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    無線センサネットワークガイド
     
      • 発行日 2023年6月21日
      • 最終変更日 2023年11月9日
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    無線センサネットワークガイド

    この記事では、無線センサネットワークについて紹介します。

    取材協力:NECエンジニアリング株式会社

    無線センサネットワークとは?

    暮らしを便利に ~ ニーズとシーズ ~

    —— センサネットワークって何ですか?

    例えば、エアコンは部屋の温度を感知して設定温度になるように作動するといった具合に、私たちの身の回りには何かを測る、あるいは検知してアクションを起こすものがたくさんあります。図1は無線によるセンサネットワークが実装されたリビングルームの様子です。エアコンの他にも、煙感知器や窓の開閉センサなどが働いています。これらは従来、個々に独立して使われてきましたが、もしそれらの情報や操作が手元のリモコンなどに集約できれば、今よりずっと便利です。屋外の電力計を電子化して、電気の使用量や料金をリアルタイムで知るといったことも可能になります。このように、各所に分散した機器を無線で結び、ネットワーク化することで、機器の配置や接続の制約が無くなるうえ、機能が融合化され利便性が大きく向上します。

    図1

    無線センサネットワークは、家庭内だけでなく、オフィスやホテルなどビルの設備機器や工場などの生産現場など広い範囲で応用が進んでいます。図2にそれらをまとめました。「センサ」の名が付きますが、語にとらわれる必要もありません。

    図2:広い応用範囲

    無線センサネットワークのトポロジー ~ ネットワークとしての要件 ~

    —— 無線センサネットワークには、どのような技術が必要になりますか?

    無線センサネットワークにつながる機器は、温度センサやスイッチなど、個々の機能としては多くが既存のものです。また、ネットワークの技術はLANやインターネットなどで既に確立されていますし、無線に関しては近距離の中低速通信です。センサネットワークは既存技術の組み合わせ技術とも言えます。

    一方、センサネットワーク特有の課題や考慮しなければならない事柄もあります。例えば、トポロジー(接続の形態)についてもコンピュータなどであれば単純な「1対1」と「1対多」のスター型やクラスタツリー(階層)でほとんど対応できますが、無線センサネットワークでは端末機器の電波が弱いので機器間をリレー接続する「マルチホップ」や複数のルートを持つ「メッシュ」型の接続も考えなければなりません。したがって、それらに対応したルーティング技術、ノイズやデータの衝突(collision)などに耐える接続技術が必要になります。無線センサネットワークではさらに、個々の機器が移動したり新たに加わるあるいは外れたりといったことが考えられますので、接続機器の変化や増減に柔軟かつ動的に対応する、アドホック(ad hoc)性と自己形成能力も考慮されなければなりません。

    もうひとつ、これは当然のことですが、機器接続に際してのプロトコル(接続等の手順)など、仕様が統一されている必要があります。特定メーカの機器どうしに限った接続を想定するシステムであれば、クローズドな独自仕様で統一してもかまいませんが、不特定メーカの様々な機器との接続まで想定する場合には、オープンな規格を皆が採用することが求められます。無線センサネットワークのオープンな規格の一つとして、ZigBeeがあります。ZigBeeは「ZigBee Alliance」によって策定されており、メッシュネットワークをサポートしています。

    一致しないとつながらない ~ 無線技術と規格 ~

    —— 多数の無線機が置かれることになりますよね?

    少しだけ離れた機器間を無線で結ぶアプリケーションには、クルマのキーレスエントリ、家庭のコードレス電話あるいはパソコンの無線LAN(WiFi)などがあり、それぞれが規格によって標準化されています。また、無線機器として国の法規制(日本では電波法)の下に置かれます。無線センサネットワークでも多数の機器を無線接続します(図3)。ただ、通信距離は数メートル程度であり、最大でも100mを見込めば十分です。また、送受するデータは、温度などの数値データやスイッチをオンオフする信号などであり、動画などの高速大容量転送は必要ありません。

    図3:近距離無線接続の種類

    こうしたことから、無線センサネットワーク専用の規格が策定されIEEE802.15.4として規格化されています。独自のシステムであれば必ずしもこの規格に従う必要はありませんが、ZigBee(R)も無線部分はこの規格に則っており事実上の世界標準になっています。<図4>に各規格のデータレートと到達距離を比較しました。802.15.4が無線センサネットワークに相応しい仕様であることが理解できると思います。ちなみに、2007年の802.15.4のノード(端末)とチップセット出荷数は700万で、2012年には2億9200万個に達すると予測されています。(米国インスタット社の調査による)

    図4:各種無線の適用範囲

    丈夫で長持ち ~ システムとしての要件 ~

    —— 電線を無くせば無線ネットワークですか?

    例えば天井に煙探知機と取り付ける場合、天井や壁を突き破って新たに電源線を引き回すのは現実的ではありません。このためほとんどのセンサは電池駆動です。また、ホームコントローラにACアダプタが要るのでは無線センサネットワークの意味がありません。したがって各機器は電池で長期間動く低消費電力性能が要求されます。

    <図5>はビルの空調を部屋毎に管理制御するシステムの一例です。単3アルカリ電池2本で1年以上動く無線温湿度センサユニットを使い、ビル管理用のネットワークで空調を制御しています。また、家庭用機器などでは無線ネットワーク化することによるコストアップは極力避けなければなりません。こうした背景から、装置や専用のモジュールの小型・低消費電力化・低コスト化が進んでいます。

    図5:ビル各室の個別空調管理システム

    ZigBee (R)は、ZigBee Alliance, Inc.の登録商標です。

    Bluetooth (R)は、米国Bluetooth SIG, Incの登録商標です。

    無線センサーネットワークの形態

    —— 無線センサネットワークとは、おもに5種類の形態があります。

    無線センサネットワークとはコーディネーターとルーター、エンドデバイスの組み合わせと形状により、次の5種類に分類されます。


    種類

    特徴

    1対1型

    コーディネーターとエンドデバイスを1対1で接続する

    スター型

    コーディネーターを中心に複数のエンドデバイスを星型に接続する

    ツリー型

    コーディネーターを中心に複数のルーターやエンドデバイスを木の枝状・放射状に接続する

    メッシュ型

    コーディネーターを中心に複数のルーターやエンドデバイスを網目状に接続する

    リニア型

    コーディネーターから複数のルーターを一列で接続させる

    無線センサネットワークの形態は目的・用途・特徴に応じて使い分けられます。たとえば比較的シンプルなスター型は家庭用ネットワークにも広く用いられており、メッシュ型はひとつの通信路に障害が発生しても、他の通信路を用いて通信を継続できることから安定したネットワーク構築で採用されます。無線センサネットワークとは5種類がメインとなりますが、目的・用途・特徴にあわせた形態を選びましょう。

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