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      • 発行日 2023年2月8日
      • 最終変更日 2024年1月18日
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    ヒートシンクガイド

    ヒートシンクの重要性やヒートシンクの選び方など、ヒートシンクについて詳しく紹介します。

    この記事では、ヒートシンクが何をするものか、どのように取り付けるのか、そしてなぜ効果的に機能するのかをよりよく理解していただくためのものです。自分の装置に最適のヒートシンクをお探しであれば、ぜひ以下の情報をご参照ください。購入すべき最適なヒートシンクについて分かりやすく説明しています。

    ヒートシンクとは?

    ヒートシンクとは、使用中に高温になる可能性のある部品やコンポーネントを冷却するために使用されている装置です。電子機器や機械装置の多くは、発生した熱を逃がすためにヒートシンクを使用しています。

    では、ヒートシンクとはどのような働きをするのでしょうか。簡単に言えば、熱を発生させている部品から徐々に熱エネルギーを奪うものです。ヒートシンクを使用することで、対象となる部品の性能を向上させ、寿命を延ばし、より良く、より長く、より効率的に動作させることができます。

    厳密に言えば、ヒートシンクの定義は、特に熱が理由でパフォーマンスに悪影響を及ぼす場合に、熱を吸収・放出するあらゆる物質や装置を含みます。電子部品や機械における熱の蓄積は、最悪の場合、システムの完全な故障、火災、爆発、怪我などの原因となります。

    実際には、「ヒートシンク」という言葉は、様々な種類の電子機器の冷却器を指すことが多く、ヒートスプレッダー、または単にクーラーと呼ばれることもあります。この種のクーラーは、吸収した熱を大気中に放射し、発生源から遠ざける、ラジエーターの一種です。

    ヒートシンクは、さまざまな種類の電子機器や機械装置から発生する高温を吸収し、放散するために使用されます。実際、通常の動作の副産物として熱が発生するシステムには、重要な部分が熱を持たないようにするためにヒートシンクタイプのデバイスが使用されることがあります。例えば、機械、燃料、電子、摩擦、化学、ソーラー、原子力などにおける各プロセスが挙げられます。

    一般的に使用されているヒートシンクには様々な種類があり、その形状もモデルによって大きく異なります。しかし、ほとんどどれも、主要な特徴や特性が共通しています。

    ヒートシンクの性能の算出方法

    それでは、ヒートシンクの性能を算出する方法について見ていきましょう。

    ヒートシンク性能を算出するための計算式

    ヒートシンクの性能を算出するためには、次のような計算式を用います。

    ヒートシンクの性能を算出する計算式 ヒートシンクの熱抵抗値(℃/W) = 取り付け部品の発熱量合計(W) ÷ 表面温度(℃)

    取り付けられている部品の発熱量を合計し、ヒートシンクの表面温度で除すると熱抵抗値が算出されます。算出された数値が小さいほど性能が高いことを示します。性能を算出する場合は、上記の計算式を用いて熱抵抗値を算出してください。

    ヒートシンクの性能を高める要素

    ヒートシンクの性能には、表面積の大きさと表面処理の方法が影響を与えます。表面の面積が大きいほど熱放射率が高くなることから、表面温度が下がるためです。黒アルマイト処理が施された黒色のヒートシンクも熱放射率が良いため、表面積の小さく性能の良いヒートシンクを選びたいときに役立ちます。

    表面温度を下げるためには表面積を大きくすることが基本ですが、スペースの問題を考えると大きければ良いというわけではありません。ある程度の表面積をキープしていて、黒アルマイト処理が施された製品なら性能が良い可能性が高くなります。

    ヒートシンクの種類

    前述のように、ヒートシンクにはいくつかの種類があります。しかし、ほとんどの場合、金属製であり、うち多くは銅やアルミニウムです。

    ヒートシンクの設計で最も一般的なのは、おなじみの「フィン」設計です。また、ピン、スタンピング、その他の成形技術を用いて、表面積と全体の熱伝導率を向上させたものもあります。

    ヒートシンクの大半はパッシブ型です。つまり、対象となる部品に直接接触している限り、追加の装置やプロセスを必要とせず、熱源から自然に熱を伝導していきます。

    しかし、ヒートシンクに動力ファンなどの冷却手段を追加することで、より効果的な放熱が可能になることがあります。このような技術を採用した製品は、一般にアクティブヒートシンクと呼ばれています。

    では、一般的に使用されているヒートシンクの種類を比較してみましょう。

    Passive Heat Sinks

    パッシブヒートシンク

    前述の通り、パッシブヒートシンクとは、部品を冷却する際に他の製品やプロセスの助けを借りないヒートシンクのことです。パッシブヒートシンクを電気部品や機械部品に取り付けると、発生した熱は、両者が直接接触することで周囲の空気中に放出されます。

    パッシブヒートシンクは、ファンやその他の冷却手段を使用せずに単独で機能することが求められるため、多くの「アクティブ」モデルよりも物理的に大きくなります。フィン型またはピン型のレイアウトによって、冷却したい部品から熱を大気中に放出するのに必要な大きな表面積を実現しています。

    アルミニウム製パッシブヒートシンクのような製品は、低消費電力の電子機器や、アクティブクーリングを必要とするほど高温にならない機械によく使用されます。また、非常に大きな部品でアクティブクーリングが現実的でない場合に、安価な熱伝導ソリューションとしても使用されます。一般的には、取り付けられる部品の周囲に、それなりのスペースを確保する必要があります。

    Active Heat Sinks

    アクティブヒートシンク

    アクティブヒートシンクとは、ファンやウォーターポンプなどの動力を使って冷却能力や熱伝導率を高めるものです。コンピューターやその他の電子システムでは、この種の冷却装置は通常、PCの内部電源から供給されます。

    最も一般的なアクティブヒートシンクは、スタックドフィンの真上または側面に1つ以上のファンを取り付けたものです。このファンは、金属製クーラーに一定の新鮮な空気の流れを行き来させることで、熱放散をより効果的にします。ヒートシンクに内蔵されたファンを「HSF」と呼ぶこともあります。

    さらに進んだタイプのアクティブヒートシンクでは、水やその他の液体を使用して熱源から熱を逃がすことができます。最もシンプルな液冷方式は、クローズドループクーラー(CLC)と呼ばれます。

    CLCでは、ポンプが一定量の水/冷却剤を密閉されたチューブのネットワークに沿って継続的に引き込みます。液体は、冷却する部品に直接取り付けられたブロックの中を流れ、接触板を介して熱を吸収します。その後、ラジエーターやヒートシンクに送られ、水と周囲の空気の間で二次的な熱伝導が行われます。このようにして、液体は冷却された後、再び循環します。

    ファンでもポンプでも、アクティブヒートシンクは電子機器の温度制御システムとして広く使われており、さまざまなチップやLED、ICなどのモジュールを保護し、性能を向上させています。特にコンピューターでは、CPUやグラフィックカードは負荷がかかると非常に高温になるため、ヒートシンクは重要な役割を果たします。

    冷却が不十分な場合、回路の物理的な損傷や、「サーマルスロットリング」と呼ばれるプロセスによって、電気的性能に大きな影響を与えます。後者は、PCなどの「スマート」システムが温度の上昇を検知し、主要部品への電力供給を積極的に制限することで、熱の蓄積を抑えようとするものです。

    Copper Heat Sinks

    銅製ヒートシンク

    銅は、その優れた熱伝導性からさまざまなヒートシンク設計の中核素材としてよく使用されます。銅は熱伝導性に優れており、冷却しようとしているデバイスや回路から熱を素早く効率的に引き離すことができます。しかし、銅製のヒートシンクは、アルミニウム製のヒートシンクに比べて高価で、重量も3倍ほどになります。

    Aluminium Heat Sinks

    アルミニウム製ヒートシンク

    アルミニウムは、銅に比べると、熱伝導率は劣るもののかなり軽量で安価です。また、薄いシート(アルミ押出材)状で使用すると、より構造的に堅牢な金属となります。ほとんどの銅およびアルミニウム製ヒートシンクがこの構造です。多くのアルミニウム製ヒートシンクは、熱が複数の薄い金属フィンを通って上昇する設計になっています。

    ボンデッドフィンのように、銅とアルミの両方で作られているヒートシンクもあります。ベースや接触板に片方の金属(多くは銅)が使われ、フィンにはもう一方の金属が使われていることもあります。

    Finned Heat Sinks

    フィン付きヒートシンク

    フィン付きヒートシンクは、固い金属のブロックを多数の極薄プレートに加工し、これを中央のブロックにつなげて作られています。これはフィン付きヒートシンクの表面積を格段に大きくするための設計です。これにより、クーラーが取り付けられている部品から、効率的に熱を逃がすことができるのです。

    ヒートシンクのフィンを設計・製造する際には、いくつかの加工処理があります。一般的なのは、鍛造やダイカスト、またはCNC機械加工やフライス加工です。ダイカストフィン型ヒートシンクは、安価で大量に販売されることが多く、CNC切削加工のフィン型ヒートシンクは、高価で高品質な製品であり、出荷数も少量となる傾向があります。

    Pinned Heat Sinks

    ピン型ヒートシンク

    ピンを搭載したヒートシンクは、単にピン型ヒートシンク、またはピンフィンクーラーと呼ばれます。実際には、上述した一般的なフラットフィンデザインの代替設計です。ピン型では、コアブロックは土台から上向きまたは外側に伸びるピン、またはロッドの集合で構成されています。ピンには、円筒形、楕円形、四角形などがあります。

    ピン型ヒートシンクは通常、フィン付きヒートシンクよりも全体の表面積が大きくなるように計算されています。しかし、通常の用途では必ずしも大幅な性能向上は望めず、一般的にはフィン付きの方が普及しています。

    ヒートシンク製造の種類

    前述のように、コンピューターやマザーボードなどのヒートシンクには、さまざまな構造、デザイン、製造方法があります。一般的な種類は以下の通りです。

    • 押出ヒートシンク:金属を必要な形に押し込んで作られています。さまざまな用途において利用されます。
    • 鍛造ヒートシンク:金型を使って金属を必要な形に成形するもので、大量生産に適しています。
    • ボンデッドヒートシンク:土台に各フィンを濃密配列で取り付けたものです。特注品やスペースが限られた用途に最適です。
    • プレス加工ヒートシンク:一般的にクーラーとしての性能や効果は低いものの、最も安価に大量生産できます。
    • CNC加工ヒートシンク:金属を固いブロックから精密に切削するため、無駄になる材料が多く、高価な製品です。
    • スカイブ(ジッパーフィン)ヒートシンク:専用の機械を使ってフィンを切断し、所定の位置まで押し上げるという、非常に効果的な(かつ一般的には高価な)製造プロセスで、フィンの根元がわずかにカーブしているのが特徴です。

    これらの技術のほとんどは、従来のフィン付きまたはピン型ヒートシンクの設計を実現するための代替方法です。一般的には、品質、性能、コスト、販売量などのバランスを考慮して選択することになります。

    ヒートシンクは何のために使うのか?

    ヒートシンクがCPUやGPUなどの重要なPCパーツの冷却に必要であることはすでに述べたとおりです。その他、日常的なヒートシンクの用途としては、以下のようなものがあります。

    ヒートシンクの選び方

    「どのヒートシンクを購入すべきか」という質問への答えは、ほとんどの場合、自分の機器と冷却ニーズによります。ヒートシンクを選ぶ際の最初のステップは、使用するアプリケーションの詳細を知ることです。

    ヒートシンクを選ぶ際の主な検討事項は以下の通りです。

    • コンポーネントがどの程度の消費電力(TDP:Thermal Design Power、またはThermal Design Profileと呼ばれます)を使用するのか。TDPは、特にCPU(プロセッサ)やGPU(ビデオカード)などのコンポーネントの消費電力を示す基本的な指標としてよく使われます。TDP定格は、部品が使用できる最大発熱量をワットで表します。通常、特定の部品が負荷時にどれだけ熱くなる可能性があるかを示す良い指標となります。
    • 最適な性能を発揮するために、部品をどれだけ冷やすのが理想的か。
    • クーラー、ヒートスプレッダー、またはヒートシンクを設置するためのスペースがどのくらいあるか。小さなモジュール型のヒートシンクから大規模なものまで、さまざまなサイズのものがあります。
    • どのようなタイプのヒートシンクの設計やレイアウトが、システムの仕様に対して最高の熱性能をもたらすか。
    • アクティブヒートシンクとパッシブラジエーターのどちらが必要か
    • クーラーにかけられる費用

    ヒートシンクのブランド別一覧

    信頼できるヒートシンクメーカーは数多くあります。電子機器やPCのラジエーターモデルに特化した企業もあれば、工業デザインや機械の冷却をメインにした企業もあります。

    以下の表では、一般的なヒートシンクのブランドと、その用途やメリットをご紹介します。

    Heat Sinks by Brand table

    ヒートシンクの代表的な用途

    各種ヒートシンクの代表的な用途を以下の表に示します。

    Typical Applications of a Heat Sink Table

    よくある質問

    ヒートシンクはどのように取り付けるのですか?

    ヒートシンクのタイプ、メーカー、モデルにごとに個別の取り付け方法があります。ただし多くの場合、取り付け方法は似通っています。

    ほとんどの場合、クーラーのベースプレートを冷却するコンポーネントの表面にしっかりと取り付ける必要があります。これは通常、手動でのクランプやネジ止めによって行われます。スプリングクリップ、スプリングマウントリベット、ネジ、粘着テープなど、様々なモデルに対応したヒートシンク取り付け用のアクセサリーがあります。

    ほぼすべてのヒートシンク、特にコンピューターやマザーボードでの使用を目的としたヒートシンクには、部品とクーラーのヒートプレートの間にサーマルペーストを塗布する必要があります。

    サーマルペースト(TIMまたはサーマルグリースとも呼ばれる)は、2枚の金属プレート間の熱伝導を向上させる熱伝導物質です。2枚の金属板の表面のわずかな凹凸を埋めることで、全体の冷却性能を大幅に向上させます。時間が経つと乾燥してひび割れが発生するため、定期的に塗り直す必要があります。

    パワーアンプにヒートシンクを使用する理由とは?

    他の多くの電子機器と同様に、パワーアンプの能動素子(特にトランジスタ)は、電流を流すことで驚くほどの熱を発生します。PCの部品と同様に、これらの部品にも動作温度の制限があり、それを超えてしまうと破損や故障の原因となり、性能に大きな支障をきたしてしまいます。

    適切なヒートシンクを購入することで、デリケートな電子機器とそれを使う人を守り、デバイスから最高の結果を得ることができます。

    ラズベリーパイにヒートシンクは必要ですか?

    ラズベリーパイが設計された範囲内で使用していれば、通常は必要ありません。ラズベリーパイの最新モデルでは消費電力が若干増加していますが、ラズベリーパイに使用されているチップの大半(BCM2835など)はヒートシンクなしでも十分に機能するように作られています。

    とはいえ、99%の電子機器には追加の冷却が必要であり、密閉されたシステムの温度を下げることで性能が向上する可能性があります。負荷がかかっている状態のラズベリーパイの動作温度をチェックするために実行できるコマンドがあります。

    ヒートシンクの交換は自分でできますか?

    通常は可能です。コンピューターのメンテナンスではごく一般的です。特定のモデルのコンピューターのヒートシンクやクーラーを取り付けるために必要な説明書や手順をよく読んで理解していれば、ヒートシンクを目的の部品に取り付けることは難しくありません。

    ヒートシンクの交換方法がわからない、交換する必要があるのかどうかわからないという場合は、専門家に相談してみるのがよいでしょう。

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    下記の関連ガイドを読めば、製品をより深く理解できます。

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