- 発行日 2024年4月26日
- 最終変更日 2025年1月10日
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VVVFインバータとは?制御方法や利用されるシーンを徹底解説
VVVFインバータ制御とは、ある電源から任意の電圧と周波数に変換する技術のことを指します。 特に電車の制御と関わりがありますが、その他にも利用される制御方式です。この記事ではVVVFインバータについて、制御方式や理論、利用するメリットについて解説します。

VVVFインバータ制御とは?
VVVFインバータ制御とは、交流電源で動作するモータを動作させるために、インバータを用いて任意の周波数と電圧を発生させる制御方式のことを指します。
インバータとは、直流電源を交流電源に変換する装置のことです。
VVVF(スリーブイエフ)とはVariable Voltage Variable Frequencyの略であり、VVVFインバータ制御はVVVF方式、または可変電圧可変周波数方式とも呼ばれます。
交流電源でモータを回す場合、回転数や回転力は電圧や周波数に影響を受けます。つまり、回転数や回転力を制御したい場合には電圧や周波数を制御する必要があります。
こういった、交流電源のモータを柔軟に制御したいシーンにおいて、VVVFインバータ制御が用いられます。
日本ではVVVFインバータ制御と言われますが、英語圏ではVFDと呼ばれるため注意が必要です。
VVVFインバータが利用されるシーン
この章ではVVVFインバータが利用されるシーンについて解説します。
鉄道車両
電力を電車走行の動力源として変換するためにVVVFインバータ制御が用いられています。電車の走行速度に応じて電圧や周波数を制御することで、電車のスムーズな発進や停止などを実現することができます。
電車の場合、急発進や急停止をすると利用者はストレスを感じてしまいます。このような問題を解決するために、VVVFインバータで滑らかに電圧と周波数を制御します。
空調システム
最近では、エアコンなどの空調システムでもVVVFインバータが用いられることがあります。空調システムはモータを備えています。このモータの回転速度を制御するために、電圧と周波数を変化させる必要があるのです。
モータの動作を柔軟に制御することによって、エネルギーの効率化による素早い冷気や暖気の放出、さらには電気代の節約に貢献しています。
エレベータ
エレベータを動作させるためにはモータを制御する必要があります。この制御にVVVFインバータが用いられています。
エレベータは加速や減速を滑らかに制御することで快適な乗り心地を実現します。また、モータの負荷を適切に管理することで、過剰なストレスや摩耗などを減らすことが可能です。
これによって、モータの寿命が長くなり、コストを削減できます。
VVVFインバータの制御方式
VVVFインバータの制御方式は大きく分けて3種類あります。従来は供給電源の周波数を柔軟に変換できる方法は知られておらず、多段階で変換していました。
しかし、電圧と周波数を柔軟に変更する手法が確立されたことから、現在では自由自在に電源を任意の電圧と周波数に変換できます。
3種類の制御方法をそれぞれ解説します。
(回転部センサ付き)トルクベクトル制御
(回転部センサ付き)トルクベクトル制御では、回転部に回転数センサ・回転子位置センサを取り付けて、その計測結果に基づいて電圧や周波数、位相を制御し、任意の回転数やトルクを得ます。
センサを必要とするためその保守をしなければならない一方、トルクや回転数、位置を精密に制御することができるメリットがあります。
(回転部センサ付き)トルクベクトル制御は以下の用途で使われています。
- 押出機
- 巻取機
- 鉄道車両
- エレベータ
特に、大きな始動トルクと正確な制御が必要なケースで用いられています。
(回転部)センサレス・トルクベクトル制御
(回転部)センサレス・トルクベクトル制御では、回転部のセンサを省略し、代わりに巻線の電流の大きさと位相でトルクと回転数を推定します。それに基づいて電圧と周波数を変化させて任意のトルク、回転数を得ます。
センサがなくなった分、センサの保守が必要ないのはもちろん、大型の電動機を用いることが可能です。一方で、トルクや回転数を推定するための高速な演算回路を必要とします。
(回転部)センサレス・トルクベクトル制御は以下の用途で使われています。
- クレーン
- ハイブリッド車
- タンクレス給水用ポンプ
急速な起動が必要なケースにおいて用いられる制御方法です。
VVVFインバータを用いる利点
この章ではVVVFインバータを用いる利点について解説します。
任意の電圧と周波数に変換できる
VVVFインバータは電圧と周波数を自在に変更することが可能です。この特徴を生かすことで、異なる規格の電源や負荷条件に柔軟に対応できます。
例えば、鉄道車両やエレベータなどを様々な国や地方で利用したいと考えた時、地域によって電源の規格が異なると設計を変更する必要が出てきます。しかし、VVVFインバータ制御を用いることで電圧や周波数を柔軟に変更できるため、このような懸念がなくなります。
従来の可変抵抗に比べてエネルギー効率が高い
VVVFインバータは、従来の可変抵抗でモータの制御を行うよりも、効率的にエネルギーを変換できます。
これにより、モータのエネルギー効率化を達成でき、消費電力も削減することが可能となります。
短時間であれば過負荷での利用もできる
VVVFインバータは短時間であれば過負荷状態での利用にも対応できる場合があります。
これはすなわち、一時的にモータに過度な負荷がかかったとしても安全に動作できることを示しています。
まとめ
まとめ
この記事ではVVVFインバータについて解説しました。
VVVFインバータは供給電源の電圧と周波数を任意に切り替えられる技術です。
大電力用半導体が発達したことにより、小型化も進み、さまざまなシーンで利用されています。複数の制御方式が確立されており、ニーズに応じて使い分けられています。