- 発行日 2023年6月1日
- 最終変更日 2026年6月10日
- 5 分
ソレノイドとは?用途・種類とモータとの違いを解説
ソレノイドとは、電気エネルギーを磁力に変え、その力で直線運動などの機械的な動きを生み出す電磁機能部品のことです。この記事では、ソレノイドの用途や種類、使用上の注意点に加え、ソレノイドとモータの違いについても解説します。

ソレノイドとは? ~ コイルとの違いと原理 ~
そもそもソレノイドとは、コイルのことではないんですか?
ソレノイドというのは、コイルを含む電磁機能部品で、電気エネルギーを直線運動などの機械的な動きに変換するものです。機構エンジニアの方には「プランジャ1を電気の力で動かす部品」、回路エンジニアの方には「コイルに電流を流して鉄芯を動かす部品」、あるいは「電気接点を持たないリレー2に近い、電気で動く機構部品」のようなものだと思っていただくとわかりやすいかもしれません。
*1:プランジャ(plunger:往復運動する機構部品)
*2:リレー(relay:電気信号でオンオフするスイッチ、継電器)
具体的には、銅線を巻いたコイルの中で可動式のピンや鉄芯が動く仕組みになっています。基本構造は電磁石と同じです(図1)。
◀図1:ソレノイドの原理
ソレノイド(solenoid)という名は、ギリシャ語のsōlēn(管、筒)に由来すると言われています。電気の分野では、銅線をぐるぐると巻いたものを一般にコイルと呼んでいるわけですが、他にもインダクタやリアクタなどと呼ぶ場合もあり、おっしゃるようにソレノイドと称することもあるため、意味が通じにくいこともあるようです。ソレノイドという言葉自体には機構的な意味を含まないのでわかりにくいのですが、メカトロニクスの世界では、ソレノイドと言えば巻線部を含めた電磁機能部品そのものを意味します。
ソレノイドの用途と種類 ~ 何に使うの?どう選ぶの? ~
何を基準に選べばよいのかわかりません。
ソレノイドは、用途や動かしたい方向に応じて適した種類を選ぶことが大切です。そのため、品番を探す前に、まずはソレノイドの種類を知っておく必要があります。ソレノイドは家電品からOA機器、FA機器、金融端末、電子錠など、さまざまな用途で使用されています。例えば、自販機で釣り銭の硬貨を出す場合、積み重なった硬貨を電気信号によって一枚ずつはじき出す機構が必要になりますよね。そこにソレノイドが使われています。車などにもたくさん搭載されています。
当然のことですが、用途が違えば形やサイズ、プランジャのストロークや力の大きさも異なります。プランジャ(ピン)の先端形状もさまざまなものがあります。
一般の小型ソレノイドの種類を動作形態で分けるとすると、基本になるのはプル型です。プル(pull:引く)型は、文字通り、通電することで可動部が引き込まれるタイプのことを言います。電磁石の性質として、通電(電流を流す)によって鉄芯が磁界内に引き込まれるからです。用途によっては、通電時にプランジャが飛び出す方が便利なことがあるので、巻線の反対側まで可動部の中心軸を伸ばし、飛び出るようにしたプッシュ(push:押し出す)タイプのものもよく使われます。応用的な動作形態のものとしては、通電によってピンが回転するロータリタイプ、リレーのようにヒンジ*3が上下するフラッパータイプなどがあります。
ひとつ注意したいのは、ソレノイドの種類によっては、内部にスプリングなどの復帰機構を持っていないという点です。したがって、例えば通電によって引き込まれたピンは、外部にそれを引き戻す機構が必要になる場合があります。また、通常のものは、通電によって引き込まれた(あるいは押し出された)ピンは、電流を切れば保持力を失います。引き込んだ(押し出た)状態を維持するには通電し続ける必要があるわけですが、内部に永久磁石を組み込むことでラッチ*4機能を持たせたものもあります。
*3:ヒンジ(hinge:蝶番[ちょうつがい]状の可動機構)
*4:ラッチ(latch:自己保持機能。この機能を持ったソレノイドは駆動法が他と異なる)
ソレノイドの選択に当たっては、これらの種類から使用目的にふさわしいものを決めた上で、形状などの機械的要素から品種を選んでいくことになります。ソレノイドは磁界によってピンを動かしているので、原理上、ピンが巻線部から離れるにしたがって吸引力が弱くなる傾向があることも覚えておいてください。
◀図2:ソレノイドの実例
左:押し出し用のプッシュピン、右:細長いシリンダタイプ
ソレノイドの使用上の注意点 ~ 動かない原因を防ぐには? ~
電圧を加えれば、すぐに動くんですよね?
ソレノイドを安定して動かすには、駆動方式や電流供給能力、発熱、逆起電力に注意する必要があります。ソレノイドには、直流で駆動するもの、パルス信号で動かすもの、正弦波交流で駆動するものがあります。一般には直流で駆動するものが使われていますが、交直両用のものもあります。いずれにせよ指定された駆動方式以外では使えません。仕様書で指定された定格電圧を加えれば動作するのはもちろんです。ただし、流れる電流とそれに伴う作用については設計上十分な配慮が必要です。ソレノイドは、半導体など一般の電子部品に比べて大きな電流が流れます。したがって、駆動回路には十分な電流供給能力があることが前提になります。
次に、電流が流れることでソレノイド自身が発熱します。加えた電圧×流れた電流=消費電力で、その多くが熱になります。したがって、ソレノイドが過熱しない範囲で使うことが重要です。例えば、通電し続けて使えば温度上昇は大きくなりますが、一時的に動作(間欠動作)させるのであれば、温度上昇は小さく抑えられます。ちなみに、全時間に対する通電時間の割合を「通電率」と呼びます。先に述べたラッチタイプは、通電率が大きい場合に有利ということになります。
ソレノイドでは、発熱に伴って吸引力が低下します。温度の上昇→巻線の抵抗値増加→電流減少→磁力低下→吸引力低下という連鎖の結果によるものです。このことを考慮しないと、始め(低温時)は動くけれども、使っているうちに動かなくなるというトラブルを招きます。
仕様書には、個々のソレノイドについて電圧と電流、通電率、温度上昇、ストロークなどに関するデータが記載されているので、それらをもとにして最終的な機種選択と駆動回路設計をします。
◀図3:特性図の例
駆動に関しては、さらに逆起電力に対する配慮も必要です。ソレノイドの駆動コイルは、電流をオフした際に、それまで流れていた電流を維持しようとして逆起電力を発生します。オンするときではなく、特に注意したいのはオフするときです。直流駆動のソレノイドでは、オン時に大きな突入電流が流れるというより、オフ時の逆起電力に注意が必要です。ソレノイドはメカニカルなスイッチによってオンオフさせることが多いのですが、最近ではデジタル回路からの制御信号による半導体スイッチで制御する例も増えています。
この場合、ソレノイドの逆起電力によって半導体スイッチが破損してしまうことがあり、これを防ぐためには、直流駆動では巻線に並列に保護用のダイオードを入れるなどの対策が必要です(図4)。
なお、逆起電力がノイズとなって他の電子機器に影響を与えることも考えられるので、配線の引き回しなどにも気を配る必要があります。
◀図4:逆起電力からの保護
ソレノイドとモータの違い
それでは次に、ソレノイドとモータの違いについて解説します。
ソレノイドとモータは、どちらも電磁力を利用して動く部品ですが、動作原理や動き方、安全側へ戻す機構の作りやすさ、得意とする移動範囲や力の伝え方に違いがあります。
ソレノイドとモータの違い1:原理
ソレノイドとモータは、どちらも電磁力を利用して動く部品ですが、動作原理が異なります。
本来「モータ」とは、動力を得るための装置のことを指します。その意味では、電気の力で機械的な動きを生み出すソレノイドも、広い意味ではモータの一種と捉えることができます。ただし、一般的な電動モータは回転を継続させるために、コイルへの通電を切り替える仕組みを持っています。一方、ソレノイドはコイルに電流を流したときに発生する磁力を利用して、プランジャや鉄芯を動かします。つまり、どちらも電磁力を利用して動く部品ですが、動きを取り出す仕組みが異なります。
ソレノイドとモータの違い2:動作
動作の面では、回転の有無や動作範囲、速度の調整しやすさに違いがあります。
一般的に、モータは連続的な回転運動を得るために使われます。一方、ソレノイドには直線状に往復運動を行うもののほか、限られた角度の範囲で回転するロータリタイプもあります。回転運動をするソレノイドでも、モータのように回転を続けるわけではなく、決められた範囲内で動作します。
また、ソレノイドは、モータのように加える電圧で速度を細かく調整する用途にはあまり向いていません。一方で、構造がシンプルなため、短いストロークで素早く動作させやすいという特徴があります。このように、両者は動作範囲や速度の調整方法に違いがあります。
ソレノイドとモータの違い3:安全性
ソレノイドは、モータに比べて安全側へ戻す機構を設けやすい場合があります。
ソレノイドは、復帰バネを使うことで、電源をオフにしたときに可動部を元の位置へ戻す構造にしやすいという特徴があります。そのため、システムに障害が発生した際でも、安全側に戻す設計にしやすい場合があります。対してモータでは、復帰バネだけで安全側に戻すことが難しい場合があり、逆回転させる、クラッチ機構を用意する、ブレーキや減速機を使って動作を制御するなどの対策が必要になることがあります。安全側へ戻す機構の作りやすさも、両者を選び分けるポイントです。
ソレノイドとモータの違い4:移動距離とトルク
一般的なソレノイドは、モータに比べて移動範囲は限られますが、短いストロークで大きな吸引力や推力を得やすいという特徴があります。
モータは連続的な回転運動を得るのに向いており、減速機と組み合わせることで回転速度やトルクを調整できます。一方、ソレノイドは移動距離が小さいものの、短い距離で直線的な力を得やすく、機構によってはダイレクト駆動に使うことも可能です。そのため、必要な移動範囲や力の出し方に応じて、適した部品を選ぶことが大切です。
ソレノイドに関するよくある質問
ここでは、ソレノイドの種類や復帰動作、保護ダイオード、デューティ比、外部抵抗など、選定や駆動時によくある疑問に答えます。



