- 発行日 2023年6月21日
- 最終変更日 2026年8月6日
- 5 分
基板レイアウト設計とは?配線が回路特性に与える影響
基板レイアウト設計とは、電子部品の配置、配線、電源・グラウンドの取り回しなどを決め、回路図の内容を基板上に具体化する設計作業です。単に部品を並べて接続するだけでなく、寄生容量、寄生インダクタンス、配線抵抗、ノイズ、発熱なども考慮しながら、回路が意図どおりに動作するように設計する必要があります。この記事では、基板レイアウト設計の基本と、基板上の配線や部品配置が回路特性に与える影響について解説します。

プリント基板とは
プリント基板とは、絶縁板の上に銅などの導体で配線を形成し、電子部品を実装するための基板です。「プリント配線板」「電子回路基板」「基板」「PCB」などと呼ばれることもあります。
主なプリント基板には、次のような種類があります。
プリント基板の主な種類
- ビルドアップ基板:絶縁層と導体層を積み重ね、高密度配線に対応しやすい多層基板の一種
- リジッド基板:硬い材料で作られた、形状を保ちやすい基板
- フレキシブル基板:プラスチックフィルムなどを用いた、曲げられる基板
- リジッドフレキシブル基板:リジッド基板とフレキシブル基板を組み合わせた基板
- 片面基板:片面のみに導体配線を形成した基板
- 両面基板:両面に導体配線を形成した基板
プリント基板は、抵抗器、コンデンサ、半導体などの部品を実装し、電子機器の内部に組み込んで使用されます。さまざまな電子部品を実装したプリント基板は、主に次のような用途で使用されています。
プリント基板の主な用途
- ウェアラブルデバイス
- スマートフォン
- パソコン
- テレビ
- IoT機器
- サーバ
- 医療関連機器
- 産業ロボット
- 自動車
- 航空機
このほかにも、プリント基板は多くの電子機器に使われています。電子機器の小型化・高機能化が進むなかで、プリント基板は部品の実装や電気的接続を支える重要な構成要素の一つです。
プリント基板の役割
プリント基板の主な役割は、次のとおりです。
プリント基板の主な役割
- 各電子部品を基板上に配置・固定する
- 各電子部品を電気的に接続する
- 限られたスペース内で配線を成立させる
- 電子製品の小型化に貢献する
- 電子製品・回路の生産性を高める
- 回路製作にかかるコストを抑える
プリント基板の大きな役割は、各電子部品を基板上に実装し、それぞれを電気的に接続することです。基板レイアウト設計に基づいて部品を配置し、導体配線によって部品間を接続することで、回路図で示された電気的なつながりを実際の基板上に再現します。
一般的な用途では、プリント基板は部品を実装してはじめて電子回路としての役割を果たします。また、小さな基板上に電子部品を効率よく配置・配線できるため、電子製品の小型化や量産性の向上にも役立ちます。部品の固定や配線を一定の品質で行いやすくなるため、製造コストの低減にもつながります。
なお、高周波回路などでは、プリント基板上の導体部分をアンテナとして利用する場合もあります。ただし、一般的には、プリント基板は電子部品を実装し、部品同士を電気的に接続するための基盤として使われます。
電子回路の高速化・高周波化や高密度実装化が進むにつれて、基板レイアウトが回路特性に与える影響は大きくなっています。
基板レイアウト設計では、EDAツールによる配線支援や設計ルールチェック機能の活用が進んでいます。しかし、設計チェックやトラブル解析の場面では、配線や部品配置によって生じる寄生成分を把握し、回路動作への影響を見積もる力が求められます。
基板設計とは:基板レイアウトに潜むリスク
基板設計とは、回路図をもとに、部品配置、配線、層構成、製造条件などを検討し、実際に製造・実装できるプリント基板として具体化する工程です。基板レイアウト設計は、この基板設計の中でも、部品配置や配線の具体的な設計に関わる工程です。
基板設計は、回路図をそのまま基板上に写し取るだけの作業ではありません。部品の配置、配線の長さや幅、電源・グラウンドの取り回し、層構成、製造条件などを総合的に考慮し、回路が安定して動作するように設計する必要があります。
電子機器の小型化・高機能化に伴い、回路は高速化・高周波化し、電子デバイスも小型化されてきました。その結果、高密度実装が進み、プリント基板上の限られたスペースに多くの機能を収める必要があります。
同時に、プリント基板の設計ツールも進化しています。複雑な設計ルールに対応したレイアウトを作成できるようになり、電磁界解析や熱解析などを用いたシミュレーションも活用されています。こうした技術により、設計段階で多くの問題を予測しやすくなりました。
また、部品の小型化や高密度実装によって部品間の配線を短くできれば、配線に伴う寄生成分を抑えられる場合もあります。この点だけを見ると、ハードウェア技術者にとって基板設計上のリスクは小さくなっているように見えます。
しかし実際には、基板レイアウト設計に起因する回路トラブルは現在でも発生します。回路やデバイスの選定に大きな問題がないにもかかわらず、予定したアナログ特性が得られない、デジタル信号のタイミング余裕が少ないためにまれに誤動作する、ノイズが規制値に収まらない、といった問題が生じることがあります。
こうしたトラブルは、開発の終盤で実装基板ができあがってから発覚することも少なくありません。原因の一つとして、配線によって形成される静電容量(C)やインダクタンス(L)、抵抗分(R)など、回路図には表れにくい寄生成分の見積もり不足が挙げられます。
基板上の配線は3次元の分布定数回路として捉えられる
部品を搭載したプリント基板は、3次元、つまり立体的な分布定数回路として考えることができます。分布定数回路とは、容量やインダクタンス、抵抗が一点に集中しているのではなく、配線や基板全体に分布して存在している回路のことです。
信号ラインとグラウンドプレーン、信号ライン同士、ビアやスルーホール、実装部品などの間には、L、C、Rの成分が立体的に分布します。これらの成分は、通常の回路図には明示されません。
実際の基板レイアウトを回路の一部として見積もるには、分布する容量やインダクタンスの大きさを把握し、それらを含めたときの回路動作を想定する必要があります。実際の設計では、必要に応じて計算やシミュレーションを行い、緻密に検討する必要があります。
一方で、予期しないトラブルの原因を探る場面では、細かな計算に入る前に、どの程度の寄生成分がありそうかを概算で捉える視点も重要です。
基板レイアウトに生じる寄生成分の目安
基板レイアウトに生じる寄生成分をすばやく見積もるには、目安となる値を知っておくことが第一歩です。
図1は、厚さ1mmの両面基板に、幅1mmの配線を1本形成し、反対面をグラウンド面とした場合の例です。このような配線は、マイクロストリップ線路として考えることができます。図では、このときに形成される静電容量やインダクタンスなどの概略値を示しています。
なお、銅箔厚18μmの基板は、重量表示では1/2oz(オンス)の基板に相当します。
概略値については、例えば1pF程度なのか、10pF程度なのかという桁の違いを把握しておくだけでも意味があります。実際の基板レイアウトでは複数の要素が絡み合うため、厳密な値をすぐに求めることは難しい場合があります。そのようなときは、まず概略を把握し、必要に応じて詳細な計算や解析に進む考え方が有効です。
図1の条件を基準とした粗い概算では、配線幅を狭くすると静電容量も小さくなると見積もれます。ただし、実際の変化量は基板厚、比誘電率、周辺導体との位置関係などにも左右されるため、必ずしも配線幅に比例するわけではありません。インダクタンスについても、図1の条件から大きく外れない範囲では、配線幅や長さによる変化を考慮することで、概算の目安を得られます。
高密度実装を目的とする基板では、線幅や配線間隔、絶縁層の厚みも小さくなる傾向があります。ただし、配線幅と絶縁層厚などの幾何学的な比率が大きく変わらない場合、容量やインピーダンスが何桁も変化するとは限りません。重要なのは、設計条件が変わったときに、どの成分がどの程度変化するかを見積もる視点です。
図1には、配線を伝送線路として考えた場合の特性インピーダンスと関係式も示しています。特性インピーダンスとは、信号が配線を伝わるときの電圧と電流の比を表す値です。
静電容量とインダクタンスの影響は、周波数だけでなく、回路インピーダンスや配線構造によって変わります。高インピーダンス回路では、比較的低い周波数でも、わずかな浮遊容量が時定数や発振条件に影響することがあります。一方、高周波になるほど、配線インダクタンスや伝送線路としての性質も無視しにくくなります。
例えば、配線1cmあたりの概略値を4nHとした場合、100MHzにおける誘導性リアクタンスは約2.5Ωになります。また、1nsの間に1mA増加する電流変化があれば、L×dI/dt=4mVとなり、高速デジタル信号の立ち上がりなどに影響する可能性があります。
信号の周波数が高い場合や立ち上がり時間が短い場合には、配線を単なる接続線ではなく、分布定数回路として考える必要性が高まります。
見落とされやすい一般回路のリスク
配線による影響は、一般に信号の周波数が高くなるほど大きくなります。そのため、高速デジタル回路などでは設計ルールが細かく定められ、慎重に基板レイアウト設計が行われます。
線幅や間隔などの基本ルールの他に例えば、図2aのように、鋭角パターンを無くす、パターン端面からのノイズ放射やインピーダンスの乱れを防ぐために、グラウンド面をパターンより何h(h:基板厚 最低でも3h)拡げる(図2b)、バイパスコンデンサの配線長制限、デジタルとアナログの分離、ビアによるグラウンドプレーン欠如の制限などが厳しく定められているはずです。
このほか、バイパスコンデンサまでの配線長の制限、デジタル回路とアナログ回路の配置・配線領域の分離、ビアやクリアランスによるグラウンドプレーンの分断を避けるための制約なども、設計ルールとして定められることがあります。
このような箇所は、レイアウトソフトを利用する場合にも設計ルールを設定し、重点的に確認されることが多い項目です。
一方で、実際のトラブルは、明らかに注意が必要な高速信号ラインだけでなく、高速信号ラインほど注意が払われない一般回路で発生することがあります。したがって、チェック時には、低周波・低速のインタフェース回路、信号処理回路、電源配線などにも十分注意する必要があります。
低速回路や直流回路でも起こるレイアウト上のトラブル
基板レイアウト設計とは、高速回路だけを対象にした設計作業ではありません。数MHz程度の回路や直流回路でも、配線や部品配置の影響によってトラブルが発生することがあります。
例えば、図3aはクロック発生回路の一例です。図中のインバータや抵抗はマイコン(MCU)などに組み込まれている場合があります。発振周波数は数MHz程度で、水晶発振子と二つのコンデンサを接続するだけの簡単な回路に見えます。
しかし、このような発振回路の端子周辺はインピーダンスが高く、わずかな寄生容量や配線インダクタンスによって動作が不安定になることがあります。近くに他の信号配線があると、ノイズが結合し、発振波形が乱れたり、ジッタが増えたりする可能性もあります。
クロックは他の回路の基準となる信号です。そのため、発振停止はもちろん、ジッタなどの不安定要因にも注意が必要です。また、クロック信号がノイズ源となり、高感度なアナログ回路に影響を与えないようにする必要があります。
このようなトラブルを防ぐには、配線をできるだけ短くすることに加え、回路の下を他の配線が通らないようにする、グラウンドを広く確保しつつ不要なループを作らないようにする、といった配慮が必要です(図3b、図3c)。なお、発振回路まわりのグラウンド配置については、使用するマイコンや発振子の推奨レイアウトも確認する必要があります。また、発振回路からデジタル回路へ供給されるクロック信号は方形波に近く、高調波成分を多く含むことも意識しておく必要があります。
レイアウトに起因するトラブルは、直流回路でも発生します。例えば、電源電流を検出する場合、数十mΩのシャント抵抗器を挿入することがあります。しかし、配線にも抵抗分があり、その値が数十mΩのオーダーに達すると、検出誤差の原因になります(図4)。
このようなトラブルを防ぐには、配線をできるだけ短くすることに加え、回路の下を他の配線が通らないようにする、グラウンドを広く確保しつつ不要なループを作らないようにする、といった配慮が必要です(図3b、図3c)。なお、発振回路まわりのグラウンド配置については、使用するマイコンや発振子の推奨レイアウトも確認する必要があります。また、発振回路からデジタル回路へ供給されるクロック信号は方形波に近く、高調波成分を多く含むことも意識しておく必要があります。
レイアウトに起因するトラブルは、直流回路でも発生します。例えば、電源電流を検出する場合、数十mΩのシャント抵抗器を挿入することがあります。しかし、配線にも抵抗分があり、その値が数十mΩのオーダーに達すると、検出誤差の原因になります(図4)。
さらに、配線を構成する銅(Cu)の抵抗温度係数は約+4000ppm/℃、すなわち約0.4%/℃です。温度によって配線抵抗が変化するため、電流検出などの精度に影響する可能性があります。
基板レイアウト設計では、配線や部品配置だけでなく、実装する抵抗器、コンデンサ、インダクタなどの部品特性も回路動作に影響します。用途に応じた部品を選ぶ際は、基板レイアウトとの関係も踏まえて、各部品の仕様を確認しておくことが重要です。



