- 発行日 2023年10月11日
- 最終変更日 2023年11月8日
- 1 分
バンドギャップとは何か?ワイドギャップ半導体の特性についても詳しく解説!
半導体は、バンドギャップ(禁止帯)と呼ばれる特性を活用して電流を制御しています。電荷を印加すると電流が流れ、印加を止めると電流の流れも止まるという性質がここから生まれています。最近では、バンドギャップの特性を応用して、より耐久性の高いワイドギャップ半導体なども開発されるようになりました。そこで当記事では、このバンドギャップ、ワイドギャップ半導体とは何かについて詳しく解説していきます。

バンドギャップとは?
バンドギャップは、固体材料の電子バンド構造において、価電子帯(電子が結晶内で束縛された状態)と伝導帯(電子が外部へ移動可能な状態)のエネルギーレベルの差を表します。
この電子バンドとは、電子が特定のエネルギー範囲内で存在できるエネルギーレベルの帯(バンド)のことを指し、固体の電子特性を理解する上で重要な概念です。
バンドギャップの大きさが、固体材料の電気特性や光学特性などに影響を与えます。
バンドギャップが大きい材料は、電子がエネルギーギャップを越えて移動するためにより高いエネルギーを必要とし、電気伝導性が低い絶縁体となることがあります。
一方、バンドギャップが小さい材料は、低いエネルギーで電子が移動しやすく、電気伝導性が高い導体となることがあります。
半導体材料においては、バンドギャップの大きさがエレクトロニクスデバイスの性能や動作特性に影響を与えます。
また、バンドギャップが光エネルギーと一致する場合、材料は光を吸収したり放出したりする能力を持つことがあり、光学材料として利用されることもあります。
物質ごとによるバンドギャップの違い
物質ごとにバンドギャップの違いがあるのは、その物質の原子構造や電子の振る舞いが異なるためです。
バンドギャップの大きさは、物質の導電性や光学的特性を決定する重要な要因です。
以下に、導体の場合におけるバンドギャップについて詳しく説明します。
導体の場合
導体は、電流が自由に流れることができる物質です。導体のバンドギャップは非常に小さく、実質的には存在しないとみなされることがあります。
これは、導体の価電子帯と伝導帯が部分的にオーバーラップしており、電子がエネルギーギャップを越えて、容易に移動できることに起因します。
金属が典型的な導体で、金属のバンド構造では価電子帯と伝導帯が部分的に重なっています。
そのため、外部からの僅かなエネルギー供給により、電子は簡単に伝導帯へ移動し、電流を生成します。
バンドギャップの存在しない導体は、熱エネルギーや外部からの電場の影響によって、電子が常に伝導帯に移動する傾向があります。
これにより、導体は電流を通すことができ、電子が自由に移動することによって熱や電力の伝導が可能です。
一般的に、導体はバンドギャップが小さく、電子が容易に伝導帯に移動できるため、高い電気伝導性を持ちます。これが導体の特徴であり、金属や一部の半導体(特に不純物が多い場合)が該当します。
半導体の場合
半導体は、導体と絶縁体の中間に位置する物質であり、電流の流れや電子の振る舞いを制御することができる特性を持っています。
半導体のバンドギャップは、導体のバンドギャップと絶縁体のバンドギャップの間に位置し、その大きさによって導電性や光学特性が決まります。
バンドギャップが狭い半導体は、温度や外部のエネルギー供給によって電子が価電子帯から伝導帯に容易に移動するため、導電性が高くなります。
一方、バンドギャップの大きな半導体は、温度やエネルギー供給に敏感ではなく、電子の移動が難しいため、導電性が低くなります。
半導体のバンドギャップは材料ごとに異なりますが、一般的なバンドギャップの範囲は以下のように分類されます。
インダイレクトバンドギャップ
エネルギーバンドの最小エネルギーを持つ電子と、最大エネルギーを持つ正孔のエネルギー準位が異なる状態です。
インダイレクトバンドギャップを持つ半導体は、光の吸収や放出が効率的でなく、光エミッターやレーザーには向かない傾向がありますが、一方で電子や熱の遷移が効率的であり、トランジスタなどの電子デバイスに適しています。
一般的な半導体材料におけるバンドギャップの範囲は、数ミリ電子ボルトから数電子ボルトにわたります。バンドギャップの違いによって、半導体は導電性や光学的特性などが大きく異なるため、用途や設計に応じて適切な材料が選ばれます。
絶縁体の場合
絶縁体のバンドギャップが広いため、価電子帯と伝導帯のエネルギーレベルの間に多くのエネルギーギャップが存在します。外部からのエネルギー供給が限られており、電子が伝導帯に移動するのは難しいです。
そのため、絶縁体は電流を通すことがほとんどできず、電気絶縁性を示します。
バンドギャップが大きい絶縁体材料は、外部からのエネルギー供給や高温に対しても電子の移動が難しいため、電気的に不活性な材料となります。
これにより、絶縁体は電気絶縁材や絶縁体ガラス、絶縁体セラミックスなどの形で広く使用されています。絶縁体材料は電気的に安定しており、電気回路での絶縁や保護、絶縁体の隔離などの用途に使用されます。
絶縁体材料は、熱や電場の影響をほとんど受けず、高い電気絶縁性を提供します。
そのため、電子回路や電気機器内で異なる電気部分を絶縁し、安全性や信頼性を確保するために使用されます。
ワイドギャップ半導体とは?
ワイドギャップ半導体は、バンドギャップが広い半導体材料のことを指します。
バンドギャップが広いという特性は、高温での動作や高電圧での動作に優れ、高電力・高周波アプリケーションや高温環境での使用に適しているとされています。
ワイドギャップ半導体は、通常、従来のシリコンなどのバンドギャップが狭い半導体と比較して、バンドギャップが3電子ボルト以上の材料を指すことが多いです。
ワイドギャップ半導体の特徴
ワイドギャップ半導体には、以下のような特徴があります。
高温での動作が可能
ワイドギャップ半導体は高いバンドギャップを持ち、高温条件下での安定性を保ちつつ性能を発揮できるため、高温アプリケーションに適しています。
具体的には、エネルギー変換デバイスや高温センサーなどに使用されます。
高耐放射線性
ワイドギャップ半導体は、高エネルギー粒子や放射線に対する耐性が高い特徴があります。
これは、バンドギャップが広いことによって、電子のエネルギー遷移が難しく、外部のエネルギー源からの影響を受けにくいことに起因しています。
そのため、放射線環境下での安定性を保つための素材として使用されます。
高電力・高周波アプリケーションに適している
バンドギャップの広さから、高電力や高周波のアプリケーションに適しています。
高電圧での動作や高周波スイッチングによる高速デバイス操作が可能であり、エネルギー変換デバイスや電力エレクトロニクスに利用されます。
光学特性が優れている
ワイドギャップ半導体は、特に窒化ガリウム(GaN)やシリコンカーバイド(SiC)など、一部の材料が高い光学特性を持っています。
これにより、高輝度発光ダイオード(LED)、レーザーデバイス、光検出器などの光デバイスとして広く使用されます。
高電子移動度
一部のワイドギャップ半導体は、高い電子移動度を持つため、高速電子デバイスの製造に適しています。
高電子移動度は、電子が素早く移動することができるため、高速スイッチングや高周波アプリケーションで有利です。
これらの特徴により、ワイドギャップ半導体は高温・高電力・高周波・光学応用などの幅広い分野で注目されており、新しいエネルギー変換技術や高性能電子デバイスの開発に貢献しています。
ワイドギャップ半導体の代表例
ワイドギャップ半導体の代表例には、以下のようなものがあります。
窒化ガリウム(GAN)
窒化ガリウムは、ワイドギャップ半導体の代表的な材料であり、高い電子移動度と優れた耐熱性を持っています。
GaNは高電力・高周波アプリケーションに使用され、高効率の電力変換デバイス(例:電力インバーターや電源)、高輝度LED、高周波電子デバイスなどに利用されています。
シリコンカーバイド(SIC)
シリコンカーバイドもワイドギャップ半導体の代表例であり、高い耐熱性と耐放射線性を持っています。
SiCは高温環境での動作に適しており、高電圧・高電力アプリケーションや高温センサー、高耐放射線性デバイスなどに使用されています。
亜鉛化ガリウム(ZNO、ZINC、OXIDE)
亜鉛化ガリウムは、高い透明性や光学特性を持つワイドギャップ半導体です。
紫外線を効果的に吸収する特性から、紫外線検出器やLED、透明電極として利用されています。
ダイヤモンド
ダイヤモンドは、最も広いバンドギャップを持つ材料の一つで、ワイドギャップ半導体とされます。
優れた熱伝導性や耐熱性を持ち、高温・高電力環境での使用に適しており、ダイヤモンドは高性能な高周波デバイス、高温センサー、高耐放射線性デバイスなどに利用されています。
これらの代表的なワイドギャップ半導体は、高効率なエネルギー変換技術や高性能電子デバイスの開発に大きな貢献をしているため、エネルギー効率の向上や新たな応用の可能性を探求する分野で注目を集めています。
まとめ
バンドギャップの理解は、電子デバイスの設計や材料選定において不可欠です。
異なるバンドギャップの物質を組み合わせることで、特定の応用に最適な性能を持つデバイスを実現することが可能です。
そのため、バンドギャップの研究と応用は、現代のテクノロジーの進化と持続可能な未来の構築において重要な要素となっています。