アルミ電解コンデンサ ガイド

取材協力:ニチコン株式会社

大容量コンデンサの定番
~コンデンサの原理と構造~

—— なぜ大容量にできるのですか?

アルミ電解コンデンサは、ローコストで入手性にも優れた大容量コンデンサの定番です。よく知られるように、コンデンサの静電容量は、対向する電極の面積と電極間に挟まれる誘電体の比誘電率に比例し、誘電体の厚さ(電極間の距離)に反比例します。表1に、コンデンサに使われる主な誘電体材料の誘電率と厚さを示しました。アルミ電解コンデンサでは、誘電体として酸化アルミニウムが使われます。この酸化膜は耐圧が高く実質的な厚みを極めて薄くできるうえ、箔表面をエッチングすることにより実効面積を見かけ上の面積を数十~数百倍にできるので、大きな静電容量を実現できるからです。

           
 表1:各種誘電体の誘電比率と厚み  
コンデンサの種類 誘電体 比誘電率 電体厚み(m)
アルミ電解コンデンサ 酸化アルミニウム 7~10  1.3×10-9~1.5×10-9 
タンタル電解コンデンサ 酸化タンタル 24 1.0×10-9~1.5×10-9
 フィルムコンデンサ(金属蒸着)   ポリエステルフィルム  3.2 0.5×10-6~2×10-6
磁器コンデンサ(高誘電率) チタン酸バリウム  500~20,000  2×10-6~3×10-6
磁器コンデンサ(温度補償用) 酸化チタン 15~250 2×10-6~3×10-6
       

この場合、酸化皮膜には整流性があるため、アルミ電解コンデンサは(電極にプラス・マイナスがある)有極性コンデンサとなります。なお、電解液に代えて導電性高分子などの固体電解質を用いた、「アルミ固体電解コンデンサ」もあります(図2)。

   
図2:アルミ電解コンデンサの原理
 

実製品の構造を図3に示しました。電極となるアルミニウム箔の間に電解紙を挾み(箔および電解紙共に2層となる)、これを巻き取って電解液を浸み込ませた構造をしています。
   
図3:アルミ電解コンデンサの製品構造
 

理想と現実
~ アルミ電解コンデンサの電気特性 ~

—— 小型大容量の理想コンデンサですね

アルミ電解コンデンサは小型大容量なので、電源の平滑、電源ラインのバイパスやデカップリング、低周波のカップリング(DCカット)など、電子機器内の多数の場所で汎用的に使われています。しかし、他のコンデンサに比べ、事前にその特性の理解を多く必要とするコンデンサであることも確かです。有極性であることなどはその典型ですが、他にも押さえておきたいパラメータがあります。基本的には図4に示した等価回路で考えるのが分かりやすいでしょう。この等価回路はアルミ電解コンデンサ特有の極性や、後述する再帰電圧などを加味しない簡易的なものですが、等価回路で他のコンデンサと比べると、r(等価並列抵抗:漏れ抵抗)とESR(等価直列抵抗)の影響が大きいです。

     

図4:等価回路

             


例えば、ESRですが、電解液はイオン伝導であり、電荷を伴うイオンの移動度が問題となるため低ESR化に限界があります。言い換えると、漏れ電流や直列抵抗分の影響を受け難い回路に使うのが得策です。さらに、耐圧に十分なマージンを見込むことや電源回路などリップル電流が大きい箇所で使用する場合は、リップル耐力の大きなものを選ぶことなどが求められます。また、アルミ電解コンデンサは大容量、つまり図4のCが大きいので、r、ESR、Lなどとの間で形成される時定数は基本的に大きくなります。これは使用できる周波数範囲が低く、高周波用途には不向きであることを意味します(図5)。同様に、並列抵抗(r)が他のコンデンサより小さいため、高精度の時定数回路には適しません。これらのパラメータは個々にバラツキがあるので、例えば複数のコンデンサを接続する場合は、分圧抵抗など電圧(電流)をバランスさせる配慮を必要とします。

     

図5:周波数特性例

       
     

メーカーでは、電源入力平滑用や制御回路用など、アプリケーションに最適化した特性を持つシリーズを揃えているので、コンデンサの選択に当たってはこれらの中から選ぶと良いでしょう。アルミ固体電解コンデンサは、通常の(電解液タイプ)電解コンデンサと比べ、ESRが小さく温度特性も良いという特長があります(図6)。

     

図6:導電性高分子タイプとのESR比較

       
     

ケミカル・デバイス
~ 電解コンデンサの温度と寿命 ~

—— 電解コンデンサではなくケミカルコンデンサと呼ぶ先輩がいます。

電解コンデンサは、ケミコンやケミカルコンデンサなどとも称されます。これは、電解コンデンサが紛れもなくケミカル(化学的)なデバイスであることを意味したものと言えます。

因みに、化学反応は温度に依存する部分が大きいので、電解コンデンサのパラメータは無視できない温度特性を持ちます。さらに、化学反応に伴って特性も変化します。例えば、内部の電解液は時間と共に蒸散して静電容量などの特性が劣化、やがて寿命を迎えます。電解コンデンサが有寿命デバイスであることは、他の電子デバイスと比べて際だった特徴です。つまり、電解コンデンサを使う場合は、寿命を設計に織り込む必要があります。寿命は個々の製品毎に明示されていますが、先に述べたとおり温度などの条件で大きく変わります(図7)。 

  
図7:寿命推定の例
    


一般に、化学反応速度の温度依存性はアレニウスの式に従うことが知られており、簡単には、「温度が10℃上昇する毎に寿命は半分になる」と解釈できます。したがって、周囲温度や内部温度上昇を抑えることは長寿命化の必須要件です。確実な寿命推定の際は、メーカーの指定する計算法等に従ってください。電解コンデンサで大きな充放電を繰り返すと、条件によっては容量の減少や内部でのガス発生などが起こる可能性がありますので、一般用の電解コンデンサを蓄電目的で使用することは避けてください。

安全確実
~ 電解コンデンサの実装上の注意点 ~

——リードやねじ、面実装など形態も様々ですね。

電解コンデンサの実装における注意点を幾つか挙げます。コンデンサのケースは、マイナス電極と接続されているように思われがちなのですが、実際には電位は保証されません。したがって、コンデンサが周囲の回路部分と接触しないように配置してください。同様に、外装スリーブも絶縁が保証されているわけではありません。

液漏れやガス放出に対する対策も必要です。電解コンデンサには電流による発熱、電解液の蒸発、電解液の電気分解によるガス発生などによって、内部の圧力が上昇した場合に備えて圧力(開放)弁が設けられています。圧力弁は、封口材の一部など部品下部、あるいはアルミニウムケースの上部などにあります。コンデンサの実装に際しては、弁の開放に備えて近傍(上または下)に空間を確保してください。下側に弁がある場合は、プリント板にガス抜き穴(または空間)を開けてください。また、漏れた電解液でパターンを汚染されることが考えられるので、コンデンサの封口部の下にはパターンを配置しないようにします。なお、ネジ端子形の封口部は上向きを原則とし、横に寝かせる場合には、圧力弁部を上側とするか、陽極端子を上側にします。

実装の注意とは少し違いますが、再起電圧への配慮があります。電解コンデンサでは、一度放電しても時間経過後に再び端子間に電圧が発生する、再起電圧という現象が起こります。再起電圧が危惧される場合は、1kΩ程度の抵抗器を通じて放電してください。なお、コンデンサには1/2×C×V^2のエネルギーが蓄えられます。高圧・大容量のコンデンサではエネルギーも大きくなるので、機器内部の点検などに際して、感電等取り扱いに十分な注意を忘れないでください。

アルミ電解コンデンサ 関連商品