省エネルギーな半導体製品の開発が期待されています。
半導体の歴史
半導体の歴史について、以下の3つの区分に分けてご紹介します。
- トランジスタの開発
- 電卓の普及
- 生活に欠かせないものに
それぞれの経緯や関連した人物や企業などについて詳しく見ていきましょう。
1.トランジスタの開発
トランジスタが開発される以前、真空管を利用したコンピューターが使われていました。真空管を使ったコンピューターは、建物を埋め尽くすほど大きく、使用電力・発熱量も膨大なものです。
1947年にアメリカ「ベル研究所」にてバーディーン・ブラッテンにより「点接触型トランジスタ」が、1948年にはショックレーによる「接合型トランジスタ」が発明されました。これらのことにより、トランジスタが使われる時代が訪れたとされています。
さらに、トランジスタ式計算機が登場したことにより、コンピューターは飛躍的な発展の道筋を得たようです。これ以前は、ラジオにも真空管を使うことが一般的でした。しかし、トランジスタが開発されたことにより、小型化が推進され、気軽に持ち運べるようになりました。
その後、半導体の研究とトランジスタ開発の功績が認められ、1956年にはショックレー、バーディーン、ブラッテンの3人は、ノーベル物理学賞を手にしています。
2.電卓の普及
トランジスタの発明を皮切りに、半導体産業は大きく成長しました。1957年には、1億ドルを超える規模にまで市場が成長しています。
半導体の歴史は、1959年に「テキサス・インスツルメンツ社」のキルビーや「フェアチャイルド社」のノイスによる集積回路の発明によって大きく動き始めました。この集積回路は、トランジスタやコンデンサなどを1つにまとめたものとなり、小型・軽量化できることから、あらゆる電気製品に組み込まれるようになったのです。
1967年「テキサス・インスツルメンツ社」がICを使った電卓を開発したことから、世界中で開発競争が激化した経緯があります。日本国内でも、電子機器メーカーが相次いで電卓を市場で販売するようになりました。
現在でも大手電機製品企業として残っている「カシオ」や「キヤノン」「シャープ」が熾烈な競争を繰り広げ、ピーク時には40社以上のメーカーが参入しています。1970年には1000億円市場にまで成長し、70年代の終わりまでの時代を「電卓戦争」と呼ぶこともあります。
3.生活に欠かせないものに
ICの集積度は年を追うごとに進み、LSI(大規模集積回路)へと飛躍を遂げました。さらに、80年代はVLSI(素子集積度が10万~1000万個)、90年代のULSI(素子集積度が1000万個超)へと技術開発が進んでいます。
そして、2000年代になると、システムLSI(1つのチップ上にあらゆる機能を集積した超多機能LSI)の生産が本格的に行われるようになりました。ICの多機能化が進むことによって、応用分野はさまざまなものに広がり、半導体は社会のあらゆる場所で活用され、私たちの豊かな生活を支えています。
最新の半導体市場動向
2025年の世界半導体市場は、前年比約13.8%増の約7,167億米ドル(約90兆円)に達すると予測されています。2024年も前年比18.8%増の約6,298億米ドルで2年連続の2桁成長を記録し、2023年の一時的な縮小から力強く回復しています。2030年には市場規模が1兆米ドル(約130兆円)に達すると見込まれており、AIや自動運転、5G/6G通信インフラの進展が市場成長を強力に牽引しています。
半導体製造装置市場の拡大
半導体製造装置市場も同様に高成長が続いており、2024年には約1,347億米ドル、2025年には約1,445億米ドルに達すると予測されています。2030年には2,080億米ドルを超える見込みで、次世代製造技術やEUV露光装置の需要増加が背景にあります。
成長を支える主要分野
- AI(人工知能)関連 AIの学習や推論に必要な高性能GPUや専用AIチップの需要が急増。AIは第1波のクラウド・エッジコンピューティングから第2波の自動運転やAR/VRへと進化し、今後も半導体需要を押し上げます。
- 自動車分野 先進運転支援システム(ADAS)や電気自動車(EV)の普及により、車載用半導体の需要が増加。特にパワー半導体のシリコンカーバイド(SiC)やガリウムナイトライド(GaN)製品の採用が拡大しています。
- データセンター・サーバー 2025年には半導体需要全体の約23%を占め、2035年には約47%にまで拡大すると予測されています。クラウドサービスやビッグデータ解析の増加が背景です。
市場の課題と展望
消費電力の急増が懸念されており、今後20~30年で電力不足に陥る可能性があります。生成系AIや自動運転などのデータ解析需要が増大するため、低消費電力で高性能な半導体開発が急務です。
また、2023年はメモリ製品の売上減少などで一時的に市場が縮小しましたが、2024年以降はメモリやロジック製品の回復により、再び成長軌道に乗っています。ウエハー出荷量や工場稼働率も2024年前半から回復傾向にあり、供給体制の改善が進んでいます。
半導体に関するよくある3つの質問
半導体に関するよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
- 質問1.半導体とは簡単にいうと何ですか?
- 質問2.半導体が不足しているのはなぜですか?
- 質問3.半導体はどこの国で作られていますか?
ここではそれぞれの質問に対する回答をご紹介しますので、詳しく見ていきましょう。
質問1.半導体とは簡単にいうと何ですか?
半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」との、中間の性質を併せ持ったものです。物体の性質として、電気を外部の影響によって、通す・通さないものだといえます。
しかし、一般的に半導体といわれる場合、半導体を材料としたトランジスタや集積回路などを指すことがほとんどです。半導体はあらゆるものに使われており、電子機器などの中心的役割を果たしています。
質問2.半導体が不足しているのはなぜですか?
半導体が不足しているのは、さまざまな理由が挙げられます。原因としては、アメリカの禁輸措置や工場の操業停止、ウクライナ情勢などです。
アメリカの禁輸措置は、2020年12月、アメリカが中国の大手半導体受託製造メーカーを取引制限リストに入れたことにより、事実上の禁輸措置を講じました。この目的は、中国がアメリカの軍事技術を盗むことを防止することです。
この影響から、アメリカ企業は台湾などの半導体製造メーカーへ切り替えるようになりましたが、需要に供給が間に合わず、半導体が不足する原因となりました。災害による工場の操業停止には、以下のような例があります。
- 2020年10月宮崎県の旭化成の工場火災事故
- 2021年3月の茨城県ルネサス工場の火災事故
- 2021年2月アメリカ・テキサス州、大寒波の影響から生産停止
このような影響から半導体不足が発生しています。また、半導体工場の老朽化や新型コロナウイルスの影響からの需要増に対応できないことも原因です。
ウクライナ情勢については、直接的な半導体不足の原因とはいえませんが、将来的に影響を及ぼすおそれが否定できません。ロシアやウクライナは、レアメタルの産地としてよく知られています。
今後のウクライナ情勢次第では、レアメタルの供給停止が起こるかもしれません。そのような事態になると価格高騰の影響から、さらなる半導体不足を引き起こすことも考えられるでしょう。
質問3.半導体はどこの国で作られていますか?
米調査会社のガートナーが発表した「2024年の世界半導体売上高ランキング・トップ10」によると、上位10社は以下の通りです。
1位 NVIDIA:766億9200万ドル (2024年) 2位 Intel:511億9700万ドル (2023年) 3位 Samsung Electronics:443億7400万ドル (2023年) 4位 Qualcomm:309億1300万ドル (2023年) 5位 SK Hynix:341億ドル (2022年) 6位 Texas Instruments:162億7000万ドル (2023年) 7位 AMD:111億8500万ドル (2023年) 8位 Broadcom:426億ドル (2023年) 9位 Micron Technology:121億8700万ドル (2023年) 10位 MediaTek:136億8000万ドル (2023年)
出所:Gartner(2025年4月)