- 発行日 2023年12月21日
- 最終変更日 2025年7月29日
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【2025年版】フリップフロップ回路ガイド:種類・動作原理から最新市場動向まで
デジタル回路の基礎であるフリップフロップ回路は、メモリ素子としての役割を担い、CPUや通信機器、IoT機器など幅広い分野で不可欠です。本記事では、フリップフロップ回路の基本構造と種類を分かりやすく解説し、2025年の最新市場データや技術動向も含めて最新情報をお届けします。

フリップフロップ回路とは?基本構造と役割
フリップフロップ回路は、デジタルエレクトロニクスの中核をなす順序回路の一種で、1ビットの情報を安定的に記憶し保持する機能を持つ記憶素子です。単なる論理回路が入力信号に応じて即座に出力を決めるのに対し、フリップフロップ回路は過去の入力状態を保持し続けるため、デジタルシステムにおけるメモリや制御の基盤として欠かせません。
具体的には、フリップフロップ回路は「セット(Set)」と「リセット(Reset)」の2つの状態を持ち、これらが切り替わることで出力が変化します。出力は2つあり、一方が“1”ならもう一方は必ず“0”となるシーソーのような対称的な挙動を示します。このため「flip-flop(フリップフロップ)」という名称は、出力がパタッと反転して変わる様子から由来しています。
また、フリップフロップ回路はクロック信号と同期して動作することで、複雑なタイミング制御やシーケンシャル処理を可能にしています。つまり、信号の変化がクロックの立ち上がりや立ち下がりに厳密に対応し、一貫した動作タイミングを維持します。これにより、CPUのレジスタやキャッシュ、デジタル通信のシーケンサーなど、多くの電子機器の中で重要な役割を果たしています。
さらに、フリップフロップは静的RAM(SRAM)の基本構成素子としても活用されており、高速動作と省電力という特性を活かして、近年のAIチップやIoT機器のメモリ設計で欠かせない存在です。
なお、電源が切れると記憶状態は失われる揮発性素子であるため、長期間のデータ保存には別途不揮発性メモリが用いられますが、瞬時の情報保持と高速切替には最適な回路構造です。
このように、フリップフロップ回路はデジタル回路の「記憶」と「同期」を一手に担う基本中の基本の回路であり、現代の電子機器を支える技術の柱の一つです。
フロップフリップ回路の種類
フリップフロップの主な種類と特長は以下の通りです。
- RS型 : 最も基本的なセット・リセット機能。単純なメモリとして利用。
- D型 : クロック同期型。データの遅延や同期に最適。
- JK型 : RS型の禁止状態を解消し、トグル動作も可能。
- T型 : トグル(反転)動作に特化。カウンタ回路で多用される。
各種フリップフロップは、用途に応じて選択され、デジタル回路設計の基本ブロックとして幅広く使われています。
RSフリップフロップ(Reset-Set)
概要 RSフリップフロップは最も基本的なフリップフロップ回路で、「セット(S)」と「リセット(R)」2つの入力端子を持ちます。Sに“1”が入力されると出力Qは“1”にセットされ、Rに“1”が入力されるとQは“0”にリセットされます。SもRも“0”の場合は直前の状態を保持します。
構造 主に2つのNORゲート(またはNANDゲート)で構成される自己保持回路です。
注意点 同時にS=1かつR=1の入力は禁止(禁止状態)で、この入力は出力を不安定な状態にし、回路の誤動作を引き起こします。
用途
- スイッチのチャタリング対策
- 簡易な記憶素子や制御回路
- 安定的なフラグ管理など
Dフリップフロップ(Data or Delay Flip-Flop)
概要 Dフリップフロップはデータ入力端子「D」とクロック入力端子「CLK」を備え、クロックの特定エッジ(立ち上がりまたは立ち下がり)でDの値を取り込み、保持します。これにより、クロック同期型のメモリ素子として動作し、信号の同期と安定化を実現します。
構造 ゲート型(レベルトリガ型)とエッジトリガ型の2種類があり、一般的にはエッジトリガ型が用いられます。
特徴
- クロックの立ち上がり(または立ち下がり)でのみDの値を更新
- グリッチ(誤信号)やタイミングの乱れを抑制し、安定した信号伝達を実現
用途
- CPU内部のレジスタやパイプライン段
- 周波数分周回路(DをフィードバックしてCLKの半分の周波数を生成)
- 高速で安定したタイミング制御が必要なデジタル回路
JK型フリップフロップ回路
JK型フリップフロップとは、「J」と「K」の二つの入力端子に加え、RS型と同じように「R」と「S」の二つの入力端子を有しています。「J」と「K」の一方を「1」にし、もう一方を「0」にしたとき、それぞれの出力が「1」と「0」になり、その逆の場合は「0」と「1」になるように動作します。
JK型フリップフロップの特徴は、RS型フリップフロップにおける「禁止入力」を、「出力が切り替わる(反転)」よう機能が変更されている点です。
JK型フリップフロップでは「J」=「K」=「1」とした場合、出力が切り替わる(反転)という動作をします。 T型フリップフロップ回路 T型フリップフロップ回路は、入力端子「T]と出力端子「Q」、「Q#」を備えており、その端子に「1」が入力されるたびに、出力が反転する特性を持つ回路です。入力があるたびに出力が反転する動作を表す「Toggle」の頭文字が回路の名前の由来となっています。
「T」=「1」が入力されるたびに「Q」、「Q#」の「0」、「1」を反転させる特徴を持っています。また、「0」が入力された場合は、「Q」の出力はそのまま保持され、「Q#」には「Q」を反転した信号が出力されます。
T型フリップフロップ回路
T型フリップフロップ回路は、入力端子「T]と出力端子「Q」、「Q#」を備えており、その端子に「1」が入力されるたびに、出力が反転する特性を持つ回路です。入力があるたびに出力が反転する動作を表す「Toggle」の頭文字が回路の名前の由来となっています。
「T」=「1」が入力されるたびに「Q」、「Q#」の「0」、「1」を反転させる特徴を持っています。また、「0」が入力された場合は、「Q」の出力はそのまま保持され、「Q#」には「Q」を反転した信号が出力されます。
フリップフロップの同期
フリップフロップの操作中、一度に複数の入力値が変更される際、時間差が原因で一時的に不適切な値が出力される可能性があります。たとえば、JKフリップフロップで、入力が(1、1)から(0、0)に移行する場合は、2つの信号が時間差をもって変化すれば、一瞬だけ(1、0)または(0、1)に対応する値が出力信号線に出現する可能性があります。
これらの値が次の段階の回路に転送されると、全体の回路動作に誤りが生じる恐れがあるため、信号の変化タイミングを適切に制御する必要性があります。
その解決法として広く行われているのは、全体の回路へ周期的に一定のパルス波形を提供し、それぞれの部分がパルス波形の変動に応じて動作するようにする方法です。このタイミングを決めるパルス波形は「クロック波形」または「クロック信号」と呼ばれています。
おすすめのフリップフロップ回路メーカー・ブランド
2025年のフリップフロップ市場の最新動向
市場規模と成長率
RSフリップフロップ市場は2022年に約12億ドル規模で、2030年までに24億ドルに達すると予測され、2024年から2030年の年間成長率(CAGR)は約9.5%と高い成長を示しています[^2]。他の調査ではCAGRが6.4%〜13%の幅で報告されており、用途拡大に伴い堅調な成長が期待されています。
ロジック半導体市場における位置づけ
ロジック半導体全体では2025年に約2,983億ドル、2032年には6,761億ドルに達する見込みで、その中でもフリップフロップICは最大の市場シェアを占める重要分野です。CPUや通信システム、メモリデバイスの高速化・省電力化を支えています。
用途別の成長分野
特にヘルスケア機器分野での需要が急増しており、ウェアラブルデバイスや遠隔医療機器向けの低消費電力・高信頼性ロジック回路として注目されています[^5]。
地域別動向
アジア太平洋地域は製造拠点の集中により最大シェアを占め、中国、台湾、韓国が主要プレーヤーです。北米は高性能プロセッサやAIチップの開発が進み、最も高い成長率を示しています[5][6]。
フリップフロップ回路の最新技術トレンド
省電力・高集積化
AIやIoT機器の普及に伴い、低消費電力で高速なフリップフロップ回路が求められています。これにより、エネルギー効率の高い電子機器開発が加速しています。
信頼性向上
宇宙用途や自動車向けの高信頼性半導体では、ソフトエラー耐性や自己診断機能(BIST)を備えたフリップフロップ回路が開発されています。
3D集積・チップレット技術
フリップフロップICを含むロジック半導体は、3D積層やチップレット構造での高密度実装が進み、性能向上とコスト削減を両立しています。
フリップフロップ回路のまとめ
フリップフロップ回路とは、論理回路の最も基本的な形式で、二つの状態を保持できる特性を持つものです。フリップフロップという表現は「パタッと切り替わる」といった意味の擬態語で、出力値が反転する様子がまるでシーソーのようだということから名付けられました。
これは過去の入力情報を現在の入力情報と共に利用する順序回路の一部で、1ビットのデータを保持する記憶回路として用いられます。しかし、これは電源が切れると状態が失われる揮発性の要素であり、永続的なデータの保存には適していません。
基本的な論理回路の一つであるRSフリップフロップ回路は、R(リセット)、S(セット)の二つの入力とQとその反転Qの二つの出力で構成されています。内部では、「R」と「S」それぞれにNOR回路またはNOT回路とNAND回路が組み合わされて接続されており、「R」あるいは「S」が入力されると、「Q」と「Q#」(Qの反転した信号)が出力されます。
「R」と「S」の入力が「R」=0、「S」=1の場合、出力は(0,1)となり、「R」=1、「S」=0の場合は同様に(1,0)となります。つまり、「Q」と「Q#」は必ず互いの逆の値になります。入力がどちらも0の場合は、最後に変更された状態が保持されるため、これを記憶素子として使用することが可能です。「Q」の出力を変えたいときにだけ「R」や「S」に値をセットします。
フリップフロップ回路はTTL ICとしてよく知られていますがこれをを多く並べて作ったメモリ装置はSRAM(Static RAM:スタティックRAM)と呼ばれ、DRAMに比べてリフレッシュ操作が不要で高速に動作するメリットがあります。SRAMはCPU内部でデータを保持するレジスタやキャッシュメモリなどに利用されています。
フリップフロップ回路はデジタル回路の中核を担う重要素子であり、2025年現在も市場は堅調に成長しています。最新の省電力技術や高信頼性設計、3D集積技術の進展により、今後も多様な分野での需要拡大が見込まれます。基礎知識から最新市場動向まで押さえ、用途に応じた最適なフリップフロップ回路の理解を深めましょう。













