• 発行日 2023年2月17日
    • 最終変更日 2024年12月30日
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スプロケットについてのガイド

スプロケットの仕組みと種類や、製品の選び方について紹介します。

スプロケットとは

スプロケットは、チェーンやベルトの輪を回転させてかみ合うように設計された、歯や小さなくぼみのある機械的なホイールです。しかし互換性を持たせるためには、スプロケットとチェーンやベルトの厚みとピッチが同じである必要があります。

基本的なデザインは、世界中で古くから使われているものです。見た目はギアとよく似ていますが、互いにかみ合わせるようには設計されていません。スプロケットは、自転車、自動車、オートバイ、工具、その他の機械など、さまざまな用途に使用されています。

スチール製のものが多く、耐久性があるため長寿命です。軽量なアルミ製のものもあり、オートバイや自転車に適していますが、スチールよりも早く摩耗してしまいます。

スプロケットの部品

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スプロケットには、以下のようなさまざまな特徴があります。

  • 歯の数:スプロケットにある歯の総数で、個々を「歯」と呼びます。
  • ピッチ径:チェーンとスプロケットの接点である歯の間の内側にあるポイントを結ぶスプロケットの円の直径を表します。
  • 外径:歯の先端を結ぶスプロケットの円の直径を表します。
  • ピッチ:歯1本あたりの寸法で、通常はインチで表されます。チェーンのピンとピンの間のピッチに合わせる必要があります。

スプロケットの種類

スプロケットには、形状、サイズ、歯の数によりさまざまな種類があります。ここでは、標準的なタイプと用途を紹介します。

  • ダブルデューティー: 1つのピッチに2つの歯があるため、1つのセットが摩耗したときに、リンクを進めて新しい歯のセットにできます。
  • ハンティング歯: 歯の数が奇数で、回転するたびにリンクが新しい歯のセットとかみ合うため、他のタイプよりも長寿命が期待されます。つまり、他のタイプのスプロケットに比べて、1つの歯が接触する回数が半分で済むため、長持ちします。
  • セグメントリム: ボルトで固定するタイプのリムで、3個、4個、またはそれ以上のパーツで構成されています。チェーンをスプロケットから外したり、スプロケットをシャフトから外したりすることなく、リムの交換が可能です。そのため、エレベーターなどの産業分野では、設置や調整の際のダウンタイムを短縮し、結果的にコストを削減することができます。
  • マルチストランド(多列): より大きなトルクとパワーが必要な場合や、同じドライブシャフトで2つ以上の機構を駆動する場合に使用されます。
  • クイックディスコネクト(QD): 高負荷で使用されることが多く、逆向きに取り付けられる機能を備えたものもあります。
  • アイドラー: 長いチェーンがたるんでしまう場合、むち打ち現象の防止や、障害物の回避のために使用されます。また、負荷の偏りを防ぐこともできます。

シャフトへの取り付け方の種類

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パイロットボアスプロケット

産業機械、自転車、オートバイなどによく使用されています。円筒状の突起があり、必要なボアサイズに穴を開けて、シャフト表面との接触面を確保することができます。そして、グラブスクリュー、ピン、ロックブッシュなどで固定します。ハブの外径に応じて穴を開けるのが可能なサイズに上限があり、その値はメーカーによって規定されています。

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テーパーブッシュスプロケット

テーパーとフランジを貫通する溝を使ってシャフトに固定することができます。英国規格のテーパーブッシュを使用することで、シャフトに合った必要なサイズを確保できます。

スプロケットの仕組み

2つのスプロケットがチェーンやベルトを使ってつながれ、一方のスプロケットが「駆動」、もう一方が「従動」となります。そして、運動機構や動力によって駆動され、動力を伝達したり、機械システムのトルクや速度を変化させたりします。

歯数の多いスプロケットは、より重い物を動かすことができますが、その分摩擦が大きくなり、動作速度が低下します。

また、チェーンが通過することで歯が摩耗するので、歯の先端が尖ったり、引っかかったり、または逆に鈍くなったりした場合は交換する必要があります。

スプロケットの主な用途

自転車では通常、スプロケットを使ってリンクのチェーンを引き、ライダーの足の動きを自転車の車輪の回転運動に変えています。

また、スプロケットは、戦車や農業機械などの装軌車両にも使用されています。スプロケットはキャタピラーに沿って配置され、スプロケットの回転によりキャタピラーを引っ張ることで、車両を動かします。そのことにより、車両の重量がキャタピラー全体に分散され、不整地での確実な走行を可能にしています。

フィルムを使うカメラや映写機では、フィルムを固定し、撮影や上映の際にフィルムを回すためにスプロケットが使われています。また、映画のフィルムを装填するためにも使われます。

スプロケットの寿命

スプロケットの寿命はスプロケットの種類により異なります。いずれの種類でも、寿命は使用状況により変わるため目安をお伝えすることは難しいですが、一般的に摩耗が激しくなってくると言われる時期について見ていきましょう。

・ドライブスプロケット

ドライブスプロケットの寿命は、約15,000km程度の走行をした後と言われています。15,000km程度で交換すると、タイヤがロックされる恐れもなく安全に使い続けられるでしょう。

一般的に、歯が40%程度に減ったなら寿命だと言われており、その後も使い続けると事故や故障が発生する確率が高くなるので、早めに交換してください。30,000km程度の走行で変形が見られるようになることが多いので、走行15,000~23,000kmくらいになったら交換されることをおすすめします。

・リアスプロケット

リアスプロケットの寿命は約30,000kmです。30,000kmくらいまでなら問題なく使い続けられることが多いと言われているので、ドライブスプロケットを2回目に交換する際に一緒に交換すればちょうど良いでしょう。リアスプロケットはドライブスプロケットの2倍、約30,000kmが寿命となります。

チェーンに適合するスプロケットの選定

スプロケットには、使用するチェーンに合わせて、1列、2列、3列の歯があり、シンプレックス、デュプレックス、トリプレックスと呼ばれています。シンプレックスは最も一般的なタイプで、市場のアプリケーションの約70%をカバーし、デュプレックスは約25%、トリプレックスは5%となっています。

規格とチェーンのサイズ

市場で一般的なチェーンの規格は、以下の2つです。

  • 英国規格(BS): 欧州規格としても知られています
  • 米国規格(ANSI)

どちらの規格も、チェーンのサイズには以下のように、さまざまな種類があります。

Sprocket Size

サイズの末尾にはハイフンが付き、その後に1~3の数字が続くことがよくあります。この数字は、そのチェーンに必要なストランド(列)の数を表しています(1はシンプレックス、2はデュプレックス、3はトリプレックスを意味します)。例えば、「12B-2」のチェーンは、デュプレックスのスプロケットが必要であることを意味します。

これらは英国単位系の製品であり、インチ表示であることに注意しましょう。しかし、メートル法の市場であるヨーロッパ向け製品は、メートル法の製品であるかのように見せるために、寸法はメートル法に変換されています。チェーンや油圧機器についても同様です。

そして、力の比率を決めるために、サイズ、外径、または歯の数を決める必要があります。

スプロケット比の計算

この値は、駆動スプロケットの歯数を、従動スプロケットの歯数で割ったものです。例えば、駆動スプロケットの歯数が20枚、従動スプロケットの歯数が60枚の場合、スプロケット比は20/60=1/3=1:3または3となります。

ギアとスプロケットの違い

スプロケットと ギアは、どちらも機械の中で力を伝達したり、連動して物を動かしたりすることに使われますが、大きな違いは、実用上の仕組みです。スプロケットとギアは、どちらもホイールに機械用の歯を持つもので、見た目はよく似ていますが、動作の仕方や役割は異なります。

通常、ギアは互いに連結して動きを伝え、それによって別の場所で動きが生じるように設計されています。スプロケットは通常、機械の一部と直接連動しますが、ギアは互いにかみ合わせ、大きな機械的な動きを発生させたい場合によく使われます。

つまり、スプロケットはチェーンやベルトのようなものを直接動かすために設計されているため、より独立した働きをするのに対し、ギアはネットワークを形成して大きな力に変換し、動きを起こすように作られています。

この違いは、両機構の溝を見るとよくわかります。ギアは直接かみ合うため、歯はホイールの外周だけでなく内周にもあります。

一方、スプロケットの歯は、動かす機器のスロットに正確にフィットするように作られています。そのため、使用できる用途が限られています。

スプロケットの主要メーカー

さまざまな用途に対応できるよう、多種多様な製品を取り揃えています。クリックして詳細をご覧ください。

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