- 発行日 2023年2月20日
- 最終変更日 2025年11月11日
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ポテンショメーター完全ガイド|用途・仕組み・種類を徹底解説
ポテンショメーターの用途や仕組み、さまざまな種類や特性を解説しています。

ポテンショメーターとは?
ポテンショメーターの仕組みを理解するためには、まずその基本構造を押さえておく必要があります。ポテンショメーターは、可変抵抗器の一種です。受動部品に分類され、回路内の電気抵抗を制御するために設計されています。トリマポテンショメーターやロータリーポテンショメーターなど、さまざまな種類がありますが、基本原理は同じです。
ポテンショメーターは、入力電圧を異なる比率に変換して回路に出力します。この電圧の割合は、抵抗体上のワイパー(スライダーとも呼ばれる)の位置によって決まります。ここでは、ポテンショメーターを電圧レギュレータとして使用する仕組みを簡単に紹介します。
ほかにも、異なる抵抗値を導入したり、2つのセルの起電力(EMF)を比較したり、回路内の電力を調整するために用いられることがあります。この場合、用途によっては「レオスタット」と呼ばれます。
ポテンショメーターの代表的な用途としては、ラジオやステレオの音量調整が挙げられます。アナログ式のロータリーポテンショメーターが現在でも採用されており、デジタル化が進んだ現代でも多くの電子機器に使用されています。
また、ポテンショメーターは「バリメーター」や「ボリューム」と呼ばれることもあります。
ポテンショメーターの用途
ポテンショメーターは、産業用から民生用まで、幅広い機器に使用されています。代表的なポテンショメーターの用途としては、以下のようなものがあります。
- 機械式ロータリーエンコーダの簡易的な速度調整
- 電池同士の起電力比較
- 発振器など、さまざまなデバイスの電気特性の制御
- オーディオ機器の音量調整
- 抵抗値の調整。望ましくない変化を防ぐため、繰り返し再調整が可能
ポテンショメーターは、単に抵抗値を調整するための部品ではありません。例えば、極性変換器として使用することもできます。この用途では、2つの異なる直流電源に接続されます。ポテンショメーターの片側にはプラスとマイナスの端子が「+/−」のパターンで接続され、反対側にはその逆が接続されます。つまり、ゼロ点は中央位置となります。この機能を応用した例として、オーディオ機器のバランスコントロールが挙げられます。
加えて、ポテンショメーター(ボリューム)は、高精度な抵抗値が求められる調整機器にも適しています。
ポテンショメーターの仕組み
ポテンショメーターは、基本的に抵抗体・ワイパー・3本の端子という3つの主要部品から構成されています。3本の端子のうち2つは抵抗体と接続され、中央の1本はワイパー(摺動接点)として機能します。内部では、外側の2つの端子が抵抗体に配線されており、この抵抗体は通常、巻線タイプや導電性プラスチック、カーボン、サーメットなどの材料で作られます。
ワイパーは端子を介して抵抗体に接触し、ワイパーは摺動接点であり、位置を動かすことで回路を流れる電流を変化させます。機械式トリマポテンショメーターでは、この摺動を実現するためにロータリースイッチ、スライダー、またはネジ機構を用います。
分圧された電圧は3番目の端子に発生します。例えば、16Vを印加し、ポテンショメーターをプラス側に完全に回した場合、3番目の端子には全電圧が出力されます。一方で、ポテンショメーターをプラスとマイナスの中間位置に設定すると、3番目の端子には約8Vが出力され、電圧の半分となります。さらに、マイナス端子側に合わせた場合は出力電位がゼロになります。
なお、これらの特性は、直線的なテーパーを持つポテンショメーターに限定されるため、すべてのモデルに当てはまるわけではありません。

デジタルポテンショメーター
デジタルポテンショメーターは、電流の流れを制御するために電界効果トランジスタ(FET)を使用します。内部の抵抗は複数の独立した段階(ステップ)に分かれており、その数はトランジスタの構成によって決まります。アナログ式や機械式のポテンショメーターとは異なり、機械的な可動抵抗体を使用しません。
デジタルポテンショメーターは、アナログタイプに比べて多くの利点を備えています。例えば、手動でスライダーを調整する必要がなく、デジタル信号によって制御できます。揮発性タイプの製品では、電源を切断すると設定位置がリセットされる場合があります。
機械式と異なり、動作中にワイパー位置が変化することがなく、衝撃や振動に強いという特徴があります。さらに、デジタル式は、機器とプログラミング・インターフェースの両方にアクセスできるユーザーのみが設定を変更できるという利点もあります。

ポテンショメーターの記号
左の図は、回路図で使用されるポテンショメーターの標準シンボルを示しています。この記号は、通常の抵抗器記号にワイパー(矢印)を加えた構成になっています。ポテンショメーターには3つの端子があり、この矢印は3番目の端子、すなわち可動接点(ワイパー)を表しています。

ポテンショメーター図
一方、右の図は、回路内におけるポテンショメーターの機能的な役割を表しています。ワイパーの位置を変えることで、ポテンショメーターは可変分圧器として動作します。全入力電圧は抵抗体全体に印加され、回路図に示すように、出力電圧は固定接点と摺動接点の間の電圧差(電圧降下)によって決まります。
ポテンショメーターの種類
ポテンショメーターには、用途や使用環境に応じてさまざまなタイプがあります。例えば、産業用のヘビーデューティーモデルでは、150℃までの高温環境に耐えられる設計が求められることもあります。
以下に代表的なポテンショメーターの種類を紹介します。

リニアポテンショメーターは、制御部の回転やスライド操作によって、抵抗体上のワイパー位置が変化し、電圧が一定の割合で直線的に変化します。このタイプは、ディマースイッチやアナログ制御機器などによく使用されます。

ノブやスピンドルを回転させて制御するタイプで、単回転式と多回転式があります。音量調整など単純な操作には単回転式が、精密な設定が必要な用途には多回転式が用いられます。

ストリングポテンショメーター
動作量(位置や変位)を電気信号に変換するポテンショメーターで、「ストリングポット」とも呼ばれ、主に位置検出用途で使用されます。

対数ポテンショメーターは、電圧の変化が対数的に変化するように設計されています。人間の聴覚特性(音量の感じ方)が対数的であることため、オーディオ機器で減衰量を制御する用途に適しています。

「レオスタット」と「ポテンショメーター」は、いずれも可変抵抗器で、構造的には共通点があります。主な違いは端子の数で、レオスタットは2端子、ポテンショメーターは3端子構造を採用しています。

ワイパーを直線状のトラックに沿って滑らせ、抵抗値を連続的に変化させるタイプです。「フェーダーポテンショメーター」や「スライダーポテンショメーター」とも呼ばれ、ミキサーなどの音響機器で多く利用されています。

トリマポテンショメーターは、回路の校正や微調整に使用される小型タイプのポテンショメーターです。ドライバーで簡単に調整できるよう設計されており、また、必要に応じてプリント基板にマウントすることもできます。パネルマウント型の製品も一般的で、このバリエーションは、「半固定抵抗器」と呼ばれることもあります。
ポテンショメーターの値
ポテンショメーターの最大抵抗値を確認することは、最適な製品を選択する上で非常に重要です。抵抗値は製品シリーズや仕様によって大きく異なるため、用途に応じた範囲のものを選ぶ必要があります。
例えば、最大抵抗値1,000Ωまで必要な場合、100Ωまでしか対応しないデバイスは適していません。逆に、わずか10Ω単位で精密な調整を行う用途では、1,000Ωレンジのポテンショメーターは過剰性能となります。さらに、標準的なポテンショメーターはほとんどが0Ωから動作を開始する点も押さえておきましょう。
ポテンショメーターの特性
使用環境や目的に合わせて適切なポテンショメーターを選定することが重要です。主な検討項目には、設置条件、サイズ、端子形状や接続タイプなどが挙げられます。これらの要素はすべてが電気的性能に直結するわけではありませんが、操作性やメンテナンス性を大きく左右します。
さらに、調整機構の種類も選定のポイントです。機械式では、スライド式か回転式かを選択することになります。用途によっては、特定の形状やデザインを採用することで操作性が向上する場合もあります。
テーパー
テーパーには大きく分けて直線テーパーと対数テーパーの2種類があります。用途よって適切なタイプを選ぶことが大切です。
直線テーパー(リニアテーパー)を使用した場合、ワイパー位置と抵抗値の変化は比例関係にあります。ワイパーがトラックの中間位置にあるとき、抵抗値も全体の約半分になります。
一方、対数テーパーでは抵抗値の変化が一定ではなく、対数関数的に変動します。そのため、ワイパーが中間位置にあっても、抵抗値は全体の半分にはなりません。オーディオボリュームなど、人間の聴覚に合わせた出力特性が求められる場合に適しています。
ポテンショメーターの仕組みを理解すると、電圧制御や抵抗の変化など、基本動作の原理をより明確に捉えられます。
こうして得た知識は、ポテンショメーターの用途や種類を考えるうえで役立ちます。


