汎用オペアンプ ガイド

取材協力:ナショナル・セミコンダクター株式会社(現 日本テキサス・インスツルメンツ株式会社)

不滅のアナログ
~ アプリケーション ~

—— デジタル機器でもオペアンプは必要ですか?

一般的なオペアンプ(operational amplifier)は、二つの入力とひとつの出力を持つアナログ増幅器です。負帰還を施して用い、増幅器だけでなく加算・減算・微分・積分などの演算回路、インピーダンスなどの変換回路、さらにフィルターや発振回路などを構成します。電子機器の多くはデジタル処理されるようになりましたが、入出力の多くはアナログ信号であるため、依然としてオペアンプは欠かすことができず、A/Dコンバータ(ADC)の前段やD/Aコンバータの後段で使われます。


目の付け所
~オペアンプのキースペック ~

—— 品種が多くて選択に迷います。

理想のオペアンプは、増幅度、周波数帯域、入力インピーダンス、許容信号レベル等は無限大で、内部雑音、オフセット、出力インピーダンスはゼロ、そして負帰還をかけても安定して動作しますが、実存するオペアンプはそれぞれ有限の値を持ち、どの仕様項目を重視するかは用途によって異なるため、品種も多くなっています。

例えば、入出力の信号スイング範囲と電源電圧との兼ね合いがあります。基本的なオペアンプの入力レベルや出力のスイング範囲は、電源電圧より狭い図1のですが、電池駆動機器が増えるなど回路の電源電圧が低下していることもあって、最近のオペアンプは信号を電源電圧付近まで使えるようにした品種が多くなりました。とはいえ、範囲には限界がありますので、信号が動作範囲に収まる品種の選択と回路設計が必要です。0~+3Vのような片電源の場合に、出力がGNDレベルのどのくらい近くまでスイング可能かなどは見逃しやすい部分です。

ちなみに、一般に汎用と呼ばれるオペアンプは、およそ数百mV~数Vの信号レベルで比較的低周波の信号に対して各仕様がバランスするよう考えられ、低コストで使いやすいように設定されています。言い換えると、例えば信号レベルがこれより小さい場合は、低ノイズ・低オフセットの高精度オペアンプを、帯域の広い信号を扱う場合は、高速用に分類されたものの中から選べば良いことになります。さらに、許容される消費電流などからも絞り込めます。なお、回路に使用する数が多い場合は、2回路や4回路入りのものもありますし、実装の点からはパッケージも大きな要素です。

      
図1:信号のスイング範囲
            



オペアンプの特性を活かした使い方
~ 設計上のポイント ~

—— データシートを読むコツとかありますか?

オペアンプ個々の特性は、品種毎に異なりますが、全体としては、プロセスに起因するおおまかな傾向があります。図2に、その要約を示しました。これらを踏まえたうえで、仕様や回路を検討すると分かりやすいかもしれません。なお、仕様の中には、周波数や信号レベル、電源電圧や周囲温度などに依存するものがあります。データシートに特性がグラフで示されている場合は、グラフから自分が使用する条件での実力値を見積もることも大切です。

                  
図2:製造プロセスと特性の傾向

バイボーラ CMOS
オフセット電圧 大きい 小さい
バイアス電流 大きい 小さい
速度 速い 遅い
消費電流 大きい 小さい
*大小は統計的・相対的なもので、品種により差がある。

例えば、図3は、バイポーラとCMOSオペアンプの電圧ノイズ特性例です。低域のノイズは1/f特性を示しますが、コーナー周波数は大きく異なっています。この場合、どちらが低ノイズかは使用する回路の周波数帯域によって変わることになります。

      
図3:入力電圧ノイズの周波数特性例
            

また、例えばオフセット(バイアス)やノイズには、電圧性と電流性のものがあります。それぞれの度合いは、使用する回路のインピーダンスに左右され、インピーダンスが高いほど電流の影響が顕著になります(図4)。同様に、CMRRは入力回路のバランス性(両入力の対称性)によって変わります。使用回路がどの仕様項目に敏感かを意識した選択と使用するオペアンプの持つ特性を活かした回路設計が重要なわけです。

      
図4:入力オフセット

※ 仕様では、入力オフセット電圧( 図のVos1) の他に、
入力に流入(流出)する電流を入力バイアス電流(Ib)、
± 両入力のIb の差を入力オフセット電流(Ios) として規定される。
            

GB積が回路の(閉回路)利得と信号帯域十分に満たしているか(図5)や、信号の上昇・下降速度がオペアンプの最大スルーレートを超えないか(図6)なども、設計に当たっての基本確認事項です。


図5:ゲイン(G)バンド幅(W)積

          
    

図6:スルーレート


 
 


デジタルへの橋渡し
~ A/Dコンバータのドライブ ~

—— A/Dコンバータの前段に使おうと考えています。

多くの電子機器がデジタル処理となり、図7のように、A/Dコンバータおよびその前段に、オペアンプによる前処理回路を置く機会が多くなりました。センサ出力をA/Dの変換レンジまで引き上げるには増幅が必要ですし、A/Dコンバータの変換範囲がプラス側だけといった場合は全体をシフトしなければなりません。アンチエイリアス等のフィルタ処理を必要とすることも多いでしょう。こうした場合、前処理段で全体性能を損なっては意味がありません。例えばアンプで発生するノイズはセンサ信号に加算されてA/Dコンバータに入力されますし、周波数帯域が狭いと結果的に高域の分解能を低下させることになるからです。高分解能のA/D変換では、CMRR(同相除去比)などにも考慮が必要で、オペアンプの選択と回路設計には慎重を要します。片電源のシステムなどではオペアンプのスイング範囲が狭いとA/Dコンバータの入力レンジをフルに使えないといったことも起こりますので、確認してください。

A/Dコンバータ前段のアンプにはもうひとつ、A/Dコンバータの入力を、変換開始までにセトリングするドライバとしての働きがあります。A/Dコンバータの入力は、コンデンサとスイッチで構成されたサンプル&ホールド回路になっているため、アンプにはコンデンサを速やかに充放電し、且つ安定に保つ駆動能力が要求されます(図7)。

      
図7:A/Dコンバータ入力のセトリング 右は波形例
            

セトリングの問題は、マルチプレクサで接続された多チャネルの信号をA/D変換する場合にも懸念されます。セトリング時間が不十分な場合には、それまでのサンプル電圧がコンデンサに残るからです(図8)。このような場合の対応策として、アンプとA/Dコンバータの間に、サンプル&ホールドコンデンサ回路より大きなコンデンサを挿入し、外部のコンデンサから電流を供給することで、セトリング要件を緩和することが期待できます。

      
図8:チャネル切り換え時のセトリング
            





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