デジタル・マルチメータを使用した低周波AC信号の測定

最新のマルチーメータは、20 Hzまでの低周波でAC電圧を測定できます。
アプリケーションによっては、さらに低い周波数で信号を測定する必要があります。こうした測定を行うには、適切なマルチメータを選択して適切に設定する必要があります。以下にいくつかの例を紹介します。

Keysightの34410A/34411Aマルチメータでは、デジタル・サンプリング法を使用して、3 Hzまでの仕様化された真のRMS測定が可能です。
デジタル手法により、セトリング時間が2.5 sまで向上し、低速フィルタの測定に最適です。最高の測定を実現するには、いくつかの設定が必要です。

  1. 適切なACフィルタを設定することが重要です。フィルタは、真のRMSコンバータの出力を平滑化します。20 Hz未満の場合、適切な設定はLOWです。LOWのフィルタ設定では、マルチメータを安定させるために2.5 sの遅延が挿入されます。VOLTage:AC:BANDwidthMINコマンドを使ってロー・フィルタを設定します。
  2. 測定している信号の最大レベルが分かっている場合は、手動レンジを設定することにより測定時間を短縮できます。セトリング時間が長いほど、オートレンジ機能の速度が著しく低下するため、手動レンジをお勧めします。
  3. DCブロッキング・コンデンサを使用して、DC信号がAC RMSコンバータによって測定されないようにします。これにより、マルチメータは、AC成分の測定に最適なレンジを使用できます。高出力インピーダンスの信号源を測定する場合は、ブロッキング・コンデンサが安定するまでに十分な時間が必要です。セトリング時間は、AC信号の周波数ではなく、DC信号の変動に影響されます。

Keysight 3458AにはAC RMS電圧の測定方法が3つあり、同期サブサンプリング・モードでは、1 Hzまで測定できます。低周波を測定するための設定を以下に紹介します。

  1. 同期サブサンプリング・モードSETACV:SYNCを選択します。
  2. 同期サブサンプリングを使用している場合は、ACVとACDCVの両方に対して、入力信号はDC結合になります。ACV測定では、DC成分が読み値から減算されます。なおAC/DC電圧レベルは、AC電圧だけでは通常発生しない過負荷状態を引き起こす可能性があるため、注意する必要があります。
  3. オートレンジ機能は低周波信号測定時には遅延の原因になる可能性があるため、適切なレンジを選択して測定を高速化します。
  4. 波形をサンプリングするには、マルチメータが信号の周期を求める必要があります。ACBANDコマンドを使ってタイムアウト値を求めます。ACBANDコマンドを使用しないと、波形が繰り返される前にマルチメータがタイムアウトする可能性があります。
  5. 同期サブサンプリング・モードでは、LEVELトリガを使って信号と同期します。入力の雑音によって間違ったレベルのトリガが発生し、測定が不正確になる可能性があります。そのため、信頼性の高いトリガ・レベルを選択することが重要です。例えば、正弦波のピークは、信号がゆっくり変化し、雑音によって間違ったトリガが発生しやすいので避けてください。
  6. 正確な測定値を得るためには、近くの環境が電気的に「低雑音」であることを確認し、シールド・テスト・リードを使用します。レベル・フィルタリングをオン(LFILTER ON)にすると、この雑音に対する感度が低くなります。

34401Aは3 Hzまで測定でき、設定方法は34410A/34411Aと同じです。
34401Aは、DCブロッキング・コンデンサを備えたアナログ回路を使って、RMS電圧を変換します。最適な測定には、低周波フィルタを選択し、手動レンジを使用して、DCオフセットが安定していることを確認します。
低速フィルタを使用する場合は、7 sの遅延を挿入して、マルチメータを安定させます。

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