接続、テスト・リード、ワイヤに起因する測定誤差を防ぐ

接続に起因する誤差を除去する最も簡単な方法は、ヌル測定を行うことです。DCV測定や抵抗測定では、適切な測定レンジを選択してから、プローブを短絡して測定を待ちます。この値は、ゼロにかなり近くなるはずです。次に、NULLボタンを押します。その後の測定では、ヌル測定の値が差し引かれます。ヌル測定は、DCと抵抗の両方の測定に有効です。残念ながら、この手法はAC測定には有効ではありません。ACコンバータは、測定レンジの下限で動作するようには設計されていません。Keysight34401Aデジタル・マルチメータのアナログ・コンバータは、フルスケールの10%未満を仕様化していません。Keysight 34410A/34411Aマルチメータは、デジタル手法により、フルスケールの1%まで測定できますが、ショートを測定するようには設計されていません。

接続

図1
2つの測定によるオフセット補正。最初の測定は標準的な抵抗測定です。2番目の測定では、熱起電力によって生じたオフセットが測定されます。メータの表示値は、2つの測定値の差を既知の電流源の値で割ったものです。

異なる金属を接触すると、熱電対接合部が形成されます。熱電対接合部は、温度変化により電圧を発生させます。生じる電圧はわずかですが、小さな電圧を測定している場合や接続部の多いシステムの場合では、誤差が大きくなります。考慮すべき接合部は、DUT、リレー(マルチプレクサ)、マルチメータにある接合部です。

銅と銅の接合部は、オフセットを最小限に抑えるのに有効です。
抵抗測定の場合は、オフセット補正を使用して、オフセット電圧を測定し、誤差を除去することができます。

図1は、オフセット補正測定に用いられる2つの測定で、電流源がある場合と電流源がない場合を示したものです。最初の測定値から2番目の測定値を減算し、既知の電流源の値で除算することにより、実際の抵抗が得られます。2つの測定は読取りのたびに行われるので、測定速度が低下しますが、確度は向上します。オフセット補正は、2端子と4端子の両方の測定に用いることができます。

リード

図2
電圧センス・リード線には、電流は流れません。マルチメータは測定した電圧値を電流値で割って、未知の抵抗を求めます。

4端子抵抗測定法は、小さな抵抗を測定するための最も確度の高い方法です。テスト・リードの抵抗と接触抵抗は、この方法を使用することにより自動的に減少します。4端子抵抗測定用の接続を図2に示します。既知の電流源を使用して、抵抗によって発生した電圧を測定することにより、未知の抵抗を計算します。4端子測定では、電流を流すリード線と電圧を検出するリード線とを使用します。

電流は、電流リード線により未知の抵抗に流れ、電圧センス・リード線で電圧を測定して抵抗値を計算します。電圧センス・リード線には電流は流れないので、これらのリード線による電圧降下はありません。

マルチメータの内部オフセット

オートゼロを使用して、マルチメータ内の誤差を除去します。オートゼロをオンにすると、マルチメータは測定後に入力信号を内部で切断し、ゼロ測定を実行します。次に、前の測定値からゼロ測定値を減算します。 これにより、マルチメータの入力回路に存在するオフセット電圧が測定確度に影響を与えることがなくなります。4端子測定の場合はオートゼロは常にオンですが、2端子測定の場合はオフにして測定を高速化できます。

オートゼロをオフにした場合、マルチメータはゼロ測定を1回行い、この値を後のすべての測定から減算します。またマルチメータは、測定機能、レンジ、積分時間が変更されるたびに、新たにゼロ測定を行います。

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