デジタル・マルチメータによる温度測定用のトランスデューサの選択

デジタル・マルチメータを使用した温度測定には通常、測温抵抗体(RTD)、サーミスタ、ICセンサ、熱電対の4種類のトランスデューサが用いられます。それぞれに利点と欠点があります。

より高い感度を得るにはサーミスタを使用

サーミスタは、半導体で構成され、感度は優れていますが、通常は温度範囲が-80℃~150℃に限られています。サーミスタの温度と抵抗の関係は非線形が強いため、変換アルゴリズムが複雑です。Keysightのマルチメータは、標準的なHart-Steinhart近似計算を使用して、分解能0.08℃(代表値)の確度の高い変換を実現しています。

より高い確度を得るにはRTDを使用

測温抵抗体( R T D )は、約- 2 0 0 ~500℃の範囲にわたって、抵抗と温度の間に非常に正確で高い線形関係があります。Keysight 34410Aなどの最新のマルチメータでは、IEC751規格のRTDの測定が可能で、0.0385 Ω/Ω/℃の感度を備えています。

1℃当たり1 Vのリニア電圧を実現するIC温度センサ

多くのメーカが、温度(℃またはF゜)に比例した電圧を発生するプローブを提供しています。このプローブには通常、National Semiconductor社のLM135シリーズなどのIC温度センサが採用され、-50℃~+150℃(LM135の場合)の温度を測定できます。温度は、マルチメータのディスプレイに表示されているプローブの出力から簡単に計算できます。例えば、270 mVでは27℃です。

最高の温度測定を実現する熱電対

熱電対は、温度範囲が- 2 1 0 ℃ ~1100℃と最も広いだけでなく、堅牢な構造により、過酷な環境に最適です。他の温度センサと違って、熱電対では比測定が行われるため、絶対測定を行うには基準接点が必要です。
ほとんどのアプリケーションで外部基準接点を追加することは現実的な方法とはいえません。Keysight 34970Aと基準接点を内蔵した34901A 20チャネル・マルチプレクサをお勧めします。また34970Aには、一般的な熱電対の温度アルゴリズムも内蔵されています。

まとめ

単一の温度測定には、サーミスタと34410Aなどのマルチメータが簡単で低コストのソリューションとなります。より確度の高い温度測定にはRTDを使用します。多くの温度や高温をモニタする場合は、専用のデータ・ロガーが最適です。

  RTD サーミスタ ICセンサ 熱電対
測定タイプ 絶対 絶対 絶対 相対
利点
  • 最も安定
  • 最も正確
  • 熱電対よりリニア
  • 高感度
  • 低熱起電力(高速)
  • 2端子測定
  • 最もリニア
  • 最高出力
  • 安価
  • 広い温度範囲
  • 堅牢
  • 電源が不要
  • 安価
  • 様々な形態
欠点
  • 高価
  • 高熱起電力(低速)
  • 電流源が必要
  • 抵抗変動が小さい
  • 4端子測定
  • 自己発熱
  • 非線形
  • 限定された温度範囲
  • 脆弱
  • 電流源が必要
  • 自己発熱
  • 高温には4端子測定
    が必須
  • 250 ℃に制限
  • 電源が必要
  • 高熱起電力(低速)
  • 自己発熱
  • 限定された構成
  • 非線形
  • 低出力電圧
  • 高熱起電力(低速)
  • 基準が必要
  • 接続、酸化
  • 最低感度

表1:温度トランスデューサの比較

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