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    ソレノイドの用途と使用上の注意点
     
      • 発行日 2023年6月1日
      • 最終変更日 2023年11月9日
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    ソレノイドの用途と使用上の注意点

    電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品「ソレノイド」について解説しています。

    ヘンな名前 ~ソレノイドとは?ソレノイドの原理~

    —— そもそもソレノイドってコイルのことじゃないんですか?

    ソレノイドというのは、電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品のことを指します。機構エンジニアの方には「プランジャ*1を電気で動かす部品」、回路エンジニアの方には「コイルに電流を流して鉄芯を動かす部品」あるいは「電気接点を持たないリレー*2」みたいなものだと思っていただくと分かりやすいかもしれません。

    *1:プランジャ(plunger:往復運動する機構部品) *2:リレー(relay:電気信号でオンオフするスイッチ 継電器)

    具体的には、銅線を巻いたコイルの中で可動式のピンが動く仕組みになっています。基本構造は電磁石と同じです(図1)。

    ◀図1:ソレノイドの原理

    ソレノイド(solenoid)という名はギリシャ語のsolen(筒、筒状の)に由来すると言われています。電気の分野では銅線をぐるぐると巻いたものを一般にコイルと呼んでいるわけですが、ほかにもインダクタとかリアクタなどと呼ぶ場合もあり、おっしゃるようにソレノイドと称することもあるため通じないこともあるようです。ソレノイドという言葉自体には機構的な意味を含まないので分かりにくいのですが、メカトロニクスの世界では、ソレノイドと言えば巻線部を含めた電磁機能部品そのものを意味します。

    何に使うの? ~ソレノイドの用途と種類 ~

    —— 何を基準に選べばよいのか分かりません。

    使う目的によって色々な種類がありますので、品番を探す以前にそれらを知っておく必要があります。ソレノイドは家電品からOA機器、FA機器、金融端末、電子錠など多くの用途で使用されています。例えば、自販機で釣り銭の硬貨を出す場合に、積み重なった硬貨を電気信号によって一枚ずつはじき出す機構が必要になりますよね、そこにソレノイドが使われています。車などにもたくさん積まれています。

    当然のことですが、用途が違えば形やサイズ、プランジャのストロークや力の大きさも異なります。プランジャ(ピン)の先端形状も様々なものがあります。

    一般の小型ソレノイドの種類を動作形態で分けるとすると、基本になるのはプル型です。プル(Pull:引く)型は文字通り通電することで可動部が引き込まれるタイプのことを言います。電磁石の性質として、通電(電流を流す)によって鉄芯が磁界内に引き込まれるからです。用途によっては通電時にプランジャが飛び出す方が便利なことがあるので巻線の反対側まで可動部の中心を伸ばして飛び出るようにしたプッシュ(push:押し出す)タイプのものもよく使われます。応用的な動作形態のものとしては、通電によってピンが回転するロータリタイプ、リレーのようにヒンジ*3が上下するフラッパータイプなどがあります。

    ひとつ注意したいのは、多くのソレノイドは、内部にスプリングなどの復帰機構を持っていないという点です。したがって、例えば通電によって引き込まれたピンは外部にそれを引き戻す機構が必要です。また、通常のものは通電によって引き込まれた(あるいは押し出された)ピンは、電流を切れば保持力を失います。引き込んだ(押し出た)状態を維持するには通電し続ける必要があるわけですが、内部に永久磁石を組み込むことでラッチ*4機能を持たせたものもあります。

    *3:ヒンジ(hinge:蝶番[ちょうつがい]状の可動機構) *4:ラッチ(latch:自己保持機能 この機能を持ったソレノイドは駆動法が他と異なる)

    ソレノイドの選択に当たっては、これらの種類から使用目的に相応しいものを決めた上で、形状などの機械的要素から品種を選んでいくことになります。ソレノイドは磁界によってピンを動かしているので、原理上、ピンが巻線部から離れるにしたがって(磁界が弱くなるため)駆動力が弱くなることも憶えておいてください。

    ◀図2:ソレノイドの実例

    左:押し出し用のプッシュピン、右:細長いシリンダタイプ

    ソレノイドが動かない ~ 使用上の注意 ~

    —— 電圧を加えれば、すぐに動くんですよね?

    ソレノイドには、直流で駆動するもの、パルス信号で動かすもの、正弦波交流で駆動するものがあります。一般には直流で駆動するものが使われていますが、交直両用のものもあります。何れにせよ指定された駆動方式以外では使えません。仕様書で指定された定格電圧を加えれば動作するのはもちろんです。ただし、流れる電流とそれに伴う作用については設計上十分な配慮が必要です。ソレノイドは、半導体など一般の電子部品に比べて大きな電流が流れます。したがって、駆動回路には十分な電流供給能力があることが前提になります。

    次に、電流が流れることでソレノイド自身が発熱します。加えた電圧×流れた電流=消費電力 即ち発熱量です。したがってソレノイドが過熱しない範囲で使うことが肝要です。例えば、通電し続けて使えば温度上昇は大きなものになりますが、一時的に動作(間欠動作)させるのであれば温度上昇は僅かで済みます。ちなみに、全時間に対する通電時間の割合を「通電率」と呼びます。先に述べたラッチタイプは通電率が大きい場合に有利ということになります。

    ソレノイドでは発熱に伴って駆動力が低下します。温度の上昇→巻線の抵抗値増加→流れる電流減少→磁力低下→駆動力低下という連鎖の結果によるものです。このことを考慮しないと、始め(低温時)は動くけれども使っているうちに動かなくなるというトラブルを招きます。

    仕様書には個々のソレノイドについて電圧と電流、通電率、温度上昇、ストロークなどに関するデータが記載されているのでそれらを元にして最終的な機種選択と駆動回路設計をします。

    ◀図3:特性図の例

    駆動に関しては、さらに逆起電力に対する配慮も必要です。ソレノイドの駆動コイルは電流をオフした際にそれまでの電流を維持しようとして逆起電力を発生します。オンするときではなくオフするときです。オンの時に大きな突入電流が流れることはありません。ソレノイドはメカニカルなスイッチによってオンオフさせることが多いのですが、最近ではデジタル回路からの制御信号による半導体スイッチで制御する例も増えています。

    この場合、ソレノイドの逆起電力によって半導体スイッチが破損してしまうことがあり、これを防ぐためには、巻線に並列に保護用のダイオードを入れるなどの対策が必要です(図4)。

    なお、逆起電力がノイズとなって他の電子機器に影響を与えることも考えられるので、配線の引き回しなどにも気を配る必要があります。

    ◀図4:逆起電力からの保護

    ソレノイドとモータの違い

    それでは次に、ソレノイドとモータの違いについて解説します。

    ソレノイドとモータの違い1:原理

    ソレノイドとモータは原理が違います。

    本来「モータ」とは動力を得るための装置のことを指しており、電磁エネルギーを生み出すソレノイドはモータの一種です。しかし、モータは回転を継続させるためにコイルへの通電切り替えや半導体スイッチなどの仕組みを採用していますが、ソレノイドは切り替えが必要なく、単一の磁極ペアにて発生する力を利用しているため、コイルへの通電のみで動作するという原理上の違いがあります。つまり広義ではソレノイドはモータの一種ではあるものの、切り替えが不要であるという原理が異なります。

    ソレノイドとモータの違い2:動作

    ソレノイドとモータは回転や速度など、動作にも違いがあります。

    一般的にモータは終わりなく回転運動を続け、加える電圧が大きくなるほど速度も回転速度が速くなります。しかし、ソレノイドは回転運動をするもの以外に、直線状に往復運動を行うものもあります。回転運動をするソレノイドでもモータのように永続的に回転を続けるわけではなく、限られた範囲内での回転を行います。また。ソレノイドはモータより速度を低下させにくく、加える電圧により速度を調整することは簡単ではありません。反面、モータより作動を速くさせられます。ソレノイドとモータは以上のように、回転や速度などの動作にも違いがあります。

    ソレノイドとモータの違い3:安全性

    ソレノイドはモータと比較して安全性が高いとされています。

    ソレノイドは復帰バネにより電源をオフにすることができ、システムに障害が発生した際でも簡単に安全側に戻すことができます。対してモータでは復帰バネの活用が難しく、逆回転をさせるか、クラッチ機構を準備するか、減速機を使って減速比を落とすなどの対策がなければ安全性が低くなります。両者には安全機構が構成しやすいか否かにも違いがあります。

    ソレノイドとモータの違い4:移動距離とトルク

    ソレノイドはモータと比較して、移動距離は小さいもののトルクが大きいです。

    モータは移動距離が大きいものの、減速機と組み合わせなければトルクが小さめであるという特徴を持ちます。しかし、ソレノイドは反対に移動距離が小さく、トルクが大きいことが特徴であり、ダイレクト駆動をさせることも可能です。ソレノイドとモータは移動距離とトルクの特徴が正反対であることから、用途も反対になると考えられます。

    ソレノイド Q&A

    Q. チューブラソレノイドの“チューブラ”とは何ですか?

    A. コイル部が金属ケースで覆われた円筒形のソレノイドです。プランジャを元の位置に戻すための復帰スプリングは組み込まれていませんので、外部へ装着するよう考慮してください。突入がある誘導負荷の場合、タイムラグ型を推奨致します。但し機器へのダメージには充分ご注意ください。

    Q. ソレノイドのプル型、5Wについて質問です。戻り側の動作トルクはどの位になるのでしょうか?

    A. 動作方向にのみ可動しますので、戻り側には別途設計が必要です。バネ等のご利用をご検討下さい。

    Q. ソレノイドを駆動する際の接点の保護用に、ダイオードの取り付けを検討しています。どの様なダイオードを付けたらよいですか?

    A. ソレノイドのコイル部分の起電力を抑えるダイオードの選定は、逆耐圧は使用電圧の4倍、電流値は負荷電流の10倍程でご選定ください。

    Q. ロータリソレノイドですが、本体の軸が45度、95度に回転する商品ですか。回転動作の場合、元の位置に戻りますか。

    A. 45度、95度と軸が回転します。電源を切断すれば、元の位置まで戻ります。戻り機構には、バネを使用しておりますが、別途組み込み等が必要な場合があります。

    Q. ソレノイドについて質問です。プッシュ型は、通電して軸が出た後、元の位置まで戻りますか?

    A. 外部的にバネなどの力を加えないと戻りません。バネ付きタイプやラッチングタイプもご検討ください。

    Q. プル動作型ソレノイドのストロークフォースですが、特性に記載がある50%、CONTとは何でしょうか?

    A. CONTとはContinuousの略で、連続定格電圧での動作時という意味です。50%というのは、50%デューティ比の動作電圧時のストローク対フォース特性の意味です。この場合、デューティ比が小さいほど吸引力が大きくなります。なぜなら連続時はコイルの発熱に伴い、抵抗が大きくなって電流が徐々に減る為、吸引力が弱くなるからです。

    Q. ソレノイドを検討しています。掲載されている外部抵抗の数値とは何ですか?

    A. トリガー(パルス電圧)を印加してソレノイドを左右どちらか一方に動作させた後、永久磁石の磁束を打ち消すため、動作は反対のコイルを逆位相にします。そのためにコモンリード線(青)に直列にコイル抵抗とほぼ同じ値の外部抵抗を接続する必要がありますが、この値です。

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