• 発行日 2024年4月26日
    • 最終変更日 2025年12月2日
  • 5

VVVFインバータの仕組みと制御方式|利点と採用場面を分かりやすく解説

VVVFインバータは、交流・直流電源をモータ制御に適した電圧と周波数へ変換する装置です。鉄道車両をはじめ、空調機器やエレベーターなど、さまざまな機器で採用されています。この記事では、VVVFインバータの基本的な仕組みと代表的な制御方式、採用場面、さらに導入メリット(利点)について分かりやすく解説します。

Aluminium Capacitors Guide Banner

VVVFインバータ制御とは?

VVVFインバータ制御とは、交流電源で動作するモータを駆動する際に、インバータを用いて電圧と周波数を調整し、回転数やトルクを制御する方式です。

インバータは、直流電源を交流電源に変換する装置です。VVVFインバータは電圧と周波数の両方を可変にし、その組み合わせによって、モータの回転を制御します。

VVVF(スリーブイエフ/可変電圧可変周波数)は、「Variable Voltage Variable Frequency」の略で、日本では「VVVF方式」、または「可変電圧可変周波数方式」と呼ばれています。

交流モータの回転数やトルクは電圧と周波数に強く依存するため、これらを精密に制御することが安定した運転の鍵となります。VVVFインバータ制御を用いることで、柔軟な速度制御や高効率運転が可能になり、省エネルギー化や機器寿命の延長にもつながります。

日本では「VVVFインバータ制御」という呼称が一般的ですが、英語圏では「VFD(Variable Frequency Drive)」と呼ばれることが多く、用語の違いに注意が必要です。VFDは電圧・周波数ともに可変で、おおむね日本でいうVVVFインバータに相当する装置です。

VVVFインバータが利用されるシーン

この章では、VVVFインバータが実際に利用されるシーンについて解説します。

鉄道車両

電車のVVVFインバータは、主電動機に適切な電圧と周波数の電力を供給して回転を制御する装置です。これにより、走行速度に応じて電圧や周波数を調整でき、スムーズな発進や停止が可能になります。

VVVFインバータによる滑らかな制御は車両の挙動にも影響し、急発進や急停止を避けることで乗客への負担を軽減します。加減速の安定性が高まることで乗り心地が向上し、車両全体の動きもより安定します。

さらに、電車のVVVFインバータは車両の状態や走行環境に応じて電圧と周波数を最適化し、機器の効率的な運転やエネルギー消費の低減にも寄与します。

空調システム

VVVFインバータは、空調機器にも広く採用されており、近年はエアコンなど多くの製品で使用されています。空調機器にはモータが備えられており、このモータの回転速度を適切に調整するためにVVVFインバータが用いられています。モータへ供給する電圧と周波数を調整することで、回転速度を効率よく制御できます。

れにより、冷暖房の立ち上がりが速くなり、エネルギー効率も向上します。結果として、消費電力を抑えながら快適な室内環境を維持することが可能となります。

エレベータ

エレベーターは、かごを昇降させる巻上機を駆動するモータを制御することで動作しています。このモータへ供給する電圧と周波数を調整するために、VVVFインバータが用いられます。

VVVFインバータ制御により加速や減速が滑らかになり、乗り心地が向上します。また、モータの負荷を適切に管理できるため、過剰なストレスや摩耗を抑えられます。これにより、モータの寿命が延び、メンテナンス費用や運転コストの削減が期待できます。

VVVFインバータの制御方式

VVVFインバータの制御方式は、大きく3種類に分けられます。従来は供給電源の周波数を自在に調整する技術が確立されておらず、複数の段階を経て調整する必要がありました。

しかし、電圧と周波数を任意に変更できる技術が発展したことで、現在では電源を希望する電圧と周波数に直接調整できるようになりました。

ここでは、代表的な3種類の制御方法について説明します。

V/f制御(電圧/周波数一定制御)

V/f制御は、あらかじめ設定されたシーケンスに従い、電圧と周波数を連動させて制御する方式です。制御回路が単純で比較的安価に構成でき、外部要因の影響を受けにくい点が特徴です。

V/f制御は、以下の用途で使用されます。

この制御方法の主な目的は、省エネルギーの実現です。具体的には、ファンやポンプなどの機器が効率よく運転されることで、エネルギー消費が抑えられます。

センサ付きベクトル制御(ベクトル制御)

センサ付きベクトル制御は、モータの回転子(ロータ)に取り付けた回転数センサや回転子位置センサの計測結果に基づき、電圧・周波数・位相を制御して必要な回転数やトルクを得る方式です。

センサを使用するため、保守作業は伴いますが、トルク・回転数・位置を高い精度で制御できる点が大きな利点です。

センサ付きベクトル制御は、以下の用途で使用されます。

  • 押出機
  • 巻取機
  • 鉄道車両
  • エレベーター

特に、大きな始動トルクと高い制御精度が求められる場合に用いられます。

センサレスベクトル制御(センサレス制御)

センサレスベクトル制御は、回転子位置をセンサで直接検出せず、巻線電流の大きさと位相から回転子磁束(トルクや回転速度を決める基本情報)を推定して制御する方式です。推定した磁束情報に基づいて電圧と周波数を調整し、必要なトルクや回転数を得られます。

センサを使用しないため保守の手間が少なく、大型電動機にも適用しやすいという利点があります。一方で、トルクや回転数を推定するためには、高速な演算が可能な回路が求められます。

センサレスベクトル制御は以下の用途で使用されます。

  • クレーン
  • ハイブリッド車
  • タンクレス給水用ポンプ

急速な起動が必要な場合に用いられる制御方式です。

VVVFインバータを用いる利点

VVVFインバータを使用することで、モータの制御性が向上し、さまざまな利点が得られます。ここでは、代表的な利点について説明します。

任意の電圧と周波数に変換できる

VVVFインバータは電圧と周波数を自由に調整できるという特徴があります。これにより、異なる規格の電源や負荷条件にも柔軟に対応できます。

例えば、鉄道車両やエレベーターを海外で運用する場合、地域によって電源規格が異なると設計変更が必要になります。しかし、VVVFインバータ制御により電圧と周波数を柔軟に調整できるため、こうした問題が軽減されます。

可変抵抗方式に比べてエネルギー効率が高い

VVVFインバータは、従来の可変抵抗でモータを制御する方法と比較して、エネルギーを効率的に変換できます。その結果、モータの効率が向上し、消費電力の削減につながります。

短時間の過負荷運転に対応できる

VVVFインバータは、短時間であれば過負荷状態での動作にも対応できる場合があります。

これは、一時的にモータへ大きな負荷がかかったとしても、安全に運転を継続しやすいことを意味します。

まとめ

この記事では、VVVFインバータの仕組みや利用されるシーン、主な制御方式について紹介しました。

VVVFインバータは、電源からモータに供給される電圧と周波数を可変的に調整し、回転数やトルクをきめ細かく制御できる装置です。

大電力用半導体の進歩により小型化が進んだことで、鉄道車両をはじめ、空調機器やエレベーターなど多くの機器で広く採用されています。また、V/f制御やベクトル制御など複数の方式があり、用途や求められる性能に応じて最適な制御方式を選択できます。

関連ガイド

関連ページ