- 発行日 2025年9月28日
- 最終変更日 2025年9月28日
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初心者向けラズベリーパイプロジェクト10選
この記事では、ラズベリーパイの基本や実際に取り組める10のプロジェクトを説明し、学生・保護者・趣味で学ぶ方に最適な簡単工作やプログラミング入門アイデアを紹介します。

はじめに:ラズベリーパイを始めるには

ラズベリーパイ(Raspberry Pi)は、手のひらに収まる小型ながら高性能なコンピューターです。価格が手頃で扱いやすいため、教育現場や趣味の電子工作、IoT開発など、幅広い分野で活用されており、国内でも大きな注目を集めています。プログラミングや電子回路に初めて触れる学生や保護者、教師はもちろん、趣味として電子工作を始めたい方にとっても、ラズベリーパイは最適なプラットフォームといえるでしょう。
この記事では、初心者にもわかりやすくラズベリーパイの基本を整理し、さらに実際に取り組める10のプロジェクトを紹介します。
セットアップの手順やGPIOの使い方、カメラモジュールやセンサの活用方法までを含め、基礎から応用へと自然にステップアップできる内容になっています。読み進めることで、基礎から応用までの知識を着実に習得し、ラズベリーパイの実用的な活用へとつなげられます。
ラズベリーパイとは
基本の概要
ラズベリーパイは、Raspberry Pi Foundationによって2012年に開発された教育用コンピューターです。低価格ながら、キーボードやマウス、モニタを接続するだけで一般的なパソコンと同じように使うことができます。手のひらサイズの小型設計で持ち運びやすく、電子工作やIoTシステムの開発に最適なプラットフォームです。
ハードウェアの特徴
- ラズベリーパイボード:CPU、メモリ、USBポート、HDMI端子、イーサネットポートなどを備えた基盤です。
- ラズベリーパイGPIO(汎用入出力ピン):センサやモーターを接続し、プログラミングで制御できます。
- アクセサリ:カメラモジュール、ディスプレイ、HAT基板、スピーカーなど、拡張性の高い周辺機器が利用可能です。
日本での活用例
- 教育:小中学校から大学までのプログラミング授業で活用されています。
- 家庭用IoT:温度センサを使った室内環境モニタリングや、天気予報システムの構築に利用できます。
- 趣味のロボット制作:モーターやサーボを組み合わせ、ロボットの開発や制御実験に挑戦することができます。
初心者におすすめのラズベリーパイボードとスターターキット
Raspberry Pi 4 Model B
最新モデルで、高性能CPUと大容量メモリを搭載しています。動画再生やゲームエミュレーション、電子工作など幅広い用途に適しています。→ Raspberry Pi 4 Model B
Raspberry Pi 400
キーボード一体型のモデルで扱いやすく、学生や初心者が家庭学習で使うのに便利です。
スターターキット
ラズベリーパイ本体、電源、ケース、SDカード、センサなどがセットになった初心者向けキットです。必要な部品がひと通り揃っており、国内でも広く入手できます。
初心者におすすめのソフトウェア
Raspberry Pi OS
公式OSで、教育用ツールや学習用アプリが豊富に搭載されています。
ScratchとPython
- Scratch:ブロックを組み合わせてプログラムを作る直感的な入門環境です。
- Python:本格的なプログラミングを学ぶのに最適で、ラズベリーパイを活用する際の主要言語として広く使われています。
その他便利なソフト
- GPIO制御用ライブラリ:LEDやモーターなどを簡単に制御するためのライブラリです。
- カメラ制御ツール:Piカメラを利用して写真撮影や動画録画を行うためのツールです。
- Minecraft Pi Edition:ラズベリーパイで楽しめる教育版Minecraft。プログラミングとゲームを組み合わせて学習できます。

初心者でも成功できる理由
ラズベリーパイが初心者にとって取り組みやすい理由のひとつは、セットアップの簡単さです。モニタ、キーボード、マウスを接続するだけで、すぐに使い始めることができます。
さらに、拡張性の高さも大きな魅力です。GPIOピンを利用すれば、LEDやボタン、各種センサを簡単に追加できるため、学びながら少しずつ機能を広げていくことが可能です。
また、豊富なコミュニティサポートも安心材料です。国内外の利用者が情報を共有しており、日本語の解説やフォーラムも充実しているので、困ったときには事例やアドバイスを参考にできます。
プロジェクトを通じて得られること
ラズベリーパイのプロジェクトに取り組むことで、幅広いスキルを習得できます。まず、Pythonによるプログラミングを通じて、基礎的なコーディング力が自然に身につきます。次に、電子回路を組み立てを体験することで、ハードウェアに関する基礎知識を学ぶことができます。
さらに、IoTやロボティクスに応用できる実践的な技術を理解でき、将来の発展的な学習にもつながります。そして、自分のアイデアを形にする経験を重ねることで、実生活をより便利にする発想力も育まれます。
初心者向けラズベリーパイプロジェクト10選
1. LED点滅
(ラズベリーパイLED点滅)
- 難易度:★☆☆☆☆
- 時間:20〜30分
- 使用部品:Raspberry Pi、LED、抵抗、ジャンパーワイヤ
作り方:
- GPIOピンの18番にLEDを接続し、抵抗を介してGNDに繋ぎます。これで安全にLEDを点灯できる回路が完成します。
- PythonでGPIOを制御するコードを書き、LEDを点灯・消灯させます。プログラムを実行すると、LEDが一定の間隔で点滅する様子を確認できます。
- time.sleep()を使って点滅の間隔を調整します。値を短くすると高速点滅、長くするとゆっくりした点滅になり、学習や実験の目的に合わせて設定できます。

2. ボタン制御LED
(ラズベリーパイボタン/ラズベリーパイスイッチ)
- 難易度:★☆☆☆☆
- 時間:30〜40分
- 使用部品:タクトスイッチ、LED、抵抗
作り方:
- GPIO23にスイッチを接続し、プルダウン抵抗を入れて入力信号が安定するようにします。
- GPIO18にLEDを接続し、抵抗を介して電流を制御することで、安全に点灯できる回路を作ります。
- PythonでGPIOの入力を監視するコードを書き、ボタンが押されたときにLEDが点灯するように制御します。これにより、入力と出力の基本的な連携を学ぶことができます。
- 応用として、ボタンの長押しで異なる動作を割り当てたり、複数のボタンを組み合わせて複雑な点灯パターンを作ることも可能です。
3. 温湿度モニタ
(ラズベリーパイ温度センサ)
- 難易度:★★☆☆☆
- 時間:40〜60分
- 使用部品:DHT11/DHT22 センサ
作り方:
- DHTセンサをGPIO4に接続します。VCC・GND・データピンの位置を確認し、ジャンパーワイヤを正しくつなぎましょう。
- Pythonライブラリ(例:Adafruit_DHT)をインストールします。ターミナルでpip install Adafruit_DHTを実行すれば準備完了です。
- Pythonコードで温度と湿度を取得し、ターミナルに表示します。摂氏や%の単位を付けて出力すると、より見やすくなります。
- データをCSVに保存すれば、後からグラフ化して変化を分析できます。さらに日ごとに分けて保存するよう設定すれば、長期的なデータ収集も簡単に行えます。
- 応用として、一定の温度を超えたらLEDやブザーによるアラートを出す仕組みを追加すれば、実用的な監視システムとして活用できます。
4. PIR人感センサLED
- 難易度:★★☆☆☆
- 時間:50〜70分
- 使用部品:PIRセンサ、LED
作り方:
- PIRセンサをGPIO17に接続します。電源ピンとGNDピンを正しく配線することで、安定して動作します。
- センサが人を検知したらLEDを点灯するPythonコードを書きます。GPIO.input()で信号を読み取り、条件分岐を使ってLEDを制御します。
- 廊下や玄関に設置すれば、自動点灯システムとして活用できます。time.sleep()で点灯時間を調整すれば、数秒間の短時間点灯から数分間まで自由に設定できます。
- 応用として、検知時にブザーで警告音を鳴らしたり、ログファイルに検知時刻を記録すれば、簡易的な防犯システムとしても利用できます。
5. タイムラプスカメラ
(ラズベリーパイカメラモジュール)
- 難易度:★★☆☆☆
- 時間:60分
- 使用部品:Raspberry Pi カメラモジュール
作り方:
- カメラモジュールをCSIポートに装着します。しっかりと差し込み、固定されているか確認してください。
- raspistillコマンドやPythonスクリプトを使って、撮影間隔を設定します。例えば「30秒ごとに撮影」といった細かい調整が可能です。
- 撮影した静止画を一定のフレームレートでまとめ、動画に変換してタイムラプスを作成します。例として、1分ごとに撮影した画像を1秒ごとに表示すれば、数時間の変化を数十秒の映像に圧縮できます。
- 解像度や保存形式を変更することで、記録したい内容に合わせた仕上がりに調整できます。桜の開花や雲の流れ、天候の移り変わりなど、身近な自然現象を美しく記録することができます。
6. 天気ステーション
(ラズベリーパイ天気予報)
- 難易度:★★★☆☆
- 時間:60〜90分
- 使用部品:DHT22(温湿度センサ)、光センサ
作り方:
- 温度・湿度センサと光センサをGPIOに接続します。各センサのピン配置を確認し、特にVCCとGNDを間違えないよう注意してください。
- Pythonのセンサ用ライブラリを利用し、一定間隔でデータを取得して変数に記録します。
- FlaskなどのWebフレームワークを使ってダッシュボードを作成し、データをリアルタイムで表示します。グラフライブラリを組み合わせれば、気温や湿度の変化をわかりやすく可視化できます。
- 気象庁の公開データと比較することで精度を確認しましょう。ログを日付や時刻ごとに保存し、外部データと並べて表示すれば、観測結果の信頼性を高められます。
- 応用として、設定した閾値を超えた際にアラートを表示したり、メール通知を送る機能を追加すれば、実用的なモニタリングシステムとして活用できます。
7. レトロゲーム機
(レトロパイ)
- 難易度:★★★☆☆
- 時間:60〜90分
- 使用部品:USBゲームコントローラ、HDMIモニタ
作り方:
- SDカードにRetroPieをインストールします。公式サイトからイメージをダウンロードし、イメージライターで書き込みます。必要に応じて設定ファイルを編集し、Wi-Fi接続やキーボードの言語設定を整えましょう。
- HDMIケーブルでモニタに接続します。解像度や表示設定を調整して快適にゲームができる環境を作りましょう。音声出力はHDMIまたはオーディオ端子から確認してください。
- USBコントローラを接続すると、ゲームを操作できるようになります。初回起動時にボタンの割り当てを設定し、複数のコントローラをつなげば2人プレイも可能です。さらに、ROMファイルを正しいディレクトリに配置することで、遊べるゲームを追加できます。
8. 音楽プレーヤー
(ラズベリーパイスピーカー)
- 難易度:★★★☆☆
- 時間:60〜80分
- 使用部品:USBスピーカー
作り方:
- USBスピーカーをラズベリーパイに接続します。接続後に音声設定を確認し、音が正しく出力されるかテストしておきましょう。
- Pythonのpygameライブラリを使い、WAVやMP3などの音楽ファイルを再生します。基本的な再生・停止に加え、ボリューム調整やループ再生といった機能も簡単に追加できます。
- Tkinterを利用してシンプルなGUIを作成すると、選曲機能を備えたジュークボックスに発展します。曲リストを表示して再生ボタンを配置すれば、直感的に操作可能です。さらに、プレイリスト機能やシャッフル再生を組み込めば、実用的な音楽プレーヤーになります。

9. 超音波距離センサ
(ラズベリーパイ距離センサ)
- 難易度:★★★☆☆
- 時間:60〜90分
- 使用部品:HC-SR04 超音波センサ
作り方:
- HC-SR04をラズベリーパイのGPIOに接続します。電源ピン(VCC)を5V、GNDはラズベリーパイのGNDピンに接続し、TrigとEchoをGPIOに割り当てます。正しい配線を行うことで安定した距離計測が可能です。
- PythonでTrigとEchoを制御します。Trigピンから短いパルスを送信し、Echoピンに返ってくる信号の時間を計測して距離を算出します。音速を使った計算式により、ミリメートル単位での精密な測定も可能です。
- 一定距離未満で反応する仕組みを追加します。例えば、30cm以内に物体が近づいた際にLEDを点灯させたり、ブザーを鳴らすよう設定すれば、障害物検知システムになります。さらに、複数のセンサを組み合わせれば、広範囲をカバーする安全システムや、ロボットの障害物回避にも応用できます。
10. パーソナルWebサーバー
- 難易度:★★★★☆
- 時間:90〜120分
- 使用部品:Raspberry Pi本体、インターネット接続
作り方:
- Raspberry Pi OS上でFlaskをインストールします。ターミナルでpip install flaskを実行すれば、依存関係も含めてセットアップが完了し、簡単なWebアプリを提供できる環境が整います。
- HTMLファイルを作成し、Pythonコードで配信します。まずは「Hello World」を表示するシンプルなページから始め、CSSやJavaScriptを追加してデザインや動きを取り入れましょう。
- この仕組みは、スマートホームの基盤としても応用できます。センサやアクチュエータを組み合わせれば、照明や温度管理、セキュリティなどをまとめて制御できます。さらにクラウドサービスと連携すれば、外出先から状況を確認したり操作することも可能になり、実用性が一気に高まります。
- ユーザー認証やログ保存機能を追加すれば、安全性と利便性を兼ね備えた本格的なWebシステムへ発展させることができます。
学習の次のステップ
挑戦できる分野
- AIカメラの活用 カメラモジュールとAIライブラリを組み合わせることで、顔認識や物体検出に挑戦できます。身近な応用としては、顔を認識して反応するロボットや、特定の物体を検出して動作するシステムを作ることができます。
- 複数センサの統合 温度・湿度・光・距離といった複数のセンサを同時に扱うことで、より複雑なシステムを構築に挑戦できます。たとえば、部屋の環境を総合的にモニタリングして、自動で照明や換気を制御する仕組みを作ることも可能です。
- クラウド連携IoT センサで取得したデータをクラウドに送信し、外出先から確認や制御ができるIoTアプリケーションに発展させることができます。家庭のスマート化や遠隔監視システムの基盤として活用でき、実用性も高まります。
安全ポイント
- GPIOの正しい設定 ピンの入力・出力を誤って設定すると、回路やラズベリーパイ本体が破損する恐れがあります。作業の前に設定内容を確認し、正しく使うようにしましょう。
- 安定した電源の使用 電源が不安定だと、思わぬ誤動作やデータ破損の原因になります。必ず安定したアダプターや信頼できる電源装置を利用してください。
- 配線の整理 ジャンパーワイヤを整理しておくことで、誤配線やショートを防げます。また、作業後の確認やメンテナンスもしやすくなります。
国内リソース
- メイカースペース 日本各地に存在する工作スペースでは、工具や機材を使って実際に学んだり、他の参加者と交流したりすることができます。
- STEM教育プログラム 学校や地域で提供されるプログラムに参加すると、体系的に学びながら着実にスキルを身につけることができます。
- オンラインフォーラム 国内外のユーザーが集まり、質問や情報交換を通じて新しいアイデアを得たり、困ったときの問題解決に役立てることができます。


