ソレノイド ガイド

ヘンな名前
~ソレノイドの原理~

—— そもそもソレノイドってコイルのことじゃないんですか?

ソレノイドというのは、電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品のことを指します。機構エンジニアの方には「プランジャ*1を電気で動かす部品」、回路エンジニアの方には「コイルに電流を流して鉄芯を動かす部品」あるいは「電気接点を持たないリレー*2」みたいなものだと思っていただくと分かりやすいかもしれません。

具体的には、銅線を巻いたコイルの中で可動式のピンが動く仕組みになっています。基本構造は電磁石と同じです(図1)。

ソレノイド(solenoid)という名はギリシャ語のsolen(筒、筒状の)に由来すると言われています。電気の分野では銅線をぐるぐると巻いたものを一般にコイルと呼んでいるわけですが、ほかにもインダクタとかリアクタなどと呼ぶ場合もあり、おっしゃるようにソレノイドと称することもあるため通じないこともあるようです。ソレノイドという言葉自体には機構的な意味を含まないので分かりにくいのですが、メカトロニクスの世界では、ソレノイドと言えば巻線部を含めた電磁機能部品そのものを意味します。

*1:プランジャ(plunger:往復運動する機構部品)
*2:リレー(relay:電気信号でオンオフするスイッチ 継電器)

     

図1:ソレノイドの原理

何に使うの
~ソレノイドの用途と種類 ~

—— 何を基準に選べばよいのか分かりません。

使う目的によって色々な種類がありますので、品番を探す以前にそれらを知っておく必要があります。ソレノイドは家電品からOA機器、FA機器、金融端末、電子錠など多くの用途で使用されています。例えば、自販機で釣り銭の硬貨を出す場合に、積み重なった硬貨を電気信号によって一枚ずつはじき出す機構が必要になりますよね、そこにソレノイドが使われています。車などにもたくさん積まれています。

当然のことですが、用途が違えば形やサイズ、プランジャのストロークや力の大きさも異なります。プランジャ(ピン)の先端形状も様々なものがあります。

一般の小型ソレノイドの種類を動作形態で分けるとすると、基本になるのはプル型です。プル(Pull:引く)型は文字通り通電することで可動部が引き込まれるタイプのことを言います。電磁石の性質として、通電(電流を流す)によって鉄芯が磁界内に引き込まれるからです。用途によっては通電時にプランジャが飛び出す方が便利なことがあるので巻線の反対側まで可動部の中心を伸ばして飛び出るようにしたプッシュ(push:押し出す)タイプのものもよく使われます。応用的な動作形態のものとしては、通電によってピンが回転するロータリタイプ、リレーのようにヒンジ*3が上下するフラッパータイプなどがあります。

ひとつ注意したいのは、多くのソレノイドは、内部にスプリングなどの復帰機構を持っていないという点です。したがって、例えば通電によって引き込まれたピンは外部にそれを引き戻す機構が必要です。また、通常のものは通電によって引き込まれた(あるいは押し出された)ピンは、電流を切れば保持力を失います。引き込んだ(押し出た)状態を維持するには通電し続ける必要があるわけですが、内部に永久磁石を組み込むことでラッチ*4機能を持たせたものもあります。

ソレノイドの選択に当たっては、これらの種類から使用目的に相応しいものを決めた上で、形状などの機械的要素から品種を選んでいくことになります。ソレノイドは磁界によってピンを動かしているので、原理上、ピンが巻線部から離れるにしたがって(磁界が弱くなるため)駆動力が弱くなることも憶えておいてください。

*3:ヒンジ(hinge:蝶番[ちょうつがい]状の可動機構)
*4:ラッチ(latch:自己保持機能 この機能を持ったソレノイドは駆動法が他と異なる)

         
図2:ソレノイドの実例
押し出し用のプッシュピン 細長いシリンダタイプ
                 

ソレノイドが動かない
~ 使用上の注意 ~

—— 電圧を加えれば、すぐに動くんですよね?

ソレノイドには、直流で駆動するもの、パルス信号で動かすもの、正弦波交流で駆動するものがあります。一般には直流で駆動するものが使われていますが、交直両用のものもあります。何れにせよ指定された駆動方式以外では使えません。仕様書で指定された定格電圧を加えれば動作するのはもちろんです。ただし、流れる電流とそれに伴う作用については設計上十分な配慮が必要です。ソレノイドは、半導体など一般の電子部品に比べて大きな電流が流れます。したがって、駆動回路には十分な電流供給能力があることが前提になります。

次に、電流が流れることでソレノイド自身が発熱します。加えた電圧×流れた電流=消費電力 即ち発熱量です。したがってソレノイドが過熱しない範囲で使うことが肝要です。例えば、通電し続けて使えば温度上昇は大きなものになりますが、一時的に動作(間欠動作)させるのであれば温度上昇は僅かで済みます。ちなみに、全時間に対する通電時間の割合を「通電率」と呼びます。先に述べたラッチタイプは通電率が大きい場合に有利ということになります。

ソレノイドでは発熱に伴って駆動力が低下します。温度の上昇→巻線の抵抗値増加→流れる電流減少→磁力低下→駆動力低下という連鎖の結果によるものです。このことを考慮しないと、始め(低温時)は動くけれども使っているうちに動かなくなるというトラブルを招きます。仕様書には個々のソレノイドについて電圧と電流、通電率、温度上昇、ストロークなどに関するデータが記載されているのでそれらを元にして最終的な機種選択と駆動回路設計をします。

      
図3:特性図の例  


駆動に関しては、さらに逆起電力に対する配慮も必要です。ソレノイドの駆動コイルは電流をオフした際にそれまでの電流を維持しようとして逆起電力を発生します。オンするときではなくオフするときです。オンの時に大きな突入電流が流れることはありません。ソレノイドはメカニカルなスイッチによってオンオフさせることが多いのですが、最近ではデジタル回路からの制御信号による半導体スイッチで制御する例も増えています。この場合、ソレノイドの逆起電力によって半導体スイッチが破損してしまうことがあり、これを防ぐためには、巻線に並列に保護用のダイオードを入れるなどの対策が必要です(図4)。

なお、逆起電力がノイズとなって他の電子機器に影響を与えることも考えられるので、配線の引き回しなどにも気を配る必要があります。

       
図4:逆起電力からの保護

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