デジタルポテンショメータ ガイド

取材協力:日本電産コパル電子株式会社

デジタル可変
~ 特長と用途 ~

—— 抵抗をデジタルで設定するメリットは何ですか?

デジタルポテンショメータは、アナログの可変抵抗器(トリマやボリウム)のワイパーをマイコンなどのデジタル信号で設定する部品です。全体がひとつのICとして構成されており、外観もICそのもので形状が小さいうえ複数の可変抵抗を内蔵したものなどもあります(図1)。可変に際して機械的な動作や摺動部が無いので長寿命で信頼性が高いという特長もあります。

使用上は可変抵抗器としてアナログ回路に用います。一般の可変抵抗器や半固定抵抗器と同様に、3端子で電圧調整に使ったり2端子で電流調整に使ったりできます。


図1:デジタルポテンショメータの製品例
      


機能面では、設定を人ではなくマイコンなどから行うことで、例えばオペアンプ回路に用いればアンプのゲイン(利得)やフィルタのバンド幅をプログラマブルにできます(図2)。

また、デジタルを入力してアナログを出力するわけですから、一種のD/A変換器と考えることもできますし、デジタルの制御をマイコンではなく押しボタンスイッチや簡単なロジックで行う方法もあります。具体的な用途としては、電子ボリウムとしてオーディオ機器の音量調節や液晶ディスプレイ(LCD)のコントラスト制御などが挙げられます。デジタル制御することで微妙なアナログ信号を外部に引き出さずに済むのはデジタルポテンショメータの大きなメリットです。

最近では、電子機器内部の調整用トリマ(半固定抵抗器)からの置き換えも盛んです。電子機器の製造段階における電気的な調整作業は、従来は人手に頼っていましたがDPに換えることで自動化が可能となり、コストダウンにつながるからです。デジタルポテンショメータであれば自己校正(電源投入時などにおける自動校正)もできるので測定器など機器の高精度化にも役立ちます。さらに、第三者が設定を変えることができないとから、セキュリティや信頼性の面でもメリットがあり、アミューズメント機器などにも応用されています。


図2:基本的な使われ方の例

 


図3にデジタルポテンショメータの内部構成を示します。アナログ部は、固定抵抗の直列アレイ(配列)になっていて、接続点をCMOSトランジスタのスイッチで切り換えることで可変抵抗器の働きをします。デジタル部はアップダウンカウンタとデコーダ、不揮発メモリ(EEPROM)、制御回路から成ります。外部信号によってカウンタの値を増減させ(または書き込み)、この値をデコードして対応するCMOSスイッチをオンさせることでデジタル制御を実現しています。カウンタの値は不揮発性のメモリに書き込まれるため設定は電源を切っても保持されます。(注:市場にはメモリ無しの品種もあります)

図3:内部構成
 

アナログ部品としてのデジタルポテンショメータ
~ スペックと注意点 ~

—— 通常の可変抵抗器と異なる部分はありますか?

デジタルポテンショメータの選択に際し、デジタルポテンショメータ特有の特性やスペック項目もありますが、デジタルポテンショメータの内部構成を知っておけば理解しやすいでしょう。まず、「全抵抗値」などは一般の可変抵抗器と同様な考え方ができます。一方、「温度係数」や「ワイパー抵抗」、「ワイパー電流」、「端子間容量」、「カットオフ周波数」などは通常の可変抵抗や半固定抵抗と意味合いは同じですが、値はいくぶん異なることに気づくと思います。これは、デジタルポテンショメータがICとして作られていることによるものです。抵抗体もシリコンのICプロセスによって作られており、ワイパー端子は内部でCMOSスイッチを経由しているため一般の可変抵抗とは特性が異なります(図4)。
温度係数やワイパー抵抗の影響を受けにくい回路構成で使うのがコツとも言えます。

     

図4:アナログ部の等価回路

             


デジタルポテンショメータ特有のスペック項目としては「分解能」があります。これは抵抗アレイの切り換え数で32~256が一般的です。アナログの分解能に比べて荒い気がするかもしれませんが、実際上多くのアプリケーションでは十分な値です。更なる高分解能を必要とする場合は例えば図5のように回路上の工夫で対処できます。

    

図5:高分解能化の例



 

分解能に付随する項目には「INL:積分直線性誤差」や「DNL:微分直線性誤差」などのリニアリティに関する項目があります。これらは理想的な制御特性との誤差を表すもので、D/Aコンバータと同じ考えが適用できます(図6)。

デジタルポテンショメータで注意しなければならない項目には「端子電圧」があります。デジタルポテンショメータでは抵抗をCMOSのスイッチでオンオフしているため、スイッチが半導体として動作する電圧の範囲内で使う必要があります。基本的にはデジタルポテンショメータの電源電圧を超える信号を扱うことはできません。

    

図6:DNL(左)とINL(右)

 

デジタル部品としてのデジタルポテンショメータ
~ デジタルの設計ポイント ~

—— デジタル制御は具体的にどのようにするのですか?

デジタルポテンショメータのデジタルインタフェースには複数の仕様が用意されています。具体的には、UP/DOWN、SPI(Serial Peripheral Interface)、2wire、3wireなどがあります。どれを選択するかは組み合わせるマイコンのインタフェースやI/Oポートの都合に合わせれば良いでしょう。


例えば、図7aはUP/DOWNです。CS(Chip Select/チップセレクト)をアクティブにしてU/D(UP/DOWN)で方向を決めれば、INC(Increment)に加えるクロックに同期して内部レジスタの値が1ずつ増減します。シンプルな方式なので電子機器の自動調整などに適しているほか、簡単なロジックによる制御も可能です。一方、図 7bはSPIの規格に準拠したインタフェースによるものです。この場合はレジスタの値、つまりポテンショメータのワイパー位置をマイコンへ読み出したりマイコンから書き込んだりできるので高度な制御にも対応できます。なお、多くの製品ではデジタルポテンショメータにアドレスを割り振ることが可能で、ひとつのインタフェースで複数のデジタルポテンショメータを制御できるようになっています。

デジタルポテンショメータをD/Aコンバータ的に連続変化させたい用途ではクロックの速度も関心事になります。製品にもよりますが、クロック周波数は400kHz~3MHz程度です。スペックで確認してください。

回路設計上では、デジタルポテンショメータはデジタルとアナログが混在していますから、混在に関する注意も必要です。例えば、デジタルとアナログのグランドは共通になっています。他でデジ/アナのグランドを分けている場合などは配慮が必要です。また、システムはロジック側が先に立ち上がって確定してからアナログの信号が加わるようにするのもポイントです。

 

図7:デジタルインタフェース  

     

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