DCオフセットのあるAC測定

図3
デューティ・サイクルが50%ではない非対称方形波。マルチメータを使用すると、AC成分とDC成分の両方を測定できますが、立ち上がりが急峻な場合、マルチメータの帯域を超えるAC成分(34410A/34411Aでは300kHz)はリジェクトされ、正確な測定はできません。

多くの信号には、AC成分とDC成分の両方が含まれています。例えば、非対称方形波には両方の成分が含まれています。多くのオーディオ信号には、出力トランジスタをドライブするDCバイアス電流によって生じるDCオフセットが含まれています。
DC電圧とAC電圧の両方を測定する方が望ましい場合もあれば、AC成分だけを測定したい場合もあります。
オーディオの例では、増幅器の利得は、入力AC電圧と出力AC電圧から計算します。

ほとんどの最新マルチメータは、ACRMSコンバータの前にDCブロッキング・コンデンサを使用しています。 DC電圧をブロックすることにより、マルチメータはAC値だけを測定できます。さらに重要なことは、マルチメータはAC信号をスケーリングして最適な測定を行うことができます。
例えば、電源のACリップルを測定する場合、マルチメータは高レベルのDC信号をブロックしますが、AC成分だけに基づいてレンジを選択することにより、AC信号を増幅することができます。

図4
DC電源の出力にはいくらかのリップルAC雑音が見られます。電源の出力は、AC成分とDC成分を測定することにより評価できます。

最高確度のAC+DC測定には、2つの成分を個別に測定する必要があります。マルチメータは、適切なレンジと積分を使用してAC成分を除去することにより、最適なDC測定が行え、AC測定の場合は、AC成分に最適なレンジを選択できます。個別に測定した結果から以下の計算式を使って、AC+DCの全RMS値を計算することができます。


真のRMS値AC+DC=SQRT(AC2+DC2


図5
パルス列にはDC成分とAC成分の両方が含まれています。パルスの立ち上がりが急峻な場合、マルチメータの帯域を超えるAC成分(34410A/34411Aでは300kHz)はリジェクトされ、正確な測定はできません。

新しい34410A/34411Aは、AC電圧の測定時に、DCブロッキング・コンデンサを使用します。AC測定では、セトリング時間を短縮するためデジタル手法を採用しています。またデジタル手法により、パルス測定時に高い波高率にも対応することができます。34410A/ 34411Aは、最高300 kHzのAC信号を測定できます。AC成分が8 kHz未満の場合は、34410A/34411Aは、DC測定機能とピーク検出機能を使って、DC成分とAC成分の両方を正確に測定することができます。高周波信号の場合は、AC成分とDC成分を個別に測定し、AC+DCを計算します。

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