- 発行日 2024年1月18日
- 最終変更日 2025年8月4日
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レギュレータとは?種類と選び方、メリット・デメリットをわかりやすく解説【2025年版】
レギュレータは電子機器の電源回路で安定した電圧を供給する重要な部品です。入力電圧の変動や負荷変動を補正し、回路の安全かつ安定した動作を支えます。種類や特徴、用途に応じた選び方を理解することは、電子設計において欠かせません。 本記事では、レギュレータの基本的な役割から主な種類、それぞれのメリット・デメリット、選定ポイントまでをわかりやすく解説します。レギュレータの基礎知識を押さえ、設計や選定に役立ててください。

レギュレータの基本:電圧を安定化させる重要部品
レギュレータは、電子回路において入力電圧や負荷変動があっても、常に一定の出力電圧・電流を供給するための電子部品です。電源の安定化を図ることで、機器の信頼性と安全性を支えています。医療機器や自動車、家電などあらゆる分野で欠かせない存在です。
レギュレータの主な種類と特徴
電子回路において安定した電圧供給は極めて重要で、その役割を担うのが「レギュレータ」です。主に「リニアレギュレータ」と「スイッチングレギュレータ」の2種類があり、それぞれ特徴や適用領域が異なります。以下で詳しく解説します。
リニアレギュレータ
リニアレギュレータとは、電源電圧を安定化するための装置で、特に電子回路設計における重要な要素の一つです。
その中でも最も代表的なのが三端子レギュレータで、IN、OUT、GNDの三つの端子を持つことからその名がつけられました。このレギュレータは1960年代の終わり頃に開発され、その使いやすさとノイズの少なさから広く愛用されてきました。
近年ではLDOやCMOS化された小型のリニアレギュレータも販売されており、電子機器の小型化に貢献しています。
スイッチングレギュレータ
スイッチングレギュレータは、その名の通りスイッチング動作により電圧を制御するデバイスです。現在市場に出回っているスイッチングレギュレータは多種多様で、その選択肢の多さは初心者にとっては困惑を招くかもしれません。それぞれのタイプは特定の応用に最適化されており、その選択は使用する電源回路の設計や目的によって大きく左右されます。
それらを選ぶ際には、まずスイッチングレギュレータが組み込まれる電子回路のサイズや用途を理解することが重要です。例えば、小型化が必要な場合やエネルギー効率を重視する場合などには、特定のスイッチングレギュレータを選ぶことが求められます。
リニアレギュレータ(Linear Regulator)
概要 リニアレギュレータは、入力電圧から必要な出力電圧を得るために、内部のトランジスタを抵抗のように制御して余分な電圧を熱として放散する方式です。シンプルな構造で、主に低電力・低ノイズが求められる用途で使われます。
特徴
- 動作原理:「線形動作」により入力と出力間の電圧差を調整
- 電力変換効率:低い(通常60%程度、入力と出力の差が大きい場合はさらに低下)
- ノイズ:非常に低く、オーディオ機器や精密測定機器向き
- 発熱:入力と出力の電圧差と負荷電流に比例して大きくなるため、放熱設計が必要になる場合あり
- 回路設計:簡単で部品点数も少なくコストも低め
- 用途例:低ノイズが必須なアナログ回路、センサー電源、低電力回路など
スイッチングレギュレータ(Switching Regulator、DC/DCコンバータ)
概要 スイッチングレギュレータはトランジスタを高速でON/OFF(スイッチング)して電力を制御し、コイルやコンデンサを使って電圧を安定化します。効率が高く、より高出力や小型化に適しています。
特徴
- 動作原理:スイッチング素子を周期的にON/OFFし電力を調整、昇圧・降圧・反転など多様な変換が可能
- 電力変換効率:高い(最大90~95%に達し、発熱が少ない)
- ノイズ:ON/OFF動作に伴うスイッチングノイズやリップルが発生しやすいため、EMI対策が必要
- 発熱:効率が良いため少なめだがノイズ対策で部品数が多くなることも
- 回路設計:複雑で部品点数や設計難度が高いことが多い
- 用途例:高出力回路、バッテリー駆動機器、コンパクト設計の電源回路、産業機器など
リニアレギュレータとスイッチングレギュレータの比較
特長 | リニアレギュレータ | スイッチングレギュレータ |
|---|---|---|
| 電力変換効率 | 低い(〜60%) | 高い(90〜95%) |
| ノイズ | 低い | 高い(リップル・スイッチングノイズあり) |
| 発熱 | 大きい(放熱対策が必要な場合あり) | 少ない |
| 回路設計 | 簡単・部品少ない | 複雑・部品多い |
| コスト | 低価格 | 高価格 |
| サイズ | 基本的に大きく放熱器が必要 | 小型化しやすい |
| 対応出力電流 | 小〜中程度 | 大電流対応可能 |
| 主な用途 | 精密機器・低ノイズ回路 | 高効率・高出力回路、バッテリー駆動機器 |
レギュレータを使用する際の注意点 【リニア・スイッチング】
レギュレータは電子回路の安定動作に不可欠ですが、その種類や特性を理解し、正しい使い方をすることが重要です。ここでは代表的なリニアレギュレータとスイッチングレギュレータ別に注意すべきポイントを解説します。
リニアレギュレータ使用時のポイント
- 発熱対策を徹底すること リニアレギュレータは入力電圧と出力電圧の差(ドロップアウト電圧)に応じて余剰エネルギーを熱として放出します。特に入力と出力の電圧差が大きい場合、発熱が増加し放熱器(ヒートシンク)の設置が必要です。適切な放熱設計がなければ、製品の信頼性低下や故障の原因となります。
- 入力電圧・出力電圧と電圧差の確認 使用するレギュレータが対応する最大入力電圧を必ず守りましょう。また、出力電圧が適切に設定されているか、ドロップアウト電圧(通常約1.5V以上必要)を満たしているかデータシートで確認が必要です。電圧差が過度に大きいと発熱と効率悪化の原因です。省エネ設計には低ドロップアウト(LDO)タイプも検討しましょう。
- 使用環境や負荷電流の考慮 実装環境の温度や必要な出力電流に応じて機種選定を行い、過負荷や高温による性能劣化を防ぎます。
- 出力電圧可変タイプの活用 一部のリニアレギュレータは出力電圧が可変可能なので、設計の自由度を高める際には検討しましょう。
スイッチングレギュレータ使用時のポイント
- ノイズ対策を講じること スイッチング動作によりリップルや高周波ノイズが発生しやすいため、EMI対策や適切なフィルタ回路の設計が欠かせません。回路のノイズ耐性を向上させるため、シールドや基板設計にも配慮が必要です。
- 入力電圧範囲と動作周波数の確認 スイッチングレギュレータには適正な入力電圧範囲があり、これを逸脱すると動作不良や破損の恐れがあります。また、動作周波数が高すぎると効率低下やノイズ増加のリスクがあるため、プロジェクトに合わせた製品選択が重要です。
- 回路の複雑さと設計難度 スイッチングレギュレータは回路構成が複雑なため、設計時にはデータシートの推奨回路図や設計ガイドを厳守し、部品の品質にも注意してください。
共通の注意事項
- 出力電圧が入力電圧を上回る逆流防止策 電源オフ時など、出力側の電圧が入力側より高くなる場合があります。この逆流によるレギュレータ損傷を防ぐため、ダイオードを用いた保護回路の導入を推奨します。
- 適切な電源供給の確保 レギュレータ自身は電圧を安定化させる機器ですが、電源が適切に用意されていなければ機能しません。電源装置の選定や配線設計にも注意を払い、安定供給を確保しましょう。
- データシートの仕様厳守 すべての選定・設計段階で、使用するレギュレータのデータシートに記載された仕様、許容値、推奨回路を必ず確認してください。
まとめ:レギュレータの役割と選び方のポイント
レギュレータは電子回路の電源安定化に欠かせない重要な部品です。入力電圧や負荷の変動があっても一定の出力電圧を保ち、機器の安定動作や信頼性向上に大きく貢献します。
主にリニアレギュレータとスイッチングレギュレータの2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- リニアレギュレータは構造がシンプルでノイズが少なく、低電力・低ノイズが求められる回路に最適です。
- スイッチングレギュレータは高効率・低発熱で大電流やバッテリー駆動用途に適していますが、ノイズ対策が不可欠です。
選定時には、使用環境や負荷条件、効率、ノイズ特性、放熱設計、コストなどを総合的に判断し、最適なレギュレータを選ぶことが重要です。また、データシートの仕様や推奨回路図をしっかり確認し、正しい設計を心掛けましょう。
これらのポイントを押さえることで、安定した電源供給が可能となり、電子機器の性能と信頼性を高めることができます。


