• 発行日 2023年7月21日
    • 最終変更日 2025年3月3日
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バリスタ ガイド

静電気を吸収するチップバリスタ

チップバリスタとは?

コンデンサとツェナダイオードの特性を併せもつ

静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)による誤動作を防止する対策部品には次のようなものがあります。

  • チップコンデンサ
  • ツェナダイオード
  • チップバリスタ

チップコンデンサは、高周波での低インピーダンス特性によって静電気をグラウンドなどに逃がします。チップバリスタとツェナダイオードは、印加電圧と抵抗値の非線形な特性を利用して静電気をグラウンドなどに逃がします。

写真1:チップバリスタの例 

チップバリスタの例

写真1にチップバリスタの外観を、図1にチップバリスタの電圧-電流特性を示します。チップバリスタの端子間に定格電圧以上の電圧が加わると、端子間の抵抗値は、数~数十Ωに低下します。これはツェナダイオードと同様の特性です。

バリスタの印加電圧と抵抗値の変化

一方、端子間の電圧が定格電圧以下のときは、端子間の抵抗値が、約2MΩ以上の高い値になります。この時の端子間には、数十~数千pFの静電容量があります。このように、チップバリスタは、コンデンサとツェナダイオードの特性を併せもっており、図2に示すような等価回路で表すことができます。

図2:バリスタはコンデンサとツェナダイオードの特性を併せもつ

バリスタはコンデンサとツェナダイオードの特性を併せもつ

図3に、チップバリスタの構造を示します。積層タイプのチップコンデンサと同様、内部電極が積層されています。

図3:チップバリスタの構造

チップバリスタの構造

ツェナーダイオードからの切替えのメリット

静電気吸収能力を持つチップバリスタはツェナーダイオードからの切り替えにも用いられますが、切り替えることのメリットは次のとおりです。

ツェナーダイオードと同等のサージ耐量であること

チップバリスタはツェナーダイオードと同等のサージ耐量を誇ります。今まではチップバリスタのほうが繰り返す静電気吸収に強いというイメージが持たれていましたが、最近ではツェナーダイオードと同等のサージ耐量を誇るチップバリスタも提供されてきています。そのため、サージ耐量を気にすることなくツェナーダイオードから切り替えることが可能です。

チップバリスタのほうが小型化・低コスト化しやすい

ツェナーダイオードからチップバリスタに切り替えると、小型化と低コスト化がしやすいというメリットがあります。最近では電気自動車の普及により、車載用ECUとして使用できるような小型・低コストのチップバリスタが増えてきました。製品によっては従来品より実装面積や重量を大幅に縮小し、小型化・低コスト化を目指しているものもあるため、できる限り設置スペースとコストを抑えた静電気吸収部品を用いたいというニーズに応えます。

チップバリスタが静電気を逃がす様子を実験で確認する

チップバリスタが静電気を吸収する様子を、実験で確認してみました。実験に使った静電気の波形(図4)は、IEC61000-4-2に規定されているものです。波形の立ち上がり時間が1ns以下、ピーク電流が7.5Aのとても鋭い波形です。

IEC61000-4-2は、エネルギー蓄積容量と放電抵抗の組み合わせで、さまざまなモデルを規定しています。人体の持つ代表的な容量値は150pF、抵抗値は330Ωです。これを、人体モデル(human body model)と呼んでいます。

図4:実験に使う静電気の波形

実験に使う静電気の波形

50Ωの抵抗に静電気を加えた時の、負荷の両端に生じる電圧波形を、図5に示します。図5(b)では、ESDガンから放出された電流がすべて負荷に流れ込むため、ピークで約320Vの電圧が生じています。

図5: チップバリスタがないときの静電パルス波形

図6に示すように、チップバリスタを追加すると、ESDガンからの電流は、負荷だけでなくチップバリスタにも流れ込み、静電気パルスは大きく抑圧されます。

図6: チップバリスタの静電抑圧効果

静電気の侵入口の近くにチップバリスタを実装する

図7に示すように、チップバリスタは、静電気が侵入するコネクタの近くに実装します。チップバリスタは、IEC61000-4-2に規定されたレベル以下なら、素子自体が破壊することはありません。しかし、静電気と比較して長い時間過電流が流れるサージ電流を吸収するとショートモードで破壊します。

 図7:チップバリスタの実装例

チップバリスタの実装例

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