検索キーワード履歴
    /
    有機ELディスプレイ付きスイッチとは?
     
      • 発行日 2023年7月21日
      • 最終変更日 2024年4月8日
    • 1

    有機ELディスプレイ付きスイッチとは?

    この記事では、有機ELディスプレイ付きスイッチの機能、原理、用途などを解説しています。有機ELディスプレイ付きスイッチの購入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

    取材協力:NKKスイッチズ株式会社

    有機ELとは

    —— 有機ELとは、電気を用いて有機物が発光する物理現象を引き起こす作用を指します。

    有機ELは英語で「organic electro-luminescence」と呼ばれており、organicとは有機物である炭素を含む化合物のことです。有機ELと無機物による発光の最大の違いは、自身で熱を発することなく光を放てること。有機発光ダイオードや発光ポリマーとしてディスプレイやLED照明に用いられており、最先端の照明技術として注目を集めています。

    有機ELの発光材料

    有機ELの発光材料は、大きく次の4つに分けられます。

    • 蛍光材料:光の三原色が揃う高耐久・高寿命の材料
    • 燐光材:効率よく発光する特徴があるが青色燐光材料は実用性に乏しい
    • 低分子材料:真空蒸着により薄くコンパクトなデバイスに使用できるが大型化は難しい
    • 高分子材料:単層・少数層の素子構造となるが印刷技術により応用化ができるとされる

    有機ELの材料ではさまざまな素材が試験されてきましたが、素子材料では低分子材料と高分子材料に分けられ、発光層は蛍光材料と燐光材料の2種類に分類されるため、発光材料は以上の4種類となります。

    有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違い

    ——有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違いについて、主な要素を4つ解説します。

    発光する部位が違う

    有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違いは、発光する部位の違いです。有機ELディスプレイとディスプレイはディスプレイを構成するピクセルひとつひとつが発光することに対し、液晶ディスプレイはディスプレイの後ろに配置されたバックライトにより発光しています。 つまり有機ELディスプレイはディスプレイ自体が発光しますが、液晶ディスプレイではディスプレイが光ることはなく、バックライトにより光るように見せていることが違いです。

    ディスプレイの薄さ

    有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイよりも薄型にすることができます。液晶ディスプレイはバックライトにより発光するため必ずバックライトを搭載しなければなりませんが、有機ELディスプレイではディスプレイのピクセル自体が発光することにより、バックライトを搭載する必要がありません。 そのため。有機ELディスプレイのほうがシンプルな作りになり、ディスプレイ自体の厚みを薄くすることができます。

    応答速度の速さ

    有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの違いとして、応答速度の速さも挙げられます。有機ELディスプレイはディスプレイ自体が発光するため、電圧をかけた瞬間に反応するという応答速度の速さが特徴のひとつです。 しかし液晶ディスプレイではバックライトの発光によりディスプレイが表示されるため、有機ELディスプレイより応答速度が遅く、動きのある映像では滑らかさが失われることがあります。発光する仕組みから、応答速度が異なることも両者の違いのひとつです。

    消費電力量の違い

    消費電力量も有機ELディスプレイと液晶ディスプレイで異なります。バックライトにより発光する液晶ディスプレイは、バックライトという光源が必要となるため消費電力量が多くなりがち。しかし有機ELディスプレイには光源が不要であることから、液晶ディスプレイよりも消費電力量が少なくなるという違いがあります。

    スイッチとサイン ~ スイッチが持つ機能 ~

    —— ランプが点くスイッチとかはよく見かけます。

    スイッチには回路のオンオフや信号の切り換えなどの基本機能のほかに、「何がどのような状態にあるかを表示する」という役目があります。例えば、電源スイッチはレバーなどのポジションによって機器が動作状態にあるか否かを示しています。その場合、スイッチだけでは表現できないので、パネルにONやOFF、切り換えスイッチであればINPUT A/INPUT Bなどと書いたりするわけです。工業計器などではスイッチのボタンに「主電源」ですとか「系統1ポンプ電源」などの表示を彫刻したりラベルを差し込んで使われたりします。また、工場の生産ラインなどではスイッチの開閉による機器やシステムの状態をより分かりやすく表示するためにはスイッチに連動した表示ランプやサイン灯が用いられますが、ラック搭載のパネル機器や操作卓ではスイッチ自体に状態表示機能を持たせた照光式スイッチがよく用いられています。また、スイッチの操作に連動して色と表示が変わるものなどもあります(図1)。

    図1:照光式スイッチの例 発光色に応じて表示が変わるもの(左)もある

    出典:NKKスイッチズ

    表示器がスイッチでスイッチが表示器 ~ スイッチとディスプレイの相乗効果 ~

    —— ラベルなどに対するメリットは何ですか?

    ディスプレイ付きスイッチは、スイッチに求められる表示機能をさらに一歩進めたもので、ディスプレイとしての性格をより強く持った複合部品です。押しボタンスイッチのボタン部分(キートップ)に小型のディスプレイが取り付けられています(図2)。

    図2:スイッチが表示器になる

     出典:NKKスイッチズ

    近年のディスプレイ性能の向上に合わせ表示能力が急速に高まり、単色の液晶や有機ELを使ったカラー表示のものもあります。(図3)。

    図3:ディスプレイ付きスイッチの製品例

     出典:NKKスイッチズ

    個性的な機能を活かす ~ 製品動向とアプリケーション ~

    — タッチパネルとは違うのですか?

    電子機器の機能が高度化・複雑化するに連れて、設定や操作法が細分化され、必要なスイッチの数が増えるいっぽうで、機器の小型化が進み、パネルに配置できるスイッチの数は制限される方向にあります。その結果、ひとつのスイッチに何通りもの機能を割り当てるといったことも必要になってきました。こうした要求を満たす手段のひとつがタッチパネルで、銀行のATMやFAのパネルコンピュータをはじめ、各所で使われています。しかしながら、タッチパネルは表示性には優れるものの大きな画面を必要とし、確実な操作感に欠けるため、使えるシーンには限りがあります。これを補うのがディスプレイ付きスイッチです。

    応用例としては、放送・音響機器、業務用調理器、食券などの発券機、ビルなどの防災や照明管理システム、交通管制システム、物流機器(倉庫管理)、金融システム、教育機器などが挙げられます。例えば、図4のような放送スタジオのコンソール / スイッチャーや、為替取引を行うディーリングマシンでは、大量のスイッチが並び、個々のスイッチが「何」のスイッチなのか、そのスイッチはどのような設定状態にあるのかを、瞬時に把握し操作する必要があります。その場合、ディスプレイ付きスイッチのように、スイッチ自身が明確な表示体であれば、操作の確実性が高まるわけです。

    さらに、機器の設定状態に合わせ、表示を随時変更することで、ひとつのスイッチに複数の機能を割り当てることが可能になり、スイッチ数を削減できます。また、オペレータの使用言語に合わせて表示を換えるといったこともできます。表示内容も、単にスイッチの機能だけでなく、ON AIR / 運転中などシステムの状態表示や、異常発生などの警報表示、さらに、カメラ画像の簡易モニタなどとしての利用法も考えられます。

    図4:スタジオコンソール(左)とディーリングマシン(右) 

     出典:NKKスイッチズ

    有機ELディスプレイのデメリット

    ——操作の確実性が高くさまざまな利用方法が考えられる有機ELディスプレイですが、デメリットもあります。

    ディスプレイが焼き付くことがある

    有機ELディスプレイでは、焼き付きが起きることがあります。焼き付きとは長時間に渡りディスプレイに同じ画面を映し続けた際に、ディスプレイに薄く画面の残像が残ることです。 焼き付きは液晶ディスプレイでも発生することがありますが、液晶ディスプレイの場合は電荷をゼロにすることにより解消できます。しかし有機ELディスプレイに発生した焼き付きは修復することができません。修復不可能な焼き付きが起きることがあることを考慮し、使用時にはスリープ機能を使用するなどの配慮が必要です。

    価格が高い傾向がある

    価格が高い傾向にあることも有機ELディスプレイのデメリットのひとつ。有機ELディスプレイは液晶ディスプレイに比べて製造コストが高いことが多く、製品価格にも製造コストの高さが反映されるためです。最近では価格が低くなりつつあるものの、まだ液晶ディスプレイよりも販売価格が高価な傾向にあります。

    劣化が早く寿命が短い

    有機ELディスプレイは劣化が早く寿命が短いとされています。劣化が早いとされる理由は、有機ELディスプレイでは素子自体が発光するため、素子が劣化して正常な色を表現しにくくなるためです。 ディスプレイが故障するわけではなく、白色か黄色みがかったように表現されたり、特定の色が表現されにくくなったりするのが有機ELディスプレイの劣化内容。そのため価格に反して劣化が早く、寿命が短いと感じられる可能性があります。

    スイッチ接点と表示部は独立 ~ 構造と設計 ~

    —— 中身はどんな仕組みになっているのですか?

    ディスプレイ付きスイッチは、小型の押しボタンスイッチの上にディスプレイユニットを載せたものと考えて差し支えありません。スイッチ部分とディスプレイは電気的に独立しており、別のアイテムとして扱えます。表示部の構成はタイプにより異なりますが、コントローラとメモリを内蔵し、データをメモリに取り込んで表示する仕組みになっています。

    機械的には、押しボタンの可動部とディスプレイは一体化されており、ボタンを押せばディスプレイも沈み込むようになっています(図5)。これはボタン位置によってディスプレイの視野が変わるのを避けるためです。

    図5:内部構造

    出典:NKKスイッチズ

    サポートツールで簡単作成 ~ 画像の作成と実装 ~

    —— 本格的ディスプレイだとすると設計が難しそうです。

    表示サイズは64×48ドットなど小さいので、画像データとして考えた場合に生成・転送する量はわずかです。インタフェースはSPIなど汎用のシリアルインタフェースを採用した製品もあり、マイコン等との接続も容易です(図6)。

    図6:表示データの転送 

    出典:NKKスイッチズ

    画像データの作成には、専用のツールがサポートされているので、これを利用すれば簡単です。デジタルカメラなどで撮影した画像を変換して取り込むこともできます。画像を連続して転送すれば、動画やアニメーションも可能です。実装に際してはディスプレイ部の耐熱性を考慮する必要がありますが、専用のソケットを使う手もあります(図7)。

    図7:画像作成ツール例 (右は専用ソケット)

    出典:NKKスイッチズ

    関連ページ