人の代わりに活動する原発対応ロボット。
その開発を支援する、RSのサービス。

千葉工業大学
未来ロボット技術研究センター 副所長
小栁 栄次 工学博士

福島原発で活躍する日本製のロボット

新たに導入されたQuince2号。

2011年12月、政府が福島原発の「冷温停止状態」を示した。その判断データを集めてきたのは、ある一台の日本製ロボットだった。それが、千葉工業大学が開発した"Quince(クインス)"である。「建屋内の放射線、急勾配の階段。人が近づくことができない厳しい環境下で遠隔操作できるロボットは、我々のロボットしかない。そう確信していました。」同大学の未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小栁栄次副所長は、開発当時の想いをそう振り返る。"Quince"には、500mにも及ぶ通信ケーブルが接続されている。なぜなら、建屋内の分厚いコンクリートの壁が、遠隔ロボットに搭載可能な無線のすべてを遮断してしまうからだ。さらに通信機能を持たない線量計は、カメラで撮影することでその数値を確認できるよう工夫した。この他、すべてが前例のない開発。それだけに試行錯誤を繰り返したが、6月には建屋内に入構。当初投入された米国製ロボットでは困難だった2~5階まで上ることに成功し、復旧作業に必要なさまざまなデータを集積することができた。

「損傷状況の映像や線量などの情報により、復旧作業が進んだことはもちろんですが、作業員の方々の負担軽減に少しでも寄与できたことが何よりもうれしい」と小栁副所長は語る。

だが、この"Quince"も絡まった通信ケーブルが切れ、帰還できなくなるというトラブルに見舞われる。そこで、開発されたのが今回導入される"Quince2号、3号"だ。改良型のこの2機は、たとえ通信ケーブルが切れても、もう一方のロボットが無線可能な距離に接近し、ケーブルが切れたロボットを外部から遠隔操作できるようになっているという。

緊急開発のニーズに応えるRSの即日出荷

福島原発で活躍する"Quince"だが、実は震災の1年前にはすでに完成し、千葉市消防局の消防資機材として実践的な訓練を繰り返していた。では、なぜ今回のように完璧なる原発対応ロボットとして変身することができたのか。それには、"Quince"に込められた小栁副所長たちの揺るぎない設計思想があった。「ロボットは人の役に立ってはじめて価値があると思います。そのためには多種多様な現場に対応しなければなりませんが、災害対応ロボットの場合"大は小を兼ね"ません。"Quince"は適材適所で使えるよう、サイズ・使い勝手も踏まえ、世界基準を目指して開発しました。」

"Quince"は4つのパッケージに分解することができる。しかも、そのいずれもが32kg以下。リチウムイオン電池も100W以下のものを採用する。つまり、これは飛行機に搭載して世界中に移動できる基準。原発用のような特別な装備の場合は別だが通常は現地到着後わずか6分で組み立てられ、作業に取り組むことができるのだ。そうした高いポテンシャルから、「地下水の点検用として活用できないか」などといった数多くの問い合わせが来ているという。

カスタマイズ自在な"Quince"だが、その心臓部とも言える電子ユニットに変わらず採用されているのが、DCDCコンバータをはじめとするRSのデバイスである。

「緊急を要する我々の仕事にとって、部品がすぐ届くというRSの即日出荷はとてもありがいたい存在です。今回の原発対応ロボットでも、あたり前のように活用しました。また開発の可能性を広げてくれる豊富な品揃えも魅力ですね」と小栁副所長の評価は高い。

いつ、どこで起こるかわからない自然災害。日本発のロボットが、世界で活躍する日もそう遠いことではないだろう。その支援が世界中に広がるほど、グローバルなRSの強みも活かされるかもしれない。

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