赤外線LED ガイド

取材協力:OSRAM Opto Semiconductors

何が違う?
~赤外線LEDの光の色と波長 ~

—— 赤外線のLEDは一般のLEDとどこが違うのですか?

LEDはPN接合の半導体ダイオードです。順方向に電圧をかけると、接合部でキャリアの再結合が起きエネルギーが減少しますが、結合前とのエネルギーの差分が光として放出されます。発生する光の波長は、半導体の材料や構造で異なります。

一方、人間の目は波長が0.55μm(550nm)を中心とする狭い範囲だけに感度を持っており、波長によって色を識別しています(図1、2)。

     
図1:光の波長と可視光範囲 

図2:光の波長に対する人間の目の感度

             

目の特性(標準比視感度)は、国際照明委員会(CIE)によって定められています。同様に、最大視感度(最大感度の絶対値)は波長0.555μmで683lm/W(明所視)とされ、比視感度はこれを1として標準化したものです。

一般のLEDは、人間の可視光範囲に発光のピークが来るようにしていろいろな色を出しています。図3は、様々な色のLEDの波長に対する特性(発光スペクトル)を重ね合わせたグラフです。白色を含め、うまく調整されているのが分かると思います。

     
図3:様々な可視光LEDの発光スペクトル



        

これに対して、赤外線LEDの発光スペクトラムを図4に示します。この例では波長850nmに鋭いピークを持ち、可視範囲では発光していません。したがって、人間には発光している様子は認識できません。

     
図4:赤外線LEDの発光スペクトルの例
(図はOSRAM SFH4230)



        

見えない明かり
~ 赤外線LEDの用途 ~

—— 赤外線のLEDはあまり見かけない気がしますが、どのようなところに使われるのですか?

赤外線は人の目には見えないので、実際に使われている場所でも気がつくことが少ないのかもしれません。最も身近な例としては、テレビやビデオのリモコンがあります。スマホ・携帯電話では、対向する相手とデータ交換できるものも赤外線通信をしており、送信側のデバイスとして赤外線LEDが使われています。可視光を使っても良いのですが、送信側に赤外線LED、受信側は赤外線だけに感じるセンサを使うことで、外乱光の影響の少ない通信ができます。

以前から使われているものとしては、建物や施設の不正侵入監視用光源があります。赤外光のバリアを横切ったことで侵入を検知するシステムです。この場合、侵入者にバリアが見えては意味がありませんので、赤外線を使うわけです。

近年、赤外線のカメラ(サーモグラフィ)と組み合わせることが多くなりました。LEDで赤外線を照射し、赤外線フィルタ付きのCMOSなど赤外線に感じるカメラで画像を得るものです。車のパーキングをアシストするリアカメラシステムなどもそうです。赤外線を使うことで周囲の明るさに左右されず、昼でも夜でも鮮明な画を得ることができます。ただし、LEDを照明の光源として使うわけですから、ある程度以上の光量を必要とします。このため最近の赤外線LEDには、ハイパワーが求められるのが特徴的です。これは、一般のLEDが照明用途などに使われるようになってハイパワー化しているのと同じ傾向にあります。

送受の特性を合わせる
~ 赤外線LEDのデバイスの仕様と選択 ~

—— 電気以外の不慣れなスペック項目が多く選択に迷います。どんな点に注意すればよいでしょうか?

赤外線LEDは、赤外線センサやカメラなどと組み合わせて使われることが多いわけですが、その場合はカメラなどの受光側も波長に対して感度が異なりますので、光源となる赤外線LEDと受ける側の感度のピークを合わせることがポイントです。発光スペクトルの幅も狭いですし、受光側でもフィルタを入れたりするので、両者の波長が一致していないと感度が低下してしまいます。

スペックの比較などにおいては、ルーメン(lm)やカンデラ(cd)など、一般の電気や機械設計では馴染みのない光の単位がいくつも出てきますので、単位や意味合いなどを再確認しておくと良いでしょう(図5)。

  
図5:光の量に関連する単位
    

電気と光と熱の設計
~ 赤外線LEDの実装と駆動の注意点 ~

——ハイパワーでは設計にも慎重さが必要になりますね?

実装や駆動などの設計面では、発熱に対する配慮が大きなポイントになります。最近のアプリケーションではハイパワーなものが多いので、特に注意したいところです。LEDは白熱ランプなどと比べ高効率ですが、投入した電力が全て光になるわけではなく、実際上は全て熱となる発熱体として設計する必要があります。ハイパワーのLEDでは放熱効率の良いパッケージが採用されていますが、パッケージからさらに基板やヒートシンクなどへ熱抵抗の低い放熱路を確保することが肝心です。光路を確保するために、パッケージ上部にヒートシンクなどを配置できないのも、一般のパワー半導体とは異なる点です(図6)。

   
図6:パワーLEDの放熱

【高放熱パッケージ(OSRAM)の例】

【実装例】
パッケージ直下に放熱用のサーマルビアを多数貫通させ、
基板および基板ウラに取り付けたアルミ板に放熱させている。




駆動は定電流が原則です。LEDは接合面の温度が上がると順方向電圧(Vf)が下がる方向に特性が変化します。そうすると(定電圧駆動では)順方向電流(If)が増え、Ifが増えると接合面温度が上昇しさらにVfが下がるという悪循環が起きて、LEDが破壊されてしまうからです(図7)。

具体的に、駆動法には直列抵抗、シリーズレギュレータ、スイッチングレギュレータの3つがあります。直列抵抗とシリーズレギュレータの2者は、LEDの駆動電流×駆動部の電圧降下に相当する電力損失と発熱を伴うので、ハイパワーで電圧降下の大きな場合の駆動には適しません。

   
図7:LEDの順方向電圧-電流特性例



LEDは一般のシリコンダイオードに比べ、順方向の立ち上がり電圧が高く、多くの電力を消費します。
また、一概には言えませんが、パワーの大きいものほどさらに高くなる傾向にあります。LEDでは、動作点における電力(=電圧×電流)が消費され、その一部が光として放出されます、全て熱になるものとして設計するのが安全です。

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