マルチメータを使用したピーク検出

帯域幅は通常、8 kHz以下に制限されますが、マルチメータではDC測定機能を使用して低周波信号のサンプリングが可能です。従来は、A/D回路でピーク電圧を測定するアナログ・ピーク検出回路が用いられていました。この手法は広帯域を実現できるため、現在も非常に短かい時間のピークの捕捉に用いられています。また、ピーク・ディテクタとA/Dを組み合わせたマルチチャネル・システムにも採用されています。より一般的な手法は、信号をサンプリングして、最大値と最小値を記録する方法です。

多くのアプリケーションでは、オシロスコープのディスプレイ上に表示されるノイズ・スパイクはあまり重要ではありません。多くの場合、雑音はEMIに起因し、目的の信号を測定できなくなる可能性があります。
例えば、自動車のエンジンはかなりの量のEMIを発生させます。物理測定(温度センサやオイル・センサによって実行される測定など)は一般に、かなりゆっくり変化します。高周波雑音は、フィルタと低速のA/Dを使用して除去することができます。フィルタ出力のサンプリングに高速A/Dを使用する必要はありません。

図9:測定ごとにピーク測定が実行されます。

マルチメータは通常、ピークを検出/測定するのに最適なツールです。
適度のサンプリング・レート(1 Kサンプル/s~50 Kサンプル/s)に加えて、シグナル・コンディショニング機能(利得、減衰、ローパス・フィルタ)を備えています。また、最大値/最小値の測定に使用可能な演算機能が、ほとんどのマルチメータに内蔵されています。演算機能は測定速度を低下させることがあるため、測定速度を向上するために、データのポスト・プロセッシングが必要になる場合があります。この他に測定速度を向上する方法として、小さいアパーチャを選択する、オートゼロをオフにする、ディスプレイをオフにする方法があります。

図10:複数のDC測定に対して、ひとつのピーク値が返されます。

34410A/34411Aマルチメータにはピーク検出機能が搭載され、信号の特性評価やピーク検出が容易に行えます。
またDC信号をモニタする場合、もう1つのディスプレイを使って、最大ピーク、最小ピーク、p-p値を表示することができます。ピーク検出機能は、マルチメータのアパーチャ設定に関係なく、常に50 Kサンプル/sの速度でサンプリングし、演算は不要です。

図9は、34410A/34411Aマルチメータの標準的な測定方法で、測定ごとにピークの読み値が更新されることが分かります。

別の方法として、複数のDC測定に対して、ひとつのピーク測定値だけを返す設定も可能です(図10を参照)。

図11:複数のDC測定に対して、ひとつのピーク値が返されます。

さらに別の方法として、マルチメータのアパーチャを変更して長い測定を行う方法があります。この方法は、図11に示されています。より長い測定に対して、ひとつのピーク測定値が返されます。

34410A/34411Aのピーク検出では、20 msごとに信号がサンプリングされ、ピーク値は次のトリガまでホールドされます。
アパーチャを変更することにより、長時間にわたってピーク値をホールドできます。ピーク測定毎に、p-p値、最大ピーク、最小ピークが表示されます。

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