ZigBee®と無線モジュール編


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ZigBee®と無線モジュール編

NECエンジニアリング株式会社に聞く!ZigBee®と無線モジュール編

使う前に、選ぶ前に、これだけは知っておきたい部品のジョーシキ。
今さら聞けない あんな質問、こんな疑問を、RSが代わりに伺ってきました。

取材協力:NECエンジニアリング株式会社 様

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名前に惑わされるな
無線センサ応用

応用イメージが今ひとつハッキリしません

「無線センサネットワーク」や「ZigBee®」は特定用途向けのテクノロジーだと考えがちです。無線による機器接続では他に「無線LAN」「Bluetooth」などがありますが、無線センサネットワークはそれらよりも広い概念です。

例えば<図1>は、生産工場で完成した製品をトラックで倉庫に保管するシステムの例です。製品を収めたコンテナにはGPSセンサと振動や温湿度のセンサを搭載したZigBee®のモジュールが取り付けられており、工場の出荷ゲートで出荷が確認されます。同様に倉庫の入庫ゲートでは員数と時刻を非接触で自動チェックしますが、輸送中の庫内温度や振動などが位置情報と共にモジュールに記録されていて、それらも同時に取得されます。こうすることで、入出庫の管理に加え輸送に起因する製品の故障解析など品質の維持向上にも役立てます。物流管理ではRFID(ICタグ)なども利用されるようになりましたが、この例ではZigBee®を使うことでシステムの機能が拡大します。また、家電製品などでは赤外線のリモコンが普及していますが、対象機器に向けないと操作できませんし、ネットワークとしての機能も持たないため、無線センサネットワーク化する動きが進んでいます。

図1:物流でのZigBee®応用

物流でのZigBee®応用

選択に幅を持て
システム要求とネットワーク形態

必ずZigBee®を使わないといけないのですか

ZigBee®は無線センサネットワークを実現するためのひとつの手段であって「ZigBee®でなければ無線センサネットワークにあらず」というわけではありません。実現したいシステムの要件に合わせた形態を考えることが大切です。

<図2>は無線センサネットワーク用モジュールの構成例です。[A]は無線部分(物理層/MAC層)をIEEE802.15.4準拠としたことを除き上位レイヤを独自に構築するタイプです。実際にはモジュールメーカなどが独自仕様で提供しているものをそのまま使います。多くの場合、[A]のタイプではメッシュトポロジには対応しないなど機能を簡略化していますが、他メーカ機器との接続を見込まないなど条件が合えば設計面の手軽さやコスト面で有利です。

[B]と[C]はZigBee®に則った方式で、違いはプロファイルにZigBee Allianceが定義した既定のものを使うか独自プロファイルとするかです。ZigBee®では機器の持つアプリケーション機能を「プロファイル」として定義しており、既定のプロファイルにはホームオートメーション(HA)、スマートエナジー(SE)などがあります。[B]のようにユーザがプロファイルを独自に定めて使うことができるのはZigBee®の応用範囲を拡げるうえで大きな意味がありますが、設計の負担が増すことは承知しなければなりません。

図2:無線モジュールの種類

無線モジュールの種類

ミツバチの正体
ZigBee®の概要

どんなことが規定されているのですか

<図3>にZigBee®のレイヤ構造を示しました。ネットワーク層から上、アプリケーションにつながる部分までがZigBee®で定義された部分です。接続機器のアプリケーション機能を「プロファイル」として定義しているのは前項で述べました。

同時に、ZigBee®では接続機器のロジカルなタイプをコーディネータ、ルータ、エンドデバイスの3種類定義しています。ネットワークには1つのコーディネータが必要であるほか、エンドデバイスはルータもしくはコーディネータと接続します<図4>。ちなみに、1つのネットワーク当たり最大65535のノードを管理するほか1台が最大で240のエンドポイントを付与できます。エンドポイントとはアプリケーションを識別する構造単位のことで、1つの無線機に複数のアプリケーション(エンドポイント)を設けることが出来ます。なお、仕様の最新のバージョンは2007年版で、「ZigBee®」および改善されたメッシュルーティング機能を持つ「ZigBee®PRO」二つの機能セットがあります。

無線部分はIEEE802.15.4そのものです。<図5>に概略仕様を示しました。使える周波数帯が国によって異なるのは無線機器として国の法規制に従う必要があるからです。なお、表でデータレートを示しましたが、これは無線部の物理的な通信速度です。システムでは接続の確認や再送要求などを行いますので、システムが実際にやりとりする情報のレートはこれよりも低くなります。

図3:ZigBee®のレイヤ構造

ZigBee®のレイヤ構造

図4:ネットワークトポロジー

ネットワークトポロジー

図5:無線部仕様

無線部仕様

ブラックボックス化すべし
選定と注意点

どこから手を付けて良いか分かりません

ZigBee®を利用するに当たっては、仕様書を理解する必要があるのはもちろんです。とはいえ、ZigBee®用のICや無線回路を設計するといった場合を除けば、一般的なネットワーク機器の技術スキルがあれば設計できるように完成されたモジュールや評価キットが提供されています<図6>。

ZigBee®機器は最終的に相互接続評価とZigBee Allianceによる機器認証を必要とします。また、無線機器ですから国の認可が必要で、日本では「技術基準適合証明」を取得しなければなりませんが、認証済みのモジュールを使えば問題は解決します。

なお、モジュールの制御法には<図7>に示す二通りがあります。[A]はユーザがZigBee®の内部レイヤを直接操作するもので、設計の自由度がありますが慎重な設計が必要で認証に際しても責任を負わなければなりません。いっぽうの[B]はZigBee®をコールするAPI(Application Program Interface)をシリアルインタフェースを介して制御するものです。ソフトウエア設計が楽になるほか確実な動作を期待できます。機器の設計に当たっては通信の内容や頻度を基に機器の消費電力を計算し、電池寿命を見積もっておくことも忘れてはなりません。

図6:モジュールとスタータキットの例

モジュールとスタータキットの例

図7:モジュールの制御法

モジュールの制御法

ZigBee®は、ZigBee Alliance, Inc.の登録商標です。

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