- 発行日 2023年6月1日
- 最終変更日 2025年11月6日
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コンデンサの仕組みを基礎から解説|種類・記号表示・動作原理まで紹介
コンデンサの仕組みや働きを基礎からわかりやすく解説します。

この記事では、コンデンサがどのように電気を蓄え、放出するのかといった基本原理から、図面や回路図で使われる記号表示の読み方、E系列と呼ばれる標準数や許容差の考え方、そして静電容量とインピーダンスの関係までを順を追って説明します。
また、用途ごとのコンデンサの種類もまとめて紹介しています。購入を検討している方や、これから電子回路を学び始める方は、ぜひ参考にしてみてください。
コンデンサとは
コンデンサの働き
コンデンサの働きは、単に電気を蓄えたり放出したりするだけではありません。 主な役割には、次のようなものがあります。
- 電圧を安定させる
- 直流電流を遮断する(絶縁する)
- 信号を取り出す
- ノイズを除去する
コンデンサの基本的な働きである電気の蓄積と放出は、電圧の変化を吸収し、電圧を安定させる役割を果たします。ただし、この蓄積と放出を行うのは交流電気に限られ、直流電気は通さず絶縁されます。そのため、直流電気に対しては絶縁体として利用できるほか、交流電気のみを通す性質を活用して信号の取り出しにも用いられます。また、周波数の違いを利用して、信号を分離し、必要な信号成分だけを取り出すことも可能です。 さらに、電気が流れる際に発生するノイズを除去するのも、コンデンサの重要な働きの一つです。分岐回路を設けて抵抗のない回路を作ることで、交流成分であるノイズがコンデンサ側に流れ込み、ノイズ除去の効果が得られます。 このように、コンデンサは電圧や電流を安定させるために多様な役割を担う、電子回路における重要な部品です。
コンデンサの仕組み
コンデンサはどのような仕組みで動作しているのでしょうか。まずは基本となる構造から確認していきましょう。
コンデンサの基本的な構造
コンデンサは、絶縁体(誘電体)を2枚の金属板で挟んだ三層構造をしています。2枚の金属板は電極として機能し、間に挟まれた絶縁体にはポリエチレン、ポリプロピレン、セラミック、または電解液を吸収した紙など、誘電率の高い材料が使用されます。
この絶縁体(誘電体)は、静電容量を大きくするために設けられています。つまり、コンデンサは絶縁体を金属板(電極)で挟んだ、非常にシンプルな構造の電子部品です。
コンデンサが蓄電する仕組み
コンデンサの中でも重要な「電気を蓄える仕組み」は、電極間で電荷のバランスを保ちながら成立しています。電極同士の間に絶縁体(誘電体)があるため、電流は直接流れません。しかし、コンデンサを電源に接続すると、電圧に応じて一方の電極にプラスの電荷が、もう一方にマイナスの電荷が蓄えられます。
このとき、交流電圧が加わると電極間でプラスとマイナスの電荷が交互に帯電し、その結果、電荷の移動が繰り返されてエネルギーが蓄えられます。また、電極間に絶縁体を挟むことで、より多くの電荷を蓄積できるようになります。
このように、コンデンサは「交流電気のみを通す性質」と、「電極間に絶縁体を挟む構造」という二つの特徴によって、電気エネルギーを効率的に蓄える仕組みになっています。
電圧と電流の関係がつくる、蓄電と放電のしくみ
コンデンサに流れる電流の大きさは、電圧の変化に応じて変動します。充電時には、コンデンサにかかる電圧が高くなるにつれて電流は次第に小さくなり、電圧が一定値に達すると電流は流れなくなり、充電が完了します。
一方、放電時には、コンデンサの電圧が低下するのに伴って電流も減少し、最終的に電圧がゼロになると放電が終了します。
このように、コンデンサは電流の大きさが電圧の変動に応じて変化する特性を利用し、「蓄電」と「放電」という二つの基本動作を通して、電気エネルギーを効率的に蓄える仕組みになっています。
コンデンサのインピーダンスと周波数の関係
コンデンサのインピーダンスは、電気信号の周波数によって変化します。低周波数の領域では、静電容量(キャパシタンス)がインピーダンスを決定し、高周波数の領域では、等価直列インダクタンス(ESL)の影響が大きくなります。また、自己共振周波数付近では等価直列抵抗(ESR)がインピーダンスに最も大きく影響します。
ノイズを抑える目的でコンデンサを使用する場合、このインピーダンス特性がノイズ除去性能を左右します。そのため、ノイズの周波数とコンデンサの自己共振周波数との位置関係、さらに等価直列抵抗(ESR)の値が小さいことを考慮することが重要です。 このように、コンデンサのインピーダンスは周波数の変化に応じて変わる性質を持っており、この特性を理解することで、より効果的なノイズ対策や回路設計が可能になります。
静電容量値を文字と数字で表す記号表示方法
一般的なコンデンサの静電容量値は、JIS C 60063(抵抗器及びコンデンサの標準数列)と、それに対応する国際規格 IEC 60063に基づいて定められています。
この規格では、E系列(E-series)と呼ばれる標準数の考え方が採用されており、それぞれに許容差(誤差の範囲)が設定されています。これにより、メーカーや製品が異なっても、容量値の基準が共通化されています。
コンデンサの値
コンデンサの容量値は、部品や回路図上で略数字(コード)として表記されるのが一般的です。この略数字は、E系列で定められた値をもとに、有効数字と指数の組み合わせで示されます。
例えば、「104」は「10 × 10⁴ pF」すなわち 0.1μF を意味します。
このように、略数字を読むことで容量値を簡単に把握できます。

コンデンサの静電容量の単位
コンデンサの静電容量を表す単位には、「pF(ピコファラド)」や「μF(マイクロファラド)」がよく使われます。
「p(ピコ)」や「μ(マイクロ)」は、それぞれ10の累乗を示す接頭語であり、基本単位である「F(ファラド)」を補助するためのものです。そのため、単位が異なっていても、数値を換算すれば同じ静電容量を示す場合があります。これらの単位や表記は、JISやIECが定める標準数列にも対応しています。


コンデンサの標準数列
コンデンサの静電容量値は、JIS C 60063および、対応する国際規格 IEC 60063によって、E系列(E-series)と呼ばれる標準数と、その許容差が定められています。E12系列では±10%、E24系列では±5%の許容差が一般的です。
このE系列は、抵抗器にも共通して使用されており、製品の種類や容量値の刻み幅を統一的に管理するための基準となっています。
主なコンデンサの種類



