ノイズを反射、吸収するビーズ

(TDK 技術資料より)

ラインに直列に挿入するだけの使いやすい部品

ビーズ、BHシリーズ
ビーズ、BHシリーズ

写真1
ビーズ、BHシリーズ

ビーズは、コンデンサと同様に、信号回路や電源回路を問わず使用できます。ラインに直列に挿入するだけで対策効果が期待できる便利な部品です。パスコンと違ってグラウンドパターンの状態は影響しません。

写真1に示すように、ビーズはドーナツ状に穴の開いたフェライト磁性体に導線を通した構造です。トロイダルコアに1ターンの巻き線を施したもっとも単純な構造のインダクタンス素子です。ネックレスに使われるビーズに外観が似ています。

最近はフェライトシートやフェライトペーストと電極ペーストを交互に積層した小型なチップビーズが使われています。

インピーダンスの公称値は同じでも別物である

ビーズの等価回路

図1
ビーズの等価回路

図1に示すように、ビーズの等価回路はリアクタンス成分Xと抵抗成分Rで表され、その静特性は、RとXとこれらを合成したインピーダンスZの周波数特性で表されます。一般にビーズの静特性公称値は、100MHzでのインピーダンス値です。

100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性
100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性
100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性
100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性
100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性

図5 100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性

反射させるタイプと吸収するタイプを使い分ける

ビーズの周波数特性をもう少し詳しく見てみましょう。低周波領域ではX成分が支配的であり、ビーズはインダクタとして機能しノイズを反射します。高周波領域ではR成分が支配的になり、ビーズは抵抗として機能し、ノイズを吸収して熱に変換します。この機能の切り替わり点は、R成分とX成分が等しくなる周波数です。この周波数をR-Xクロスポイントと呼びます。

R-Xクロスポイントが高周波にあるほど、100MHzのインピーダンスZが大きくなります。このようなビーズはインダクタに近い性質を示し、ノイズを発生源に反射します。ノイズの経路が変化するだけで、ノイズが消えるわけではありませんが、コネクタ間のケーブルがアンテナとなってノイズが放射されるような場合は、コネクタの前に挿入すると効果があります。

R-Xクロスポイントが低周波にあるビーズは、低周波から広い周波数範囲で抵抗として機能します。このタイプは、ノイズを反射するのではなく、吸収して熱に変換します。低周波から高いインピーダンスを示すので、必要な信号が減衰しないように選びます。

可能な限りR-Xクロスポイントの低いビーズを使用する

図3に示す実験回路で、ビーズのパルス波形に対する影響を調べてみました。実験に使ったのは図2に示した5つのビーズです。

チップビーズのパルス波形への影響を調べる実験回路

図3 チップビーズのパルス波形への影響を調べる実験回路

図4に結果を示します。図からわかるように、R-Xクロスポイントが低周波にあるビーズほど、リンギングが少なく波形ひずみも小さくなります。波形ひずみは、デジタル回路の誤動作の原因となります。デジタル信号の周波数にもよりますが、R-Xクロスポイントのできるだけ低いビーズを使用することが誤動作防止につながります。

チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化
チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化
チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化
チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化
チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化
チップビーズのRーXクロスポイントの違いによる挿入前後のパルス波形の変化

図4 100MHzのインピーダンスが等しいビーズのインピーダンス周波数特性

Rdcが低くSRFが高いものを選ぶ

ビーズは、コンデンサと同様に、信号回路や電源回路を問わず使用できます。ラインに直列に挿入する基本的にビーズのインピーダンス特性はフェライト材料の磁気特性に依存します。

インピーダンス周波数特性以外の重要な特性として、直流抵抗Rdcと自己共振周波数SRFがあります。Rdcが高いと信号レベルが下がるので、できるだけRdcの小さいものを選びます。

また、SRFより高い周波数では、ビーズはコンデンサとして機能しインピーダンスが急激に小さくなるため、できるだけSRFの高いものを選びます。