ファンクションジェネレータ ガイド

取材協力:株式会社エヌエフ回路設計ブロック

信号の源
~ 計測と信号源 ~

—— どんなときに使うのですか?

アナログ系の電子回路には、例えば発振回路のように自発的に信号を発するものと、アンプのように外部から与えられた信号を受けて応答する受動的なものとがあります。A/Dコンバータやエンジンの回転検出といったセンサ応用機器なども後者です。外部信号に応答するタイプの回路や機器では、動作確認や特性評価の際に、本来の入力に代わる信号が必要となります。

このため、特定のアプリケーション専用や汎用など、何れも再現性に優れた計測・試験用の信号源が提供されています。計測用信号源、いわゆる「発振器」には、大別して無線機器などのテストに使う高周波用と、メカトロ機器やオーディオ帯の回路などを対象とした低周波用の2種類があります。ファンクションジェネレータは、超低周波帯からの発振が可能で、電気電子・機械・化学など幅広い分野において、低周波の実験・計測用信号源として、汎用的に用いられています(図1)。

                  
図1:ファンクションジェネレータの製品例 
  


波形を操る
~DDS方式 ~

—— ジェネレータを辞書で引くと「発電機」ですけれど。

低周波の測定や評価では、様々な「波形」の信号を必要とします。例えば、アンプの波形ひずみや周波数特性を知るには正弦波信号が必要ですし、過渡応答特性を見るには、方形波が便利です。直線性を測定する場合には、ランプ(直線上昇)波が使われます。これに対して、ファンクションジェネレータは様々な「波形」、即ち、時間の関数(Function)を自在に発生(Generate)できるのが大きな特長です。ファンクションジェネレータには、正弦波、方形波、三角波などのいくつもの基本波形が用意されていて、これにDCオフセット(直流電圧重畳)、トリガ/ゲート/バースト(何れも発振の停止/再開)、デューティ可変、スイープ(掃引)、さらに各種のアナログ変調などを施すことができ、これらを組み合わせることで様々な波形を生成可能です。

ファンクションジェネレータの内部はアナログ回路で構成されていた時代もありましたが、現在ではほとんどがDDS(Direct Digital Synthesizer:デジタル直接合成)と呼ばれるデジタル方式のものに置き換わっています。DDSの原理を図2に示しました。DDSは、安定で周波数確度が高く分解能も極めて高くできるほか、周波数の変更や出力のオンオフなどにおいても位相の連続性が保たれる、広範囲な周波数スイープ等が可能、メモリに書き込む波形データを変更することによって、オリジナルの波形でも出力できるといった特長があります。

      
図2:DDSの原理
            

*DDSは、波形ROM、位相アキュムレータ(加算器とラッチ)およびD/Aコンバータで構成される。アキュムレータはクロックに同期して周波数設定値[N]ずつ積算していくことで、周波数設定値に比例した速度で増大するデジタルデータを出力する。このデータは、出力波形の位相に相当し、波形ROMの読み出しアドレスになる。ROMの出力をD/Aコンバータでアナログ信号に変換すれば、設定した周波数・波形のアナログ信号が得られる。


様々な波形という意味で類似したものに、ARB(Arbitrary:任意波形発生器)がありますが、ARBが大容量のメモリに特定の信号をその都度書き込んで読み出すため、用途が限られ高価となるのに対して、DDSは比較的小容量のメモリに波形を書いておき、機能の組み合わせで応用的な波形を創り出せる自由度に優れ、ARBよりもローコストであることも含め、汎用信号源に適した方式です。



波形を読む眼力
~ 操作上の注意点 ~

—— 操作は難しくありませんか?

ファンクションジェネレータは、アナライザ(信号解析用測定器)と異なり、信号を出すというシンプルな機能の測定器ですので、設定や操作は簡単です。一定した連続信号を出力するのであれば、波形を選んで周波数と振幅を設定するだけで済みます。スイープやトリガなどは、連続信号に加工を加えるという手順を踏むと考えると、分かりやすいでしょう(図3)。

      
図3:基本的波形例
            

*(A)、(B)、(C)は正弦波、方形波、ランプ(三角)波の連続、(D)は正弦波のバースト、(E)は方形波のデューティ可変、(F)は方形波の立ち上がり/下がり可変で得られる信号波形


実際には、設定や操作よりも、むしろ出力した信号の認識や観測法を誤ることがあるようです。例えば、出力電圧を50Ω負荷で1Vp-p(peak-to-peak)に設定した場合、入力インピーダンスが高い回路に接続したときの出力は、1Vではなく2Vp-pになります(図4)。さらに、正弦波出力の場合 1Vp-pは実効値で0.35Vrms(=Vp-p÷(2√2))になりますが、正弦波以外ではこの関係は成立しません。なお、DCオフセットする場合は波形のピークとオフセットを加えた値が最大出力電圧を超えることはできません。正弦波以外では波形に多くの高調波成分が含まれますので波形確認の際には測定器の周波数帯域が高調波をカバーすることを確認してください。

      
図4:振幅の表現と単位

            


周波数帯域が不足していると、実際に出力されている波形が鈍ったりゆがんでいるように見えてしまいます。周波数が高い場合には、インピーダンスマッチングも必須です。その際の終端は負荷端で行います。いっぽう、低周波の方形波等をモニタする際に、うっかりしてオシロスコープをACカップルにすると、波形にサグ(平坦部が斜めになる)が出てしまいます。何れも初歩的な事柄なのですが、ファンクションジェネレータ、あるいはオシロスコープの表示だけを過信することで起こしやすいミスでもあります。


アイデア次第
~ 応用機能 ~

—— 多機能なので色々に応用できそうです。

最近のファンクションジェネレータは高機能化が進み、かなり複雑な波形も出力できます。DDSでは任意の波形を基本波形として扱えるので、例えば心電波形を書き込んでおいて、ゲート発振させるといったことも可能です。

図5は、予め内蔵されている波形を使った応用例です。(A)は周波数スイープとゲート機能を組み合わせたもの、(B)は方形波のトリガ発振に発振停止レベル設定を加えて3値のデジタル信号を生成したものです。(C)は2チャネル出力のファンクションジェネレータで相互の出力が逆相となるようにしたときの波形で、両者の出力間から出力を得れば2倍の出力電圧が得られ、出力がフローティング(グラウンドから絶縁)されたファンクションジェネレータであれば、片側が接地された負荷にも接続できます。

(D)は任意波形で作った信号のように見えるかもしれませんが、波形の各部分は内蔵波形で構成されており、それぞれの波形や周波数・振幅・持続時間などを予め本体内にプログラムしておき、順次実行していく「シーケンス機能」を使って出力した信号の例です。シーケンス機能は、機器の振動試験や回路の電源変動試験用の信号生成などに便利です。

                  
図5:応用波形例  



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