- 発行日 2023年8月28日
- 最終変更日 2024年12月24日
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【5分でわかる】半導体とは?生活に欠かせない半導体の基礎知識を解説!
半導体とは、家電から自動車まであらゆるものに使われているものです。しかし、半導体について詳しく理解している人はそう多くないでしょう。この記事では、半導体に関する基礎知識を5分でわかるように解説します。ぜひ、基本的なことを知りたい方は参考にしてみてください。

半導体とは?
半導体とは、一定の電気的性質を備えたものです。物質には電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の2種類が存在します。
半導体は、その両方の性質を兼ね備えたものです。半導体は、主にトランジスタやダイオードなどの1つの半導体素子で構成するチップや、トランジスタなどで構成される回路を集積したICを総称したものを指します。
生活家電からスマートフォンに至るまであらゆるものに使われており、今では生活になくてはならない存在だといえるでしょう。
半導体の性質や主な材料を以下の2つに分けて解説します。
- 半導体は温度によって電気抵抗率が変わる
- 半導体はシリコンが主な材料
1.半導体は温度によって電気抵抗率が変わる
半導体は、温度によって電気抵抗率が変化する性質があります。具体的には以下の通りです。
- 温度が低い:電気抵抗率が高くなり、電気が通りにくくなる
- 温度が高い:電気抵抗率が低下し、電気が通りやすくなる
この現象はバンド理論で説明することができ、バンドギャップと呼ばれています。結晶のバンド構造において、自由電子が存在できない伝導体と価電子帯の間に存在する禁制帯の幅を示しています。
半導体は、導体よりもバンドギャップが大きく、絶縁体よりもバンドギャップが小さい状態にあり、ここに温度変化(熱エネルギー)が加わることで通電する仕組みです。また、この場合のエネルギーは熱のみではなく、光の照射も電気を活性化するエネルギーとなります。
2.半導体はシリコンが主な材料
半導体の代表的な素材には、シリコンが挙げられます。しかし、高純度のシリコン単結晶は、ほとんど電気を通しません。そのため、リンやヒ素などの不純物をあえて混ぜることによって、電気を通しやすくしています。
また、シリコン以外にもゲルマニウムやセレン、カーボンなどが半導体の材料としてよく使われています。さらに、近年ではガリウムナイトライドやシリコンカーバイドを原料とした、次世代のパワー半導体も普及しています。
パワー半導体について解説すると、高電圧、高電流を扱うことができる半導体です。大きな電気による負荷がかかったとしても、壊れないような構造を持っています。よって、パワー半導体は自動車や太陽光発電、サーバーなどに使われ、効率的な電気エネルギーの使用に貢献しています。
半導体の型は2つに分類されている
半導体の型は、以下の2つに分類されています。
- n型半導体
- p型半導体
それぞれの素材や性質について解説しますので、詳しく見ていきましょう。
1.n型半導体
「n型半導体」は、真性半導体に対し、リンやヒ素、アンチモンなどの不純物を加えた半導体です。これらの不純物は、真性半導体に比べて価電子の数が多いため、加えられることで自由電子が発生します。
さらに、この自由電子がプラス電極に引き寄せられることによって、電流が発生する仕組みです。なお、マイナス電荷を持つことから「n(negative)型半導体」と呼ばれています。
※真性半導体とはシリコンのみで構成されたもの
2.p型半導体
「p型半導体」は、真性半導体に対し、ホウ素やインジウムなどの不純物を加えた半導体です。n型半導体とは逆の性質を持ち、p型半導体に含まれる不純物は価電子の数が少ないことが特徴として挙げられます。
そのため、正孔(ホール)が発生し、ここへ電圧をかけることによって、電子はプラス電極へと引き寄せられ、近くの正孔へ移動します。その結果として、導電に寄与する仕組みです。
しかし、見た目のうえでは正孔がマイナス電極に引き寄せられているように見えます。そのことから、p型半導体の正孔はプラスの電荷を持つと見なされ「p(positive)型」と呼ばれています。
また、n型とp型の半導体を組み合わせたものがpn接合です。pn接合は、それぞれの特性を生かすことで整流作用を生み出し、細やかな電流の制御を行うものに使われています。使用されているものの一例としては、フォトダイオードやフォトトランジスタ、太陽電池などが挙げられます。
半導体はあらゆる製品に使われている
半導体はさまざまなもの・場所で活用されています。使用されているものとしては、家電製品やパソコン、自動車などに使われており、LED電球の内部にも半導体が組み込まれています。半導体が使われている例の中でも身近なものを挙げると、以下のものがあります。
- 冷蔵庫:温度センサー
- 炊飯器:温度調整
ほかにも、パソコンやスマートフォンなどの精密機械には、複数のICチップが組み込まれています。また、社会的なインフラにおいても半導体が重要な役割を担っており、インターネット通信や電車の運行、ATM、物流システムなどあらゆる場所で活用されています。
つまり、半導体がなくては豊かな暮らしが成り立たないといえるでしょう。さらに、近年では自動車への半導体デバイスの搭載量が増えています。
理由にはさまざまなものが挙げられますが、ADAS(先進運転者支援システム)の普及や現在開発が進みつつあるEV(電気自動車)の電気制御にも取り入れられています。そのため、日常的に快適さを加えてくれる自動車にとっても、半導体は必要不可欠なものだといえるでしょう。
半導体の歴史
半導体の歴史について、以下の3つの区分に分けてご紹介します。
- トランジスタの開発
- 電卓の普及
- 生活に欠かせないものに
それぞれの経緯や関連した人物や企業などについて詳しく見ていきましょう。
1.トランジスタの開発
トランジスタが開発される以前、真空管を利用したコンピューターが使われていました。真空管を使ったコンピューターは、建物を埋め尽くすほど大きく、使用電力・発熱量も膨大なものです。
1947年にアメリカ「ベル研究所」にてバーディーン・ブラッテンにより「点接触型トランジスタ」が、1948年にはショックレーによる「接合型トランジスタ」が発明されました。これらのことにより、トランジスタが使われる時代が訪れたとされています。
さらに、トランジスタ式計算機が登場したことにより、コンピューターは飛躍的な発展の道筋を得たようです。これ以前は、ラジオにも真空管を使うことが一般的でした。しかし、トランジスタが開発されたことにより、小型化が推進され、気軽に持ち運べるようになりました。
その後、半導体の研究とトランジスタ開発の功績が認められ、1956年にはショックレー、バーディーン、ブラッテンの3人は、ノーベル物理学賞を手にしています。
2.電卓の普及
トランジスタの発明を皮切りに、半導体産業は大きく成長しました。1957年には、1億ドルを超える規模にまで市場が成長しています。
半導体の歴史は、1959年に「テキサス・インスツルメンツ社」のキルビーや「フェアチャイルド社」のノイスによる集積回路の発明によって大きく動き始めました。この集積回路は、トランジスタやコンデンサなどを1つにまとめたものとなり、小型・軽量化できることから、あらゆる電気製品に組み込まれるようになったのです。
1967年「テキサス・インスツルメンツ社」がICを使った電卓を開発したことから、世界中で開発競争が激化した経緯があります。日本国内でも、電子機器メーカーが相次いで電卓を市場で販売するようになりました。
現在でも大手電機製品企業として残っている「カシオ」や「キヤノン」「シャープ」が熾烈な競争を繰り広げ、ピーク時には40社以上のメーカーが参入しています。1970年には1000億円市場にまで成長し、70年代の終わりまでの時代を「電卓戦争」と呼ぶこともあります。
3.生活に欠かせないものに
ICの集積度は年を追うごとに進み、LSI(大規模集積回路)へと飛躍を遂げました。さらに、80年代はVLSI(素子集積度が10万~1000万個)、90年代のULSI(素子集積度が1000万個超)へと技術開発が進んでいます。
そして、2000年代になると、システムLSI(1つのチップ上にあらゆる機能を集積した超多機能LSI)の生産が本格的に行われるようになりました。ICの多機能化が進むことによって、応用分野はさまざまなものに広がり、半導体は社会のあらゆる場所で活用され、私たちの豊かな生活を支えています。
半導体に関するよくある3つの質問
半導体に関するよくある質問には、以下の3つが挙げられます。
- 質問1.半導体とは簡単にいうと何ですか?
- 質問2.半導体が不足しているのはなぜですか?
- 質問3.半導体はどこの国で作られていますか?
ここではそれぞれの質問に対する回答をご紹介しますので、詳しく見ていきましょう。
質問1.半導体とは簡単にいうと何ですか?
半導体とは、電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」との、中間の性質を併せ持ったものです。物体としての意味は、電気を外部の影響によって、通す・通さないものだといえます。
しかし、一般的に半導体といわれる場合、半導体を材料としたトランジスタや集積回路などを指すことがほとんどです。半導体はあらゆるものに使われており、電子機器などの中心的役割を果たしています。
質問2.半導体が不足しているのはなぜですか?
半導体が不足しているのは、さまざまな理由が挙げられます。原因としては、アメリカの禁輸措置や工場の操業停止、ウクライナ情勢などです。
アメリカの禁輸措置は、2020年12月、アメリカが中国の大手半導体受託製造メーカーを取引制限リストに入れたことにより、事実上の禁輸措置を講じました。この目的は、中国がアメリカの軍事技術を盗むことを防止することです。
この影響から、アメリカ企業は台湾などの半導体製造メーカーへ切り替えるようになりましたが、需要に供給が間に合わず、半導体が不足する原因となりました。災害による工場の操業停止には、以下のような例があります。
- 2020年10月宮崎県の旭化成の工場火災事故
- 2021年3月の茨城県ルネサス工場の火災事故
- 2021年2月アメリカ・テキサス州、大寒波の影響から生産停止
このような影響から半導体不足が発生しています。また、半導体工場の老朽化や新型コロナウイルスの影響からの需要増に対応できないことも原因です。
ウクライナ情勢については、直接的な半導体不足の原因とはいえませんが、将来的に影響を及ぼすおそれが否定できません。ロシアやウクライナは、レアメタルの産地としてよく知られています。
今後のウクライナ情勢次第では、レアメタルの供給停止が起こるかもしれません。そのような事態になると価格高騰の影響から、さらなる半導体不足を引き起こすことも考えられるでしょう。
質問3.半導体はどこの国で作られていますか?
米調査会社のガートナーが発表した「2022年の世界半導体売上高ランキング・トップ10」によると、上位10社は以下の通りです。
<br>順位:企業<br> | <br>シェア率(%)<br> |
---|---|
<br>1位:サムスン<br> | <br>10.9<br> |
<br>2位:インテル<br> | <br>9.7<br> |
<br>3位:SKハイニックス<br> | <br>6.0<br> |
<br>4位:クアルコム<br> | <br>5.8<br> |
<br>5位:マイクロンテクノロジーズ<br> | <br>4.6<br> |
<br>6位:ブロードコム<br> | <br>4.0<br> |
<br>7位:AMD<br> | <br>3.9<br> |
<br>8位:テキサス・インスツルメンツ<br> | <br>3.1<br> |
<br>9位:メディアテック<br> | <br>3.0<br> |
<br>10位:アップル<br> | <br>2.9<br> |
シェアの上位5社を見ても、韓国とアメリカが占めていることから、この両国が半導体を多く生産しているといえます。
出典:米調査会社ガートナー発表「2022年半導体業界売上高ランキング」<u></u>